さあ、冒険をはじめよう。
前回までのあらすじ
護衛依頼のために待ち合わせ場所に向かったハドだが、
そこで待っていたのは、あのアレクだった。
絶望するハドだったが、
なんとか、護衛依頼に参加できることになった。
道中、アレクから、ひどい扱いを受け、
ボロボロになって動けないハドの治療をしたのは、
依頼人のひとり、ハルだった。
ハルの治療に安心したのか、ハドは意識を失って...。
【作者からのお願い】
今回、少し長めです。
かなり、いい場面ですので、最後まで読んでいただけると嬉しいです。
よろしくお願いします!!
ほんっとに、ほんっとに、お願いします!!(懇願)
「・・・!!」
「・・・・・!!」
(誰かが何かを話している?)
(ぼくは一体何をして...?)
そこまで考えてハドは、はっと目を覚ました。
「ですから、そんな冒険家なんて放っておきましょうと言っているのです。」
「こんなボロボロになるまで働かせることはないでしょう!!
少し休ませるべきです!!」
ハドの目の前では、依頼人の二人が言い争っていた。
「あ、起きられたのですねっ!!」
言い争っていたうちのひとり、ハルがハドの方を向いてにっこり笑いかける。
「ご、ごめんなさいっ!!
ご迷惑をおかけしたみたいでっ!!」
ハドは慌てて謝る。
「本当ですよ!
こちらが依頼しているのですから、最低限の働きはして頂かないと。」
そう言ったのは、ハルと言い争っていた、依頼人のコンベットである。
「コンベット!!
そんな言い方はないでしょう!! ハドさんは精一杯されていました。
それはあなたも知っているでしょう!!」
ハルはコンベットからハドをかばう。
「精一杯仕事をすれば、我々に迷惑をかけてもよいというものではないでしょう。
さあ、起きられたのでしたら、仕事に戻っていただけますか?」
コンベットはハドにそう告げる。
「も、もちろんですっ!! 今すぐ戻ります!!」
ハドは慌てて、その場から出ようとし、そこが荷車の中だということに気が付く。
荷車に乗せてもらっていたことに申し訳なさそうに頭を下げながら降りようとする。
「いけませんっ!! ハドさん!! まだかなり痛むでしょう!」
ハルは、ハドを止めようとするが、ハドは首を振り、
「ハル様、ぼくの傷を治してくださってありがとうございます。
ぼくは大丈夫ですから、心配はいりません。
これでも、冒険家なんですから。」
ハドは、にっこりとハルに笑いかけ、荷車から降り、護衛に戻っていった。
「もう、心配してるのに...。」
ハルはそんなハドの背中を心配そうに見つめるのであった。
★☆★☆
護衛に戻ったハドは、一行が進んでいる森の中の雰囲気に何か寒気のようなものを感じた。
(何だろう。 気味が悪いくらいに静かだ。 何かおかしい。)
そこへ、アレクが大声でハドに声をかける。
「雑魚でサボりの雑用くんよぉ!!
サボっただけの覚悟はできてんだろうなぁ、おい!!」
その声は、森中に響き渡る。
「ご迷惑をおかけしました。 申し訳ございません!!」
ハドは、アレクにそう謝ると、
「アレクさん、森の状況がなんだかおかしいと思いませんか?」
と続けた。
「あぁん!? てめぇはけじめをつけるってことを知らねぇのかぁ!?
そんなだからてめぇは雑魚なんだよっ!!
