第46話 過多
「…あ、起きたんだねー。」
通路に出ると、先程俺が、『エレクトリック』で倒した…柄の悪い男が、目を覚ましていた様子だった。
しかし、柄の悪い男らは拘束されて、身動きは取れないようだった。
…イーネさんが、やってくれていたのか…。
「…ちょうどいい、こいつらからも情報を貰おう。」
「「「え?」」」
「…なぁ、お前ら…聞いたら、情報をくれるよなぁ?」
イーネさんは、俺がツッコミを入れる前に、手に火球を浮かべ、柄の悪い男らを脅していた。
「…ヒイッ!話します!話します何でも!なぁ?」
「…あ、ああ、話します!話します!」
「……。」
これは酷い…。
と、俺は心の中で柄の悪い男らに合掌した。
まあ、柄の悪い男に、そんな事をする必要はないのかもしれないけれど、悪い事をしたのと、別の悪い人に巻き込まれるのは、また違うだろう。…うん。
「…えっとなぁ、うーん…。」
イーネさんは、悩んだ様子を見せながら、一瞬こちらを向いた。
「えっ?」
「…カラリちゃんってさあ、知ってる?」
しかし、すぐに柄の悪い男らに向き直り、そう聞いた。
「ヒェッ…し、知ってます知ってます!
あの…勇者さんに付き添っている女の子ですよね!
もちろん、知ってます!知らない訳が無いです!!」
「まあ、さらったのに知らないはずがないよねー。
…で、君らが知っているか分からないけど、君たちのボスは最初、その子の命を狙ってた…とも限らないけど、まあ、どちらかと言えば、命を狙っていた方なんだー。
でも、今はもう違うよね?…カラリちゃんをさらうだけで、危害を加えようとは思ってなかったよねぇ?」
「…!それって…。」
「…あ、ああ、それは、あの…俺達は、よく知らなくて…。」
「た、ただ、確かに、突然、殺す方向から、生かす方向に変わったな…とは、思いました、ええ…。」
「なるほどねー。
本当に狙っていたのはカラリちゃんか、勇者様か、はたまた両方か…考える事が、増えちゃったねー…勇者様。
で、私が本当に聞きたいことは…。」
イーネさんがそう話を続けると、柄の悪い男らは、え、さっきのが欲しかった情報じゃないの?という顔になった。
…今のは、完全に俺を考えさせるためだけの質問だったって事か…。
…もう唐突過ぎて逆に考える事が出来ない。
…まあ確かに元依頼主は、カラリを狙っているような口ぶりだったが、それにしては行動がおかしいという時もあったような気がする。
…誰を狙っていたか、今考える訳には行かないから、取り敢えず心の中にしまっておこう。
俺は、イーネさんの思惑通りには行かないぞ、と、それ以上考えないようにし、イーネさんの話の続きを聞くことにした。
「…君らは、君らのボスの名前を知っているかな。
それに、あいつは、セクタ君がまだ君らの仲間だった頃は、ボスでは無かったようだったよね。
どうして、急にあの後、再開した時には、ボスみたいな事をやっていたのかなー?」
…なるほど、確かにそれは気になっていた事ではあるな。
…いやしかし、もう俺にはバレているからとはいえ、知らないはずの情報をこうもサラサラッと出されると、なんだかなぁ。
AI化病になったタイミングを考えてみるとイーネさんは、もう俺がこの世界に呼ばれた時から俺を追っていたのかもしれない。
だとしたら、まだ問い詰めなきゃならない事があるのだけれども。
…まあ今は柄の悪い男らの答えを聞こう。
「…ええと、そ、それは…俺達のボスは、セクタさんの父にあたる人…だったはずなんです。
でも、セクタさんが居なくなった後…急に、あの人が、病院から、回復のアイテムを盗み出して、俺達を回復させて、俺達を集めて…。」
「…えっ?回復アイテムを盗み出して…!?
それなら病院は…。」
俺は、聞こえてきた衝撃的な言葉に、思わずそう口を挟んでしまった。
「…あっ…いや、で、でも、病院の人達は強くて…な、何人か俺達の仲間が捕まったりして…だから、すぐ、森へ逃げたんです…。」
…つまり、人は無事ってことか?
