小論文『職業が手の形に及ぼす影響』について
コナン・ドイルが生みだしたシャーロック・ホームズはかの有名な名探偵である。そんなホームズだが、作中ではかなりの数で論文を書いている。その内の一つが『四つの署名』で登場する『職業が手の形に及ぼす影響』だ。これはスレート職人、水夫、コルク切り工、植字工、織物工、ダイヤモンド研磨工の手の形を研究して小論文にまとめたものだ。簡単に言うと、手の形だけで職業を見分ける研究のようなものだ。
一つ、私が思いついた物で例を挙げてみよう。『白蝋病』という病気がある。血行不良になった指が白蝋のように真っ白になるものだ。これは振動工具を長期間使用する労働者の一部の人に起こる病で、手足の血管が収縮して血行不良になる。手の形ではないが、これは職業が手に及ぼした影響といえる。
ホームズシリーズにも例はある。第一作品目の短編集『シャーロック・ホームズの冒険』の一編『赤髪組合』で、赤髪の依頼者ウィルスンの手を見たホームズは左手より右手の方が一回り大きいことから手先の労働をしていたと推理した。実際にウィルスンは船大工で身を立てた者だった。これこそ、職業が手の形に及ぼす影響だ。
おそらく、このエッセイよりホームズの著した『職業が手の形に及ぼす影響』の小論文の方が例が豊富だろう。何にせよ、『職業が手の形に及ぼす影響』は探偵や警察が犯人捜索や身元不明死体の身元を調べるのに大いに貢献したことだ。
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※正しい参考文献の書き方とは多少の違いがあります。ご了承ください。
〔参考文献〕
コナン・ドイル『四つの署名』延原謙訳 新潮文庫
コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』延原謙訳 新潮文庫
坂田英治, 大都京子, 梅田悦生, 高橋邦丕「振動と職業病いわゆる『白ろう病』にみられる中枢神経障害」『日本耳鼻咽喉科学会会報』
平賀三郎『ホームズなんでも事典』青弓社
『白蝋病』-Wikipedia
コナン・ドイル『赤毛連盟』大久保ゆう訳 青空文庫↓
https://www.aozora.gr.jp/cards/000009/files/8_31220.html