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第8話 一回目のまとめ

 学校帰りにコンビニに寄って食料品を買い込んでから帰宅しようと思ったけど、誰かに見られているといけないので、放心状態を装いながら真っ直ぐ家に帰った。


 家に帰ってからもリスニングに時間を使って、終わってからお風呂にゆっくり浸かって、それから買い置きの惣菜パンをドリンクで胃に流し込んだ。


 寝る前に今日一日の出来事を振り返ってみようと、リビングでノートパソコンを開いてみたけど、どうしても真剣に取り組む気にはなれなかった。


 たぶん、おそらく、それは、頑張って事件を調べなくても、事件当日の記憶さえ戻れば、一発で犯人が分かると思ってしまうからだ。


 特別棟の三階にいたのは憶えている。窓が開いていて、突き落とされた記憶もある。


 だけど、肝心な、その前後の記憶がきれいに抜け落ちているのだ。誰かと一緒にいたのなら、その人物こそが『人狼モドキ』だ。


 とはいえ、記憶が戻る前に正体を見破られる可能性もあるので、とりあえず情報だけでも整理しておこうと思った。


 事件とは別に、人狼ゲーム内のやり取りだけでも『人狼モドキ』を見つけることができると考えられるからだ。


 元カノの愛川さんについて。

 スマホで配役を確認した時、ホッとした表情を見せた。

 間違いなく、シロ。


 真面目な宇崎さんについて。

 勝手にスマホを操作して、最初に罰を受けた。

 用意した演技とは思えない。

 間違いなく、シロ。


 友達の近江谷くんについて。

 投票が遅れて罰を受けた一人。

 そこにどんな意味がある?

 彼らは少数派だ。

 だけど、それが自然なのかもしれない。

 すんなり投票する方が異常なのだ。

 間違いなく、シロ。


 ムードメーカーの岸くんについて。

 配役を確認した時、「だよな」と言った。

 どっちともとれる発言だ。

 千葉くんとの仲良しグループでもある。

 とりあえず、グレー。


 地味な剣崎さんについて。

 投票が遅れて罰を受けた一人。

 配役を決める時、泣きそうだった。

 一番怖がっていたように見える。

 間違いなく、シロ。


 委員長の小石川くんについて。

 率先して千葉くんを追及していた。

 基本的に表設定では、目立って得することは何もない。

 理不尽に襲撃されるだけ。

 怖くないのか?

 裏設定を知らなければ殺されるかもしれない恐怖があるはずだ。

 それがまったく感じられなかった。

 いや、襲撃される意味が分かってないのかもしれない。

 白狼男は襲撃されたら殺されるとは言っていなかったからだ。

 だから村人側全員で勝とうとしたのだろう。

 ただし『人狼』には二つのタイプがある。

 場をリードするタイプと、黙って息を潜めるタイプ。

 前者の可能性もある。

 シロだと思ってたけど、迷ってしまう。

 とりあえず、グレー。


 喋らない宍戸さんについて。

 最初に外に逃げようとした人。

 パニックを起こしたのは彼女だけかも。

 間違いなく、シロ。


 元イジメられっ子の瀬能くんについて。

 配役を確認した時、微笑んだ。

 そこで『人狼モドキ』なら笑うだろうか?

 演技だとしたら不自然さを感じさせるだけ。

 でも、千葉くんと仲良しグループでもある。

 とりあえず、グレー。


 グラビア系の多田さんについて。

 ほとんど印象に残っていない。

 沈黙タイプの『人狼』なら最も厄介な存在。

 保留するしかない。

 とりあえず、グレー。


 お喋りの千葉くんについて。

 勝手に自爆。

 しかし「事件とは関係ない」とはどういうことだろう?

 利用されただけ?

