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第2話 訓練

「…で、俺は炎上している訳だけど…これはネットで勝てたと言っていいの?」


俺は、通路を歩きながらそう言った。


「まあ、魔王に危機感を与えられたので、成功だとは思います。」


リプラも、歩きながらそう答えた。


「そうかなあ…。」


俺の胸には、疑問、とまではいかない、モヤモヤが残ってしまった。


「ところで、俺たちは今どこに向かっているの?」


俺は、モヤモヤを忘れるため、リプラにそう聞いた。


「『セーフティシティ』です。

魔王の二つの意味の襲撃から、人類を守るための、サイバー的、物理的な防壁で包まれている街です。」


「『セーフティシティ』なるほど。」


俺は、頭の中でお城や武器、防具屋などを思い浮かべた。

が、いくら異世界とはいえ、俺はさっき見ただろう。

この世界は、俺が想像する異世界よりも、近未来的だ。

きっとその、『セーフティシティ』も、近未来的なのだろう。


「ツイト様、召喚施設の出口に着きました。」


そんな事を考えている。うちに、もう出口に着いたみたいだ。

俺は、頭の中で、サイバー的な世界を思い浮かべながら、出口のドアに近づいた。


「……えっ?」


出口に近づくと、出口のドアには紋章のようなものが浮かび上がり、読み込み中、と出てきて、それが100%になると、ドアはスイーっと開いた。

そこまではいい。


開いたドアの向こうに広がるのは…。

…まさにさっき俺が思い浮かべていた異世界の街だったのだ。

何て言うか、具体的には、レンガ造りの建物が多い…中世?というような感じだ。


「…えっ?…えっ?」


つまり、サイバー的なドアを境にして、近未来と中世風の世界がハッキリと分かれているような感じである。

…ドアが開いて現れたのは、明らかに世界観がおかしい街だ、という事を俺は訴えたい。


「あの、リプラ…ここが、『セーフティシティ』?」


「はい、セーフティシティでごさいます。」


「……。」


俺は、開いたドアの前で、前後をキョロキョロと見回してみた。

…近未来、中世、近未来、中世…。

うん、どう見ても世界観がおかしい。


「あの、リプラ…。この世界…こんなに情報技術が発展しているなら、街をもっと…ほら、俺が召喚された建物みたいに…出来るはずじゃないの?」


失礼かもしれないが、俺はリプラにそう聞いてみた。


「はい、出来ますよ。一応。

何せ町や村のほとんどには、魔王軍から物理的、サイバー的に守る、見えない防壁が張られており、異世界から勇者を呼ぶためのこの建物も、何重にもセキュリティがかけられているのです。

…私達、アンドロイドも素晴らしい発明だと、人々の間では言われています。

この建物も、厳重なセキュリティをかけ、もっと強い素材で作る事も可能でしょう。」


リプラは、そう答えた。


「じゃあ、何でそうしないの?

情報技術の前に、発展させる事があると思うんだけど。」


「……………………そうですね。

ツイト様なら、そういう考えも思い浮かびますか…。」


リプラは、悲しそうな顔をしてそう、意味深に呟いた。

…何だ?何か、俺は、いけないことでも聞いたのか?


