表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/28

魔女の家

 私は街からかなり離れたところに住んでいます。


 ここから乗合の馬車に乗って、ギリギリ日が沈みきっていない時間につけるくらいの距離です。


 ですが、この少年と一緒となると、馬車は乗れそうにありません。さすがにここまで汚れていては、目立ちますしね。つまり、帰るに帰れません。


 え?転移魔法ですか、使えませんよ?

 え?飛行魔法ですか、使えませんよ?


 破壊しか能のない私はどうするか、そんな時はこれです。


 少年を連れ、私は街から出て少しした所で立ち止まります。誰もいないことを確認して、取り出したのは『魔道具』です。


 魔道具とは魔石を核として、魔法使いでは無い人でも魔法の恩恵を受けられる道具です。これは魔術に近い代物ですね。


 欠点としては、消耗品なので回数制限があったり、用途が確定していることです。


 そして、最近では後継者不足なのでしょう、作れる人が減ってきています。まぁ、需要自体減ってきているのが現状ですが…私にとっては死活問題です…。


 それは置いといて、今日は『魔道具』のこの腕輪を使って家に帰ります。これは、覚えさせた所に転移することが出来るだけの魔道具です。


「少年、手を出してください」

 そう言うと、少年はビクッと肩を跳ねさせました。そして、恐る恐る私の方に手を出します。


 だから、私のどこが怖いんですか?私、何か恐れられることしましたっけ?


 私は差し出された少年の手を握り、呪文を唱えます。すると、腕輪が光り始めました。




─────気が付くと、周りが森林に変わっています。目の前には木でできた、こじんまりとした家が見えます。そう、ここが我が家です。


 私はずっと俯いている少年を見ました。


 痩せていますから、ご飯を食べさせないといけません。それから、手入れもせず、ずっと伸ばしっぱなしにしてきたのであろう髪も整えたいです。服もヨレヨレですね。サイズの合う服があるといいのですが。


 やる事は山積みですね。何より、話もしないとですが、それは後でいいでしょう。


「…さぁ、私の家に着きました。まずは、どうしてくれましょう」

 少年が、少しビックとしました。からかいがい(・・・・・・)がありそうな子です。


「まず、お風呂ですね。自分で入れますか?私が入れてあげましょうか?」

 これまた、少年はビクッとしました。少年の口が、開いたり閉じたりを繰り返しています。


「あ…えっと…その……」

 これは埒が明かないですね。


 私は、少年を猫のように持ち上げます。…というか、猫みたいに軽いですね。私より背は低いですが、そこまで小さい子供ではなさそうですから、この体重は異常ですよ…。


 少年が何か言っている気がしますが、気にしません。そのまま、私はお風呂場に直行です。


 少年の身ぐるみを剥ぎ取って、お風呂に入れます。魔道具で、お湯を出して、少年を洗おうとしました。


 この時私は、初めて少年と同じ目線に立ちました。


 今まで、少年は俯いていたし、私は上から見下ろしていたので気が付かなかったのです。


 …少年が泣いていたことも、震えていたことも。そして、その長い髪の隙間から見える、その重苦しい首輪も。何より、その顔に、身体に刻まれた呪印に。


 随分と厄介なものを拾った事に、今更ながらに気付きました。


 私は、心の中で深呼吸します。なるほど、さっきから怯えているのは、私が魔女(・・)だからでしたか。


「改めてまして、私は終焉の魔女、レイラです。私は、非道は好みません。魔法も好みません。大丈夫ですよ。私はあなたの味方ですから、そう怯えないで下さい」


 私は出来る限りの優しい声で少年に語りかけます。


 少年は何も言いませんでした。


 その後は、そのまま少年をお風呂に入れてしまいました。服は持ち合わせがないので、なるべくシンプルな服を貸しました。…私のお古なのは内緒ですよ。


 一瞬、嫌そうな顔をしたのを見た気がしますが、気のせいだと思うことにします。


「デカいですね…」


 街に行って、色々と買い揃えないとですね。


 次は、食事です。誰かに食べてもらうなんて久々で、緊張します。


 そんな調子で、料理が完成しましたが…少年よ、寝るなら食べてからにしてください。こんなに作って、私一人じゃ食べきれないのですが。


 少年は、眠っていました。


 まぁ、ずっと気を張っていたようですから、疲れたのでしょう。私は少年をベッドまで連れていき、寝かせます。


「起きたら食事ですよ。今晩の残りでも、許してくださいね。あなたが寝てしまったのがいけないんですから」


 私はそっと少年の瞳から流れ落ちる涙を拭い、少年の頭を撫でると部屋を後にしました。


「……何の因果でしょうね?」

 今作では、〝魔法〟とは使い手自身、または外界にある魔力そのものを使った、異能の力としています。


 逆に〝魔術〟とは、術式及び、魔石や生贄などの魔力の代わりになるものを利用した、異能の力としています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