今ここで、土下座だっ!! 土下座しろっ!!」
アレクの声が静まり返った森にやけに大きく響き渡ったような感覚を受ける。
ハドはそんな様子にさらに嫌な予感を覚え、
「無事、街に着けば、しかるべき処遇をお受けします。
今は、ここを抜けることを考えましょう。」
と声を抑えて言う。
「てめぇが、 クソ雑魚雑用のてめぇが、
俺に、 指図してんじゃ、ねぇっ!!!」
アレクは叫びながらハドを蹴り飛ばす。
小さなハドの体は、軽く吹き飛んで、荷車の前まで飛ばされた。
「うわっ!! なんだっ!! 」
ハドが前に飛んできたことに驚き、御者が慌てて荷車を止める。
「かはっ... けほっ、けほっ...。」
吹き飛ばされたハドは、痛みに咳き込む。
「ハドさんっ!!」
ハルが気づいて、荷車から降り、ハドのもとへ駆け寄る。
「また、こんなに傷ついて...。」
ハルは、また傷薬を取り出し、ハドに塗ろうとするが、
ハドはそれを手で制し、苦しそうに言った。
「ハル様。 今から私の言うことを信じていただけますか?」
「もちろんですっ!!」
ハドは少しほっとした様子で、そしてどこか覚悟を決めた顔でこう言った。
「今すぐに、この場から離れてください。
この森を抜けるまでは、全速力でできるだけ急いでください。」
ハルは、しばらくその言葉に驚いていたが、
「一体何があるんですか?」
とハドに尋ねた。
「ここは... ここには... 」
ハドがそう言いかけた時だった。
「きゃあああああーー!!!」
誰かの悲鳴があがった。
続いて、あちこちで悲鳴が起こり始める。
「はじまった。」
ハドはそうつぶやくと、ハルに叫ぶ。
「もはや、一刻の猶予もありません!!
できるだけ、遠くへお逃げください。 ぼくたちができるだけ時間を稼ぎます!!」
ハルは、その言葉に真剣な面持ちで頷いた。
「では、お約束いただけますか?
必ず、生きてお戻りいただくと。」
ハルは、ハドをじっと見つめて問う。
ハドは、ハルのその言葉を聞き、にっこり笑うと、
首からさげた布で包まれた何かをハルに預けた。
「それは、ぼくにとっての宝物です。
しばらくの間、持っていて下さい。」
そう言ってハドは、力強く立ち上がる。
腰の刀をぎゅっと握りしめ、一度も振り返ることなく、悲鳴の上がる方へ駆けていった。
★☆★☆
「こいつは、グレイザールじゃねぇか!!
しかも、普通のよりでかすぎる!!」
アレクは、突如として現れた脅威、
B級討伐対象“グレイザール”と対峙していた。
通常のグレイザールは、高さ2メートル程の二本足で立つトカゲだが、
今アレクが対峙している個体は、高さは軽く5メートルは超え、
尻尾を合わせた体長は、10メートル近くもあった。
グレイザールという魔物は、力が強く、
攻撃を受ければ、致命傷になりかねないが、
非常にのろいので、攻撃をかわすことはたやすい。
しかし、その表面を覆う鎧のような鱗は、
非常に硬く、傷つけることが極めて困難なため、
突破できる攻撃力を加味して、B級討伐対象に指定されているのだ。
「ま、グレイザールごときに遅れをとるアレク様ではないが、なっ!!」
(付与!!)
アレクは手に持った剣に魔法を付与すると、グレイザールに向けて振り下ろす。
ガンッ!!
鈍い音がしてアレクの攻撃がその硬い鱗に阻まれる。
「はぁ!? 硬すぎんだろ!!」
アレクは、通常のグレイザールならば傷つけることができたであろう自分の攻撃が全く通じなかったことに驚愕する。
「特異固体か、 くそっ!!」
そしてグレイザールがアレクに向かって突進を始める。
「はんっ! てめぇののろまな攻撃なんざ...っは!!」
アレクはそのグレイザールならざる攻撃に驚き、慌てて回避する。
そのグレイザールの攻撃は、初速こそおそいものの、加速するとものすごい速さで突進してきたのだ。
「なんだ、こいつはっ!!」
アレクは、その特異個体を、グレイザールではないと判断する。
(グレイザールもどきがぁっ!!)
