《過去編》
ー5年前ー
時間を遡る。
この日の真はいつになく不機嫌だった。適性が分かってから今日まで一日たりとも修行を休んだことはなかった雨が降り続く梅雨の日、誰もが暖房で暖まる冬の日、例えどんな日であろうと、どんな状態にも関わらず続けてきた。にも関わらず、真は無属性で物を作ることは出来なかった。
「生成指定、《ナイフ》」慣れないが故に、言葉に出して魔導を安定させる。
真の手の中に銀色の四角の立方体が浮かび上がる。
そして、徐々に姿を変えていく。しかしこの幻想的な光景は長くは続かなかった。
パリン
「だぁ!失敗だ、くそったれ」こうして失敗がいつまでも続く。この頃は風も鍛え、さあ今度は無属性と意気込んでいた真の心を叩き潰す試練となっていた。
悪態を付く真の近くには、失敗したが故に透明の魔力の欠片がさながらマリンスノーの様に空中を漂っている。
「あの本は嘘だったのかなあ?」適性検査を受けるきっかけになった先生から貰った大事な本。それを持ってもう一度、今度こそと思っていた。
何度も何度も繰り返してきた、挫折を、前世を思い出す。友達と呼べる存在に裏切られ信じきれなくなった時期、目標と努力を奪われた不意の怪我。それらを思い出しもう一度決意を燃やす。
(今回は諦めない!)
そして……
パリン
スッキリする音で失敗した。その余りの呆気なさに思わずブチ切れたくなる真だったが、流石に孤児院の中で叫ぼうものなら、間違いなく先生からのお説教に繋がる。よって叫ぶことができないもどかしさを感じることになった。
(何でできない?何がおかしい?何が何)
「おーい、真?どうしたブツブツ呟いてないで鏡を見たらどうだ、酷い顔だぞ」優しさに溢れる言葉をかけてきたのは今年で17歳になる真にとっての兄である啓太だった。
「あっ啓太兄さん?いつの間に入ってきたの」来年になったら受験生として勉強が始まる啓太は学校に行ったままのことが多い、それに今日は平日。普段はいないこの時間帯にいることに対しての疑問を浮かべる真。
「今日は、休みになったんだよ」
「なんで?」
「さあな、噂だがどっかにテロが予告されたとかなんとかでな」さらりと危険そうな話を何でもない世間話のように語ることに真は流石に驚きの声を上げる。
「嘘でしょ⁉︎」
「残念だけど、多分本当なんじゃないかなとは思うぞ。ま、真も気にしとけ」
(これ、自衛の為にも早く完成させないとテロとかに会ったら不味い!)
数日後、自分の方法が間違いであったと分かり、今度こそ叫び声をあげてしまうのは仕方がないことだった。
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ー10年前ー
爆風と飛び散る赤い血によって、平和だった商店街は地獄と化した。もし、この場に幻葬士が居てもあまりの凄惨な光景に吐き気を催していただろう。それほどの光景。
近くでは、鉄の弾と怒号が飛び交い続けている。そんな中、この場で唯一の生存者になった、なってしまった一般人の少年の命も消えかけていた。
そして、それも消えようとしていた。そこに
「おい、しっかりしろ!」商店街に飛び込んできた幻葬士によって少年は助けられる。
それは原作主人公の始まりの記憶だった。
数年後、保護された少年は自分を救った幻葬士と一緒に暮らしていた。
「今日でお前も、こことはおさらばだ」
「へ、お義父さんそれって?」あれほど厳しく、それでいて優しかった義父が今日に限って何かおかしかった。そしてそれが自分と別れるからだと認識する。
「嫌だよ、義父さんと別れるなん「アホかお前?んな訳あるかよ、どういう訳かPandoraである剣と契約しちまったお前と別れる訳があるか、ようやく修行を始めんだよ」本当⁉︎」優しかった訳が分かって安心を覚える少年。
「当たり前だ、嘘はつかねえよ。これから先はキツい修行だからな、引っ越しも必要なんだ、引っ越し先は幻葬士が沢山いるからなしっかりしろよ」
「わーい、引っ越しだ!」まだ見ぬ新天地を夢見て少年は引っ越しを待つことになる。