 自覚のない共犯者なのかもしれない。

 だとしたら黒幕を知らないとも考えられる。

 しかし間違いなく、クロ。


 目立ちたがりの勅使河原くんについて。

 最初に『村人』宣言した人。

 そこから変な流れが生まれた。

 でも、元々そういう人だ。

 彼も千葉くんの仲良しグループ。

 とりあえず、グレー。


 幼馴染の西村さんについて。

 流れから『村人』宣言した人。

 乗っかりやすい状況ではあった。

 だから『人狼』だとしたら好都合だっただろう。

 いや、違う。

 どうせなら役職持ちを装うはずだ。

 その方が投票されにくいから。

 裏設定を知っていれば尚更だ。

 最初に役職がないことを打ち明けるメリットはゼロ。

 千葉くんが自爆した後なら尚更だ。

 投票が遅れて罰を受けた一人でもある。

 間違いなく、シロ。


 大人しい蓮見さんについて。

 投票が遅れて罰を受けた一人。

 それしか印象に残っていない。

 情報がなさすぎる。

 とりあえず、グレー。


 お調子者の日比谷くんについて。

 意味もなく窓を開けようとしたのが気になる。

 でも、元々そういう人だ。

 彼も千葉くんのグループ。

 とりあえず、グレー。


 妹系の古橋さんについて。

 彼女が『人狼』なら頭おかしい。

 フェイクの表設定について真剣に考えていたので『村人』だろう。

 わざわざ設定の不完全さを追及するはずがない。

 間違いなく、シロ。


 モデル系の本庄さんについて。

 古橋さんの話を広げていた。

 わざわざ疑問点を口にするはずがない。

 間違いなく、シロ。


 アイドル系の美山さんについて。

 印象に残る言動は一つもなかった。

 僕が自殺じゃないことを知って何を思ったか?

 表情からは分からなかった。

 ポーカーフェイスなら恐ろしいが、彼女はそんな人じゃない。

 信じている。

 彼女になら殺されてもいい、まである。

 それは冗談として、彼女が動機になってる可能性がある。

 嫉妬されたか、誤解されたか。

 彼女のストーカーだとしたら、犯人は男か?

 そういう意味でも、彼女の周辺を調べるのも一つの手だ。

 彼女は間違いなく、シロ。


 知的メガネの武藤さんについて。

 人狼ゲームに詳しい。

 殺人未遂事件を調べる意欲もある。

 普通のゲームなら真っ先に狙われやすい存在だ。

 その分『騎士』から守られやすい。

 ただし『騎士』が『人狼』を守ってしまう場合もある。

 小石川くん同様、判別が難しい存在だ。

 この二人が『人狼』コンビなら勝つのは難しい。

 味方なら頼もしいが、敵なら最悪だ。

 大丈夫だと思ってたけど、やはり要注意人物だ。

 とりあえず、グレー。


 孤高の諸星くんについて。

 投票が遅れて罰を受けた一人。

 彼には単独行動をしても不自然じゃない怖さがある。

 彼が『人狼モドキ』だと、かなり手強い。

 分からないので保留するしかなさそうだ。

 とりあえず、グレー。


 こうして容疑者リストを作ってみたけど、終わった瞬間、やはり意味のないことのように思ってしまった。後から読み返した時に、実は重要なヒントが隠されていた、なんてこともなさそうである。


 それよりも僕には考えなければならないことがあった。ということで、再びノートパソコンに向かうことにした。こういうのは書き出してみるのが一番だからだ。


 『生贄』を追放する場合


 表設定のままゲームを続行できる。

 夜のターンで『人狼』の襲撃がなくても『騎士』が守ったと思うだろう。

 千葉くんがいなくなれば恐怖するはずだ。

 そこで錯乱状態に陥る可能性もありそうだ。

 いや、もうすでに超常現象の最中にいる。

 一度罰を受けた者は従順になるはずだ。

 それから昼のターンでの話し合いを真剣に行うと思う。

 正しい選択をするために事件を調べるはずだ。

 そうなれば僕の勝ちパターンだ。


 『生贄』を追放しなかった場合


 表設定が終了する。

 ゲームに疑問を感じる人が続出する。

 早々に裏設定を開示しなければならなくなる。

 だとして、真剣に話し合う雰囲気になるだろうか?

 やる気がなくても『村長』としての強権は発動できない。

 役職を隠したまま戦えるだろうか?

 適当に投票?

 判断を『村長』に丸投げ?

 普通に起こりそうで怖くなる。

 完全に僕の負けパターンだ。


 こうして二つのケースを比べて考えてみると、『生贄』を追放する以外の選択はないように思える。


 千葉くんから真犯人に繋がる情報が得られなくなるが、それでも追放してしまった方がいい。もしも有力な情報を得られなかったとしたら、その方がダメージは大きいからだ。


 白狼男が現れないので千葉くんがいつ追放されるのか分からないが、下手に接触するのも避けた方がいいだろう。


 そんな風に用心深く考えていても、夜のターンで襲撃を受けたら、そこで終わってしまうかもしれないのが、このゲームの怖さだ。


 今夜、『人狼モドキ』はどんな行動をするだろうか?

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