「…あ、聞いて大丈夫な事だった?」


俺はすかさずそう言った。すると、リプラは、「大丈夫ですよ。」と言った。


「…必要ないんです。この世界には。

まず、強い家を作らなくても、見えない防壁で全てが守られますし、見えない防壁は、虫1匹通さないので、家は、最低限日光と、多少の温度調節が出来ればいいんです。

まあ、魔王や、その側近くらいの実力があれば、破壊する事も可能ではあると言われてはいますが。

…さらに、人間が食べている食料や、公共施設などは、全て、基本的にアンドロイドが作ったものなのです。」


リプラは、少し(いきどお)ったような声色でそう言った。

…そうか、つまり、この世界の人間は…やる事が無いのか。


「えっと、そうだ、魔法陣!この世界には、魔法もあるんだろ?アンドロイドは、魔法まで使えるの?」


「アンドロイドは、電気と魔力で動いています。

今のところ、自家発電機能がついている個体はいますが、魔力を

生み出せる個体はいません。

つまり、魔力だけは人間から貰わなくてはならないのです。

まあ、この世界には、魔力の塊…魔石など、自然から魔力を取る方法もありますので、必ずしも人間の手助けがいるとは限りませんが…。」


「…なら、この世界の人間には、役割はないって事?」


俺は恐る恐るリプラにそう聞いてみた。


「…いえ、そんな事はありませんよ。

私達アンドロイドには、人間のようなクリエイティブな発想は無いので、人間にもまだ役割はありますよ。

そんなに思い詰めたような顔をしないでください、ツイト様。」


俺は、思い詰めた顔をしていたらしい。

そんな様子を感じたリプラは、笑顔でそう言った。


「よかった…。えっと、それで、俺はどこに向かえば良いの?」


俺は、安心して、リプラにそう言った。


「はい、ツイト様には、レベルアップ施設に向かって、レベルをアップし、魔力も使えるようになって頂きます。」


リプラは、俺の様子を確認した後そう言った。


「レベルアップ施設かぁ…。」


俺は、わくわくしながらリプラに着いて行った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「はい、ここがレベルアップ施設です。」


…しばらく街を進むと、また、世界観が違う近未来的な建物が見えてきた。


「レベルアップ施設…いったいどうやってレベルアップするシステムなんだろう…。」


俺は、そんな疑問を持ちながら、リプラの案内のままにレベルアップ施設に入った。

…すると目の前には扉があり、左右には階段があった。


「…では、ツイト様は目の前の扉からレベルアップする場所へ向かって下さい私は見守っていますので。」


リプラはそう言って階段を登り始めた。


「あ、わ、分かった…。」


俺は、急いで扉の方に向かった。

…扉の近くへ来ると、扉に読み込み中の文字が表示され、それが100%になるとスッと扉が開いた。

…俺は、扉の向こうへ行った。


…何も無い空間だなぁ…いったい、どうやってレベルアップするんだろう。


「ツイト様、レベルアップの前に体力測定を行います。」


…そう思った瞬間、上の方から声が聞こえてきた。


「体力測定?」


上の方を見てみると、この部屋の上の方にはガラスがあり、そこからリプラがこちらを見ているのが分かった。

…なるほど、上からここを覗けるように、階段を作ってあったのか。


「はい、ツイト様の、初期体力を調べなければ、どのくらいレベルが上がっているか、調べられませんので…。

では、どうぞ。」


「えっ、ちょっと…。」


…俺の声を遮り、ゴゴゴゴゴという地響きがなったと思うと、地面が割れ、体育館のような床に変わった。

そして、カラーコーンやマットが出現した。


「…仕方ない、やるか…。」


体力測定が終わるまで、レベルアップは出来なさそうだったので、俺は仕方なく、指定通り、体力測定をこなしたのであった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「ぜぇ…ぜぇ…終わった…。」


