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客人2

───ギギーーー

 重い扉を開けて、外に出る。寒い。さすが冬だ。外は一面真っ白で、外界と完全に隔たれている。


 …?……先月からずっと、街には降りれないほど雪が積もってるのに。あの男、よくここに来れたな…どうやって?


 一気にあの男が不気味に感じる。


 積んでおいた薪を抱えられるだけ抱え、家に戻った。男を横目に薪を暖炉のそばに積み上げると、俺は男を避けるようにレイの元に向かう。


「……なぁ、レイ。あいつ、知り合い?」

 男には聞こえないように小声で、朝ごはんを作っているレイに問う。


「知り合いかといわれれば知り合いですが、他人かといわれれば他人です。…大丈夫ですよ。手を出さなければ、害にはなりません。さ、ご飯出来ましたよ」


 答えになっていない。


 レイは言い終わると、机に皿を並べ始める。


 ()()()()()()()()って……考えないでおこう。


 机の上には、二人分の食事。俺は、男たちの分は無いのかと不思議に思っていると、レイは笑って答えた。


「あの者たちの食事は別です。作るの、手伝って下さいね?」

「…?…分かった」


 正直よく分かっていなかったが、まずは腹ごしらえだ。せっかくレイが作ってくれたのに、冷めてしまっては申し訳ない。




 皿洗いは俺の仕事だ。朝食を終えて、皿を片付けた。


 その間、レイは部屋の奥から何やら薬草や分厚い本やらを持ち出してきた。


 レイの部屋からは、もの凄い騒音が聞こえたので、部屋がめちゃくちゃなのは想像に難くない……。レイは整理整頓が苦手だからなぁ。春が来たら絶対、大掃除してやる。


「ルーク、なぜ私の部屋を睨んでいるんですか?…それより、鍋に水を入れて持ってきてくれませんか?」

「あ、あぁ」


 水の入った鍋を食卓の机に置く。レイは、何やら分厚い本を見ている。


「何の本?」


「魔術の本です。私は魔法を使う女で魔女ですから、魔術は専門外です。魔法ではどうにもできませんから…努力はしますが…読んでみますか?」


「俺、字読めないし…魔法使いでも魔術師でもないし、意味ないだろ?」


「…?…字の読み書き、教えましょうか?ルークは魔術師の素質がありますから、きっと」

 そこまで言って、レイは口を閉ざした。目線は、あの男に向いていた。


 あの男は何も言わないが、目だけがこちらは向いていた。酷く、憎悪のこもった目だった。今すぐにでも、こちらを殺そうとしているような…。


「…っ……」

 体が震えあがる。ガタガタと体が恐怖を訴えてくる。怖い、怖い、怖い、怖い、怖い……。




━━━ドンっ

 大きな音が部屋中に響いた。


 音の主は、レイだった。レイは笑顔で男を見ていた。


「……その殺気を閉まってくれませんか?お前にその資格はありませんよ」

 レイがそう言うと、男は少しして殺気をしまい、また女を少し悲しそうに見ている。


 レイは、黙って手を動かしていた。


 俺も手伝った。何を作っているのか、よく分からないけど…。




「出来ました」

 その後、何やら薬草を入れ、煮詰めた。色が…紫なのだけど…。


「さて、これを飲ませば……」

「えっ、これ…飲ますの!?凄い色だよ?」

「…良薬口に苦しって言いますから」


 …味の話じゃないんだけど?


 レイはその紫の液体を器に入れ、男に差し出した。


「……」

 いかにも怪しい液体に、男も俺と同じことを思ったのか、液体とレイを交互に見ている。


「…良薬口に苦しって言いますから」

 レイは俺に言ったのと同じことを、男にも言う。男は器を受け取ったが、大丈夫かと渋っていた。


「安心して下さい。あなたも飲むんですよ?」

「……え」

 男はしばらく迷っていたが、決心をしたのかその器に口をつけた。相変わらず無表情だが、どこか複雑そうな顔をしていた。


 その顔に…どんな味だったんだろ…と思わされる。。その後、複雑そうな顔をしたまま、女の方にもそれを飲ませていた。


「ルークも飲みますか?」

「全力で拒否させて下さい…」


 どんな味かは気になるが、飲みたくない。彼らには悪いが、どんな理由か知らないけれど彼らのような切羽詰まった状況でもない限り、絶対に嫌だ。




─────良薬口に苦しというのはよく分からないが、良薬であるのは確かなようで、日が沈む頃には女の人の顔色はだいぶ良くなっていた。


 男の方はというと、女の様子に安心したのか、気づいたら眠っていた。


「こうしていると、いい人そう」

 殺気を向けていた姿とはまるで別人みたい。


 俺は自分の部屋から大きめの毛布を一枚取ってきて、二人にかけてあげた。

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