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第19話 再会

「…おかしな様子の建物は…ないですね。」


「…やっぱり無いかーそんなに分かりやすい

違法建築は…。」


俺達は少し周りの建物を見て回ったが、

違和感のあるものは一切なかった。

…というか、よく考えてみると、例え

この中に、本当にトラックさんの会社の

地下に繋がる建物があったとしても、

見てわかるような構造にはしないだろう。


「逆に、普通にありそうな建物に、

仕掛けがあったりしないかな…。」


「………………………。」


…と、俺は違和感を探していると、

ブロックさんが、何かに気づいた様

だった。


「………………勇者、これ………。」


「…これは…!」


ブロックさんは、トラックさんの会社の

隣の建物の壁を指さした。

壁には、よく見ると切られたあとが

あった。


「…もしかして、リムさんが?」


「………………ああ、多分そうだ。

……………高速移動で、傷をつけたと見られる。」


「…じゃあ、この建物が…。…でも、鍵がかかって

いるみたいだ…。」


「…ツイト様、少々お待ちください。」


俺が扉を開けようとすると、リプラが

俺の前に来て、カチャカチャと鍵を開けようと

し始めた。

…えっ、一体何で鍵を開けようとしているんだ?

針金とか、そういったものを持っている様子が

全くないのだが…。

…まあ、超音波カッターのような事が出来る

という事は、もしかしたら、素手で鍵開けも

出来るのかもしれない。…と、納得する事に

した。


「開きましたよ。」


十秒も経たないうちにそんな声が聞こえた。


「…えっ、早くない?」


俺は思わずそう声に出してしまった。


「通常の鍵を開ける程度、朝飯前ですよ。」


リプラは、そんなの当たり前ですよ、と

言うような顔をした。

…なるほど、電子ロックの比ではない、と…。

リプラは、鍵開けをする間、一体何を

考えているのだろう。と思いながら、

俺はリプラが鍵を開けてくれたドアに触れた。


「…今更だけど、勝手に入っていいのかな。」


「…緊急時ですし、この建物からは人の気配

はしません。…問題ないと思います。」


「…そっか…。」


リプラの言葉を信じ、その建物の扉を

そっと開くと、人っ子一人どころか、

アンドロイドさえ居なかった。


「…不自然ですね、誰もいないのに、

掃除は行き届いているように見えます。」


周りを見渡してみると、確かに、ホコリ

ひとつ落ちていないようだった。


「……………………やはり、ここが怪しいな。」


「…そうですね、少し、探索してみましょう。」


「…………………では、俺はこっちを探す。」


ブロックさんはそう言いながら、向かって

右側を探索し始めた。


「…では、私はこちらを。」


「じゃあ、俺はこっち…。」


リプラも、そう言って、向かって左側を

探索し始めたので、俺も、奥側を調べて

見る事にした。


「……………。」


セクタや、イーネさんも何故かこちら側に

着いてきた。

…何だか、前もこんな事があった気がするな…。


俺は、そんな事を思いながら、何か仕掛けが

無いかをくまなく調べた。


…奥の、右側の壁には何も無いな、と、俺が

左側に移動すると、2人も着いてきた。

…左側の壁にも何も無いな、やっぱり右側か?

と、また右側に移動すると、また2人が

着いてきた。


「…………あの、なんで着いてくるんですか?」


「…気にしないで気にしないでぇ。」


「…あ、そうですか。」


…壁でないなら床か…?と、もう一度左側に

移動しようとすると、また2人が着いて

来ようとした。気にしないでと言われても、

気になるなぁ…と思っていると、俺は1つの

違和感を見つけた。


「…ちょっとどけて!」


「「…えっ?」」


俺がそう言って2人がいた場所に来ると、

2人は、困惑しつつもよけてくれた。

…俺は、2人がいた場所の床をコンコンと

叩いた。


「…急に床を叩いて、ど、どうしたの?

勇者さん…。」


セクタは、ドン引きしている様子だったが、

俺は気にせず続けた。


「……………。」


床を叩きながら、少し移動する…。

…すると、途中で音が変わる所があるという

ことがわかった。


「この辺の床…ちょっと音が響く…。

…もしかしたら、この下に空間があるのかも。」


「えっ?」


俺がそう呟くと、セクタや、イーネさんも

床に耳を当て、床を叩きながら移動し始めた。


「………………いや、全然分からない。」


イーネさんは、即座にそう言った。


「僕も。」


セクタも、不思議そうな顔をしていた。


「…気のせいかな……ブロックさん!