しばらくして、俺は出された全ての体力測定を終えた。


「…はい、分かりました。テスト結果を平均データと照合します。

………完了。

ステータスを送信します。

ツイト様、スマートフォンの『ステータス』というアプリを開いてみて下さい。」


リプラはそう言った。


「『ステータス』…あった。

おお、俺の能力が、数値化されている…。」


パワー、スピード、ディフェンス、マジック、ect…。

すごいな、さすがAI…。

…ただ、まあ、この世界のステータスの数値の基準は分からないが、別にすごいステータスではないという事は分かった。

マジック…多分これは魔力の事だろうが、数値が0だし。

他の数値もカンストって感じではない。

何桁を超えたら強いっていう判定なのだろうか。


「えっと、ここからレベルアップするんだよね…。

いったいどうやって?」


俺は、上にいるリプラにそう聞いてみた。

…すると、リプラは部屋の真ん中辺りを指さした。


「…ん?」


そっちの方を向くと、いつの間にか台座と剣が出現していた。

そして、体育館風の床は割れ、ダンジョン風の床が出てきた。


「剣を引き抜いてください。

そして、目の前の敵と戦って下さい。」


リプラは、そう言い捨てた。

視線を前にやると、スライムのようなモンスターが現れていた。


「えっ…えっ!?」


取り敢えず俺は剣を引き抜いてみた。


「重っ…。」


剣は、予想以上に重かったが、動かせないことはなかった。

剣を半ば引きずる形で、俺はスライムの目の前まで来た。

スライムの動きは割と遅かったので逃げられる事はなさそうだった。


「…ぐっ、倒せ…って事だよな。」


俺は、持てるだけの力を出して、剣を振り上げ、スライムに向かって振り下ろした。


…その瞬間、スライムは爆発四散し、シューっと消えていった。


「…またか。」


…が、その直後、また部屋の奥からスライムが現れていた。


「スライム1匹で息を切らしているとは、ツイト様も、まだまだですね。」


リプラはそう言ってニッコリと笑みを浮かべた。


「…むっ、まだまだ…!」


なんだか少し腹が立って、何がなんでもここに現れるモンスターを全員ぶっ飛ばしてやろうと、俺は心に決めた。


スライムを倒すと、またスライムが現れた。

…がしかし、だんだん数が増えて行っている。

…そのうち、ゴブリンになったり、ワイバーンになったりして、最終的にドラゴンになった。


「…でやぁあぁあぁ!」


「ゴアアアアアア…!」


「…やった、ドラゴンを…倒、せた。」


そして、俺は何とか剣を振って、ドラゴンを倒す所まで成長した。


「…次は…?」


「…終わりです。まさか、数時間でドラゴンを討伐出来るようになるとは…。

その辺に関しては全く期待していな…いや、多少期待はしていましたが、数日間かかる事は、考えていましたのに…。

…まあ、ツイト様は、この世界に来る前、戦闘系ゲームのPvPでまあまあな順位だったようですので、そう言った状況分析はやはり得意であった、という事でしょうか。

…いや…。」


リプラは、少し驚いたような様子でそう言って、考察を始めてしまった。

…というか、全く期待していなかったって言おうとしてなかった?


「まあ、いいでしょう。成長が早いに越したことはないですし。ツイト様、さっきと、今の気分に、違いはありますか?」


「さっきと今の気分…?でも、確かに…何だろう。

初めのスライム1匹よりも、今のドラゴンの方が倒しやすかったというか、剣が振りやすかったり、少し身体が軽くなったような感覚があったかな。」


「…ふむ。分かりました。レベルアップは成功しておりますね。

『ステータス』を確認してみてください。」


俺がそう言うと、リプラがそう返答したので、俺はリプラの言う通り、『ステータス』を確認してみた。


「レベル…99?」


俺のレベルは99になっていた。

パワーやスピードやディフェンス、マジックの数値まで上がっている。


「はい、人間のレベルの上限は999ですが、ツイト様はその、約1割を数時間で達成してしまったのですよ。」


「なるほど…。でも、俺に元々魔力…マジックって言った方がいいのかな、まあ、とにかく、それはなかった筈だけど…。」


「…この世界の魔物を倒すと、魔力を得ることが出来るのですよ。魔法を放つ事も出来ます。

まあ、ツイト様には元々魔力は無いので、魔法を放つと魔力は回復しませんが。

ちなみに、魔力でもマジックでもどちらでも大丈夫ですよ。

どちらも同じように翻訳されていますので…。」


俺の問いに、リプラはそう答えた。

…なるほど、つまり、魔法を放つには、モンスターを倒して魔力を得なくてはならないって事か。

…まあ、俺は魔力の方が言いやすいから、魔力で固定しておこう。


「…では、もうここに用はありません。

…行きましょうか、ツイト様。」


「あ、う、うん…。」


リプラは、そう言って窓のそばからいなくなっていたので、俺も急いで剣を元の場所に戻し、扉から外に出た。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…えーと、リプラ。レベルアップ施設から出たけど…次はどこへ向かうの?」


「まあ、レベル99となれば、割と強い魔物も倒せますので…冒険に出ましょう。

後は、冒険の中でレベルアップして行けば大丈夫です。」


「冒険か…。」


ついに、俺の冒険が始まるのか…。

…いったい、これから何が起こって、何をしていくのか…。

俺は、期待と不安を抱え、リプラについて行ったのであった。

今回も、読んでくださり、ありがとうございます!


結構、伏線とか意識しているので、そういったものをうまく置いて行ければいいと思っております。


そして、いやー危なかったです。扉の向こうの世界観が『中性』になる所でした。では魔王がいる場所は『酸性』でしょうか。…他にも、様々な誤字があると思うので、見つけ次第教えて下さい。


また、次回も、1週間後くらいになりそうです。

良ければ…良ければ…次回も…見てください。

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