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第31話 ビル

「なんで気づかなかったんだ…写真を撮っておくという方法に…。」


…カラリが、さらわれたことだったり、元依頼主の…ことだったり、様々なことを考えていたから…そこまで頭が回らなかった。


「うおおおおぉ!」


…隣のビルの内部は、何の変哲もなく、初めてここに来た時と、全く変わっていなかった。


「…よし、じゃあ、写真…を?

…あれ、リプラが床に空けたはずの穴がない…?」


…そう、全く…。


「……………っ。」


俺は、おそらくリプラが穴を空けたであろう場所の床を、叩いてみた。


「…………音が同じ…気がする。」


「ツイト様!」


「…あっ、リプラ…?」


…そんな事を考えていると、リプラも、このビルに駆け込んで来て、こちらの方に近づいてきた。


「…ここで、何をするつもりなんですか…?」


「…いや、実は…あの地下室を、もう一度確認したいって思っていたんだけど、地下室が消えているみたいなんだ。」


「…地下室が消えている…。」


リプラは、悩んだような素振りをした後、俺と同じように床の音を確認した。


「…確かに、そのようですね…。」


「…ああ、写真を撮っておくべきだった…。」


「…写真…何に使うつもりなのですか?」


…リプラは俺の呟きを拾い、そう返した。


「…ああ、その…写真という証拠があれば、自警団の人も、きっと動きだしてくれるんじゃないかと…思って。」


「…ツイト様、きっと写真があっても、状況は変わらないと思います。

…物的証拠が無かったとしても、あれだけの騒ぎが起きたのであれば、少なからず、勇者を傷つけた罪では、捕まるかと思われます。

…そうならないという事は、きっと、自警団にも、何か怪しいものがいるのかも知れません。」


「…なるほど…そうか…でもまあ、こうやって戻ってきて、入口が消えている事が分かっただけでも…何かのヒントになったのかなぁ…。」


「…そうですね…元依頼主の仲間に、空間を繋ぐ魔法を使える者がいるか、空間を作ったり消したりする事ができる者がいるのかも知れません。」


「…なるほど…。」


…リプラの言葉を聞き、俺の中の焦りの気持ちがだんだん消えて行くのを感じた。

…さっきは思わず突発的な行動に出てしまったが、冷静に考えてみれば、確かに写真に意味はなかったのかもしれない。


…俺は、緊張しているのかな。

トラックさんを、説得しなければいけない状況になるかもしれない、という事を、恐れているのかな…。


…まあ、実際、勇者とは言われているものの、元依頼主にトドメを刺すことも出来なかったし、いつも皆に助けて貰ってばかりだし、そんな自分が説得したところで……というネガティブな感情は、あるんだよな…。


「……えっと、じゃあ、もうここでする事はないと思うから…戻って、連絡を待とうと思うよ。」


俺は、リプラにそう伝え、ビルの前に戻ろうとした。


「…一度、こちらで確認して行かないのですか?」


「…っ、あ、ああそうだよね、えーっと、あっ…来てる…。」


…俺は、たじろぎながらスマホを取り出し、『kantsumire』を確認してみると、トラックさんから、「時間を作れそうだ。」というメッセージが来ている事が分かった。


「…ツイト様、どうされました?

…メッセージが来ているのに、何やら、嫌そうな顔をしておりますが…?」


「…えっ!?…ああいや、しゃ、写真が…あんまり役に立たないって知って、ちょっと落ち込んでいただけだよ。」


俺はとっさにそう言った。

が、しかし…そうか、俺、今、嫌そうな顔をしてしまっていたのか。

…それは良くないよな…。


「…よし…じゃあ、戻ろう。」


「そうですね。」


俺は、心の中で気合いを入れ直し、リプラと一緒にビルの前まで戻ったのだった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


…ビルの前に戻ると、リムさんも既に帰ってきており、皆、集まっていた。


「…ああ、勇者さん…連絡はあったのかしら?」


リムさんは俺と目が合うと、そう尋ねた。


「…はい!…時間が取れそうだと…連絡が。」


「…なるほどね…ところで、勇者さんはどこに行っていたの?」


「…ああ、いや…それは…。」


…俺は、さっき考えていた事をリムさんに説明した。


「…ああ、私もそう思ったわ、写真を撮って、自警団に提出して、このビルに案内もしたわよ。」


「…えっ?」


リムさんの衝撃の発言に、俺は思わず言葉を失ってしまった。


「…ああ、ええと、私がこっちの…会社のビルを出て…ブロックが追ってきた訳だけど…ブロックと話をした後、私はブロックを少し待たせて、この都市の自警団に写真を提出して来たのよ。

…で、それが本当なら現場も見せてくれ…って、なって…現場まで案内したのだけれど、勇者さんの言う通り、あの地下室は消滅していたわ。

…お陰で、自警団の人に、『本当にあったんですか?』という疑いの眼差しを向けられたのよ…大変だったわ。」


「…な、なるほど…。」


つまり、俺が考えていたことは、既にリムさんが全てやっていたという事か。

…何だか、悩んで損したというか…突発的な行動に出すぎてしまったというか…。

…俺は、心の中で、反省した。


…一方、ブロックさんは、だから少しの間待たされていたのか…と、苦い表情になっていた。


「…そうね、聞きたかった事はそれだけよ。

…後は…行きましょうか。」


「…あ、そ、そう…ですね。……よ、よし。」


俺は、リムさんの言葉を受け、改めて心の中で気合いを入れ直し、会社の中へ戻って行ったのだった。

今回も、読んで下さりありがとうございます。


おそらく、2、3時間後にめちゃくちゃ長い話投稿します。


次回も良かったら見て下さい…!

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