アレクは、旅がそのグレイザールもどきによって順調ではなくなったことにイライラを隠せない。
勢い余ったグレイザールもどきはそのまま、アレクを通り過ぎても突進し続け、
森の大岩を粉砕し、大木をなぎ倒して止まる。
「おいっ!!魔法で攻撃しろぉ!!」
「氷柱!!」
「炎弾!!」
「雷光!!」
「風突!!」
アレクの声と同時に、四方から様々な魔法が飛び交う。
アレクのパーティメンバーの魔法だ。
魔法によりあたりを爆煙が包み込み、しばらくして
無傷のグレイザールもどきが現れる。
「そんなっ!! あの数の魔法を受けて無傷だなんてっ!!」
そう言ったのは、プルシェである。
「おい、こいつは俺らじゃどうにもならねぇ、引くぞっ!!」
アレクはパーティメンバーを連れて、退却を開始する。
アレクは腐ってもBランク冒険家であり、引き際は心得ているのだった。
依頼人の荷車のもとへ急ぎ、共に退却しようと呼びかける。
護衛の冒険家が依頼人の荷車のもとへ、集まり、一斉に退却を始める。
そんな一行を見逃すグレイザールもどきではない。
どしん、どしんと地響きを立てながら荷車の方へ突進を開始する。
「まずいっ!! 横に逸れろっ!!」
幸い、グレイザールもどきの突進は、急な方向転換ができないようで、
ぎりぎり、荷車の横を逸れていった。
その後、大きな音を立てて森の中の木々を粉砕していく。
このままでは荷車を連れては、退却ができない。
「チィッ!! おい、荷車は捨てていくぞっ!!」
アレクはパーティメンバーにそう呼びかける。
そこへ、依頼人のコンベットが叫んだ。
「この荷車には大切な荷がつまれているのですっ!!
捨てては、エルクラード商会の恥となりますっ!!」
「それは、命よりも大切なのか?」
アレクが聞くと、コンベットはしばらく黙り込み、こう言った。
「しかし、仮に荷車を捨てたとして、
私共はかの魔物からは逃げられないでしょう。」
その発言はもっともであり、依頼人の商会の人間たちが、
冒険家のように、魔物から逃げられるとは思えなかった。
そう言っている間にもグレイザールもどきは、再び一行に突進を開始した。
「くそっ!! おいっ!! 助かりたければ荷車から降りろっ!!」
アレクは強引に話を終わらせ、パーティを引き連れて、グレイザールもどきから逃げ出す。
「えっ!? ちょっとっ!! 待ってくださいっ!!」
置いて行かれた依頼人たちは混乱し、荷車の中で慌て始めた。
その間にも、グレイザールもどきは荷車に接近し、
もうダメかと思われたその時、
「やあぁぁぁっ!!!」
荷車とグレイザールもどきの間にハドが割り込み、
グレイザールもどきに向かって、刀を振り下ろした。
ハドの冒険家ランクは“E”である。
ハドのステータスは、最も低い“紫”である。
相手は、B級討伐対象である、グレイザールの特異個体。
その場にいる全員が、ハドは死ぬだろう、と思った。
次の瞬間、全員が目を疑った。
ハドが、グレイザールもどきの攻撃を受け止めていたからだ。
しかし、それも一瞬のこと。
次の瞬間には、ハドの体は宙に浮き、グレイザールもどきに吹き飛ばされてしまった。
しかし、一度グレイザールもどきの突進が止まったことで、
荷車は、逃げることができ、依頼人たちは助かったのであった。
そこへ、アレクが戻ってきてこう言った。
「よかった。 無事だったか。」
その言葉に、依頼人が怒る。
「ふざけるのもいい加減にしてくださいっ!!」
「こっちは死にかけたんだぞっ!!」
アレクは一切悪びれることなく、へらへら笑う。
「とにかく、よかった。
今は逃げるのが先決だ。 準備はいいか?」
そう言って、御者に荷車を走らせるよう指示をした。
御者は、急いで荷車を走らせる。
その様子を確認したアレクは、
グレイザールもどきに吹き飛ばされたハドに向かってこう言った。
「おぉい! 役立たずの雑用くんよぉ!!
