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貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?  作者: イコ
年越しから春へ編
127/223

監禁


 意識が覚醒すると、ベッドの上に寝かされている状態だった。


 両手はベッドへ繋がれるように手錠をされていた。



「あなたが動けば、今走っている女を殺す」



 耳元で囁く女の声を聞いた後、何かが刺さる感触がした。

 そのまま意識を失ったことを思うと、注射で薬でも打たれたのだろう。



「まさか、こんなことが本当にあるなんてな」



 貞操概念逆転世界であっても、今まで普通に生活出来ていた。

 まさか旅行先で誘拐されるなんて考えてもいなかった。



「どうやら目覚めたようだな」



 扉が開いて入ってきたのは江の島で絡んできたギャルの希だった。



「お前が俺を攫ったのか?」


「そうだ」


「そうか、違うのか。それで?誰の差し金だ?」



 彼女の肯定を即座に否定したのは、彼女には俺を眠らせる薬を手に入れられる人物ではないと思ったのもあるが、そこまでの力量と判断力。

 何より、あのとき耳元で俺に話しかけた女とは違う声をしていたからだ。



「なっ!あっあたしがやったって言ってんだろうが!お前が素直に言うことを聞いていればよかったんだ」



 希は俺の胸倉を掴んで顔を引き寄せる。


 近くなる顔と顔。


 じっと見つめ合っていると、希の顔が赤く染まっていく。



「ちっ、少しは怯えやがれ。男なんて女が凄めばビビる生き物だろうが!」


「なぜ怯える必要がある?それよりもどうした?俺の身体が目当てなんじゃないのか?」


「うるせぇ!こっちはこっちで仕事があんだよ。黙ってろ」



 希はギャルたちのリーダーのようなことをしていた。

 そんな彼女が誰かに使われている。


 ふと、扉の向こうに気配を感じて視線を向けるが、その相手は姿を見せる気はないようだ。



「それで?ランは無事なのか?」


「あん?ラン、誰だよ?」



 希は知らないようだ。



「なぁ、希。今すぐに命令だ。ランさんが無事か聞いて来い」


「あっあぁ?お前自分のたちば……」



 俺は今まで発したこともない怒気を希に向ける。

 希はそれまで聞いていた口を閉じて急いで立ち上がる。



「べっ別にビビったわけじゃねぇからな!」



 希は部屋を飛び出していく。



 代わりに入ってきたのは、長身の女性だった。


 身体のラインがハッキリと分かるライダースーツを身を包み。


 腰まで伸びるロングヘアーが特徴的な美女だった。



「あまり子猫をイジメないでくれるかい。彼女たちは私の手足なんだ」



 話し出した女性の声は俺の背後を取り注射を打った人物に間違いない。



「なら、質問に答えろ。ランは無事か?」


「ああ。もちろんだ。指一本触れてはいない。君がこちらの要求を飲んでくれたからね」


「それで?俺をここに連れてきた目的はなんだ?」


「随分と落ち着いているんだな。普通の男なら、こんな状況は慌てふためいて泣きわめいているところだ」


「それが望みか?」


「いいや。ふむ。今の君に何を言ってもこちらが有効に交渉ができるとは思えないな」



 女は何を思ったのか、ライダースーツのチャックを降ろし始める。


 へそが見えるまで下げられたチャックの下には何も着て居らず。

 大きな胸の谷間が見えて、巨大が故にチャックの間から胸がこぼれ落ちそうになっている。


 下げられた腰はくびれて綺麗な身体のラインが解き放たれる。



「身体には自信があるんだ。あんたが穏便に交渉に応じてくれるなら好きにしていいんだよ」



 妖艶な雰囲気と共に腰をくねらせて迫る美女。


 もしも、この世界に着たばかりの俺だったなら飛びついて喜んでいたと思う。



「ハァ~好きにすればいい。


 その代わり俺の彼女たち誰にも手を出すな。

 もしも出せばお前だけじゃない。

 お前の後ろに控える何者も俺は絶対に許さない。


 必ず復讐してやる」



 希に向けた怒りよりも、さらに大きな怒りを美女にぶつける。



 女は一瞬だけ身体を固めて、息を呑む音だけが響く。



「良い度胸じゃないか……あんたを抱いたぐらいじゃ心は折れそうにないね」



 女はそれだけ言うと部屋を出て行く。



 それから何時間経ったのか、ここがどこなのかもわからないまま、部屋で一人残されベッドで繋がれまま時間だけが過ぎていく。



「よう」



 扉を開いて入ってきたのは希だった。



「なんだ?」


「腹は減ってないのかよ」



 トレーにのったパンと飲み物。それにスープを持ってきていた。



「そうだな。トイレにも行きたいところだ」


「逃げるなよ。逃げても面倒だからな」



 そういうと、両手、両足を手錠で繋いだまま、ベッドへ繋がれた手錠だけが外される。



「いいのか?」


「もらされても、片付けるのはあたしだからな」



 部屋に備え付けられたトイレに入って済ませる。



 トイレから出るとテーブルの上に食事が並べられていた。



「座りな」



 言われるがままにソファーに腰掛けると、希が横に座る。



「食べにくいだろ。食べさせやる」



 食パンを千切ってスープに浸してから食べさせてくれる。



「こうすれば味がなくても食えるだろ」



 希なりに考えてはくれているようだ。


 一通り食事を終えて、俺は希に問いかけた。



「なぁ、どうしてこんなことをしているんだ?」


「うるせぇ」


「大抵の悩みは解決してやれると思うぞ」



 彼女が協力してくれれば脱出できるかもしれない。



「うるせぇって言ってんだろ。男のお前にあたしの悩みは解決できねぇよ!」



 食器を持って立ち去っていく希。



 ベッドには拘束しなくてもいいのかと思ったが、窓には逃げられないように格子がなされていた。

 扉は鍵がかけられて鉄の扉は体当たりでも開けることは難しい。



「脱出は難しいということか」



 スマホもない。


 ランは無事なのだろうか……今は相手の目的を知らなければならない。



「必ず生きて戻る」



 俺は脱出のための準備を進めることにした。

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