いや、でも病院の物を盗まれたんじゃ…。
…柄の悪い男らの仲間が捕まったのなら…何か…。
「…。」
イーネさんは、笑顔でこちらを見ていた。
話を遮られたのが気に食わなかったようだ。
…取り敢えず、この話は一旦心にしまっておこう。
大丈夫だ、と信じるしかないか。
俺の様子を確認した柄の悪い男は、話を続けた。
「…そして、ネクステ村の先の森へ戻ったら、廃工場の地下へ来いと言われて…気がついたら、リーディングシティのビルの地下へ来ていたん…です。
…それで…急にリーダーのような行動を取り始めて…もちろん、俺達のリーダーはお前じゃない!…って、反対する者も、居たんですけど…何故かその後、あの人は、ボスの姿になっていて…それで…半分くらい、脅される…形で…。」
柄の悪い男の一人は、ビクビクとしながらそう語った。
「うんうん、なるほどねー。」
イーネさんは、知りたい事を知る事が出来たようで、満足そうだった。
…しかし、俺には、少し引っかかっていることがあった。
…それは、この柄の悪い男が、廃工場の地下から、トラックさんのビルの地下に、突然ワープしたような事を言っているということだ。
…あのビルの地下は、今はない。
あの時、俺はリプラと、空間系の魔法を使える者がいるのではないかという事を話していたが、元依頼主は、その魔法が使えた様子ではなかった。
…そうだ、突然解けてしまった、橋の呪いも…。
つまり、元依頼主には、協力者がいて…。
その、協力者は、まだ…。
「…。」
俺は、まだ見ぬ敵に、少し、恐怖を感じた。
…そうだ、元依頼主を倒したからといって、まだ、やらなくちゃならない事は…ある。
…俺は…大丈夫だろうか…。
そんな漠然とした不安が、俺を襲った。
「…ああ、じゃあ最後にもう一つ聞きたい事があるんだけどー。」
…しかし、イーネさんのその言葉で不安は一瞬にして消失した。
…まだ、あるのかよ、聞きたい事。
柄の悪い男らも、おそらく、俺と同じようなことを思い、俺と同じような顔をしている。
何だか真剣に悩んでいたのが馬鹿みたいだ。
「…まあ、今から聞くことは、絶対に知りたい事では無いんだけど、情報は持っていて損は無いよねー?」
イーネさんは、俺と柄の悪い男らの表情から思っていることを察したのか、俺に向けて、そう言った。
…絶対に知りたいことではないのかよ。
「…はぁ。」
あまりにも情報にこだわるイーネさんを見て、思わずそうため息をついてしまった。
「…それは、セクタ君に関する事なんだけど…。」
「…!」
イーネさんが、ニッコニコで柄の悪い男らから情報を貰おうとした時、遠くから、足音が聞こえたような気がした。
「…セクタさんに関する事、ですか…?」
…そうだ、よく考えてみれば、俺達は今、自警団の人達に元依頼主を連れて行ってもらおうとしている最中だった。
「…ああ、あいつは、ちょっと二重人格っぽい所があっただろ?」
…ここは確かに、分かりにくい所にあるが、自警団の人達と探せば、見つかりはするだろう。
「…え、まあ、確か、に…?
あったような…なかったような…。」
…それに確か、ここに来るまでに開けたものを、俺は一切閉めていない気がする。
「…それってさ、最初から…ああ、出会った時からそうだったのかな?」
…自警団の人を含む皆が、ここに来てもおかしくはない…!
「…えーと、それは…。
まあ、そう…。」
「…!」
「…っ!?」
…その時、イーネさんも、足音に気づいた様子で……。
その後は、何が起こったか、分からなかった。
気づいたら、俺は腕を拘束され、床に倒れていた。
「…っ、勇者さんが居たわ!
…まさか、本当に捕まっていたとはね…。」
…それとほぼ同時に、リムさんの声が聞こえた。
今が、どういう状況なのか分からなかったので、少し体勢を変え、周りの様子を確認した。
…すると、イーネさんも腕が拘束されており、反対に柄の悪い男らの拘束は解けていたのだ。
…つまり、これは…イーネさんが、今の状況を誤魔化すために、一瞬で、柄の悪い男らの拘束を解き、俺と自分を拘束した…という事か?
「…え、ちょっと……ぐあっ!」
「…なっ……!」
柄の悪い男らは、リムさんにより一瞬にして、確保された。
「…………後は、自警団に任せよう。」
「そうね。」
そして、ブロックさんにより、すぐに自警団に引き渡された。
イーネさんは、作戦が上手くいったのが嬉しかったのか、かなり悪い笑みを浮かべていた。
…しかし、これはあまりにも可哀想だ。
「いや、リムさんこれは…。」
「…いやぁ、本当に良かったよ、ここが分かってくれてー!」
俺はさっきのイーネさんの事を二人に話そうとしたのだが、イーネさんにそう話をさえぎられた。
「…おかしいわね。
…あの時は、明らかに、あなたのせいだと思っていたのに。
…本当に捕まっていたなんて…。
一度あなたがあっちの人達の仲間のフリをした時に、あなたのせいにするのが一番騙しやすいと、気づいた可能性も…無いことはないけれど…。」
リムさんは、イーネさんを疑惑の眼差しで見ていた。
「……。」
イーネさんは何も言わず、ただただ笑みを浮かべていた。
「…とにかく、勇者さんが無事でよかったわ。
もうとっくにあいつは捕まえて、自警団に引き渡して…今は、自警団の人と共に、勇者さんを探していた所よ。
…皆待っているわ、早く行きましょう。」
…全員に、かなり迷惑をかけてしまったようだ。
後で謝らなくては…。
と、俺は、リムさんとブロックさんに着いて行ったのだった。
今回も読んでくださりありがとうごさいます。
矛盾が怖い日々。
次回も良かったら見てください。