ようやくてめぇの役に立てる時が来たぞっ!!
俺達が逃げるまで、囮に「アーレークーッ!!!」
アレクの言葉は、言い終わらぬうちにハドの言葉に遮られた。
「依頼人を頼んだっ!! ぼくが時間を稼ぐっ!!」
アレクは、予想外の言葉に少し驚いて、
「ケッ!! Eランクごときが冒険家みたいなことを言いやがって!!」
と吐き捨てるように言ったが、その声はハドには届かなかった。
★☆★☆
グレイザールもどきから全速力で逃げる荷車の中では、
ハルが、ハドから預かった小さな包みを握りしめていた。
(どうか、どうか、無事でいて...。 ハドさん...!!)
その隣では、そんなハルの様子を見つめるコンベットがいた。
(我々は、彼のことを見誤っていたのでしょうか?
彼にあれほどひどい扱いをしておいて、彼に助けられてしまった。)
コンベットは、彼にした己の行いを恥じ、彼に感謝し、彼の無事を祈るのであった。
★☆★☆
ハドは、とてつもなく大きなその魔物と対峙していた。
全身を覆う鎧のような鱗。
二本足で地響きを鳴らしながら、迫ってくる。
恐怖で足がすくんでしまいそうだが、彼の背後には、守るべき者がいる。
(絶対にここは通さないっ!! 正直、自信は無いけど...。)
ハドは、瞳に強い光を宿し、刀を構える。
ウォルクの姿が脳裏をよぎる。
仲間たちの顔が、姿が、
ハドの心を熱く滾らせる。
「ぼくには、冒険家には、やらなきゃならない時があるっ!!」
ハドは、刀を握りしめ、大きな脅威の前で、宣言した。
「さあ、冒険をはじめよう。」
【作者からのお知らせ】
いつも、読んでくださっている皆さん、
ありがとうございます。
この度、少しお知らせがあり、報告させていただきます。
実は、私、この物語の構成や、プロットなどを全く練らずに作っております。
頭の中でぼんやりとはあるんですが、
いつも、その場で考えています。
もちろん、下書きなどもありません。
そのため、1話更新するのに、3、4日かかってしまっています。
お待たせして大変申し訳ございません。
ですので、次の話も全く考えていないのです。
まさに、一寸先は闇...といいますか、一頁先は無...ですね。
(誰がうまいこと言えと。)
私は、上位にランクインされている作品を読むことが多いのですが、
そう言った作品に共通していえることは、
もちろんお話もとても面白いのですが、
毎日更新されている事なんですよね。
中には、1日に何度も更新されている作品もありました。
やっぱり、そういった工夫といいますか、努力は必要なのだな、と感じるとともに、
私の作品も、とにかく、見てもらうためには毎日更新するべきだな、と感じました。
という前置きはさておき、(前置き長すぎ)
毎日更新してみたいので、少しお時間いただきたいのです。
書き溜めておいて毎日更新できるだけの、準備をしたいのです。
どれくらい時間がかかるのか、まだわかっていないのですが、
お話がひと段落するくらいまで下書きしておいて、
毎日更新してみたいのです。
そのため、少しお時間いただきたいです!!
お待たせすることになって大変申し訳ないのですが、
必ず、面白いと思える作品に仕上げて戻ってきますので、
しばらく、お待ちくださいっ!!
よろしくお願い致します。
活動報告などで、進捗を報告できればと思います。
織華といいます。
執筆経験はありません。
拙い文章、拙い構成をお許しください。
ご意見、ご感想など頂けると喜びます。
応援してくださっている方、読んでくださった方、
いつも本当にありがとうございます。
よかったら、☆マークをポチッと、ポチポチッと、ポチポチポチッとお願いいたします。
これからもどうぞ、よろしくお願い致します。