リプラ!ちょっとこっちに来てください!」


…俺は2人を呼んで、2人にも床の音を

確かめてもらった。


「………………………?」


「…そうですね、確かに音が違うようです。」


ブロックさんは分からなかったようだが、

リプラは、その音の違いがわかったようだった。

…よかった、俺だけが思っていたんじゃなくて。

と、俺はほっと、胸を撫で下ろした。


「…この下に空間があるようです。

…開けてみますので、ちょっとお待ちください。」


リプラは、そう言うと、音がしたあたりの床を

四角くなぞり始めた。

…きっと、電気的な力でロックを解除するのだろう

と思っていると、ガコンという音がして、

床が四角く切れた。…物理かい。と俺は

心の中でツッコミを入れた。


…床の下の空間は、廊下のようになっていて、

一応道が続いているようだった。

…底も、降りても怪我をしない位の高さだった。


「…全員で、降りますか?」


リプラは、俺にそう聞いてきた。


…そうだ、この道は明らかに怪しい。

…俺の予想通りであれば、きっとこの道が

隣の、トラックさんの会社の地下まで

繋がっているのだろう。

…そこに、カラリも、リムさんも居るはずだ。


…全員で行っても問題ないはずだ。

…さっきとは違い、トラックさんという、

連絡出来る人ががいるのだから。


…俺は緊張していた。何か、嫌な予感が

したからだ。


…大丈夫、と俺は深呼吸をした。


「…うん、全員で降りよう。」


普通に言ったつもりだったのだが、自然と

声が震えてしまった。

…2人とも、無事でいてくれ…。


俺はそう思いながら、地下の廊下のような

所に、飛び降りた。リプラや、セクタ、

ブロックさんも俺に続き、全員が降りた。


「暗いな…あ、そうだ『ライト』!」


俺は、魔法を使って、辺りを照らした。


「これで大丈夫だ…行こう。」


俺は、みんなにそう言って、前を向いた。


「………………。」


「イーネさん?」


が、すぐに視線を感じて、振り向いた。

イーネさんが、ずっとこちらを見ていたようだ。


「…早く行かなくていいの?」


「…あ、う、うん…。」


その様子が少し気になったが、今は

2人の方が大事だ。

…取り敢えず、俺は先に行く事にした。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…おかしいな…。」


しばらく進んでいたのだが、全く人気(ひとけ)がない。

侵入されないように、誰かがいても

おかしくない、と考えていたのに…。


…そんな事を考えていると、目の前に

“何か”があった。…何かある事は確かなのだが、

暗くてよく確認できなかった。


…俺は、『ライト』をその、“何か”に

近づけた。


「…うわっ!ひ、人…?」


…その“何か”は、倒れている人だった。

…見た目で判断するのは良くないが、

この人も、被害者というよりは、柄の悪い

集団の仲間のように見えた。


「…す、進むか…。」


さらに、先に進んでいくと、また、“何か”が

あった。


「…また人…のようだな。」


俺はまた近づいて、確認した。


「…何で、こんなに人が倒れているんだ…?」


疑問を感じつつ、また先に進むと、また

“何か”…いや、倒れている人がいた。


「……。」


気にせず先に進むと、また人が倒れている。


「…?」


…まさか、リムさんが…?と、思っていると、

目の前に明かりが見えてきた。


「…っ。」


明かりに向かって走って行くと、少し広い

場所に出た。


「…!」


その場所では、リムさんが…俺達が森で

出会った、あの、元依頼主と戦っていた。


「………っ!」


リムさんは素早く後ろに飛び退くと、

その、戦っている元依頼主の心臓を目がけて

クナイを投げた。


「………!」


元依頼主は、血を流し、その場に倒れた。


「…り…リムさん…!大丈夫ですか…。」


俺たちは、すぐさまリムさんのいる方へ

駆け寄った。


「…!」


リムさんは、こちらに気づくと、リプラに

鋭い視線を向けた。


「…………まあ、取り敢えず今は……説明の方が

先ね…。カラリちゃんは、この先にいる…と

思うわ。」


と、思えば、この部屋の、俺達が入って来た

方とは反対側の壁を指さした。

…影になって見えにくいが、そこにも通路が

あった。


「…あ、ああ、えっと…。」


「………。」


…リプラへの、妙に鋭い視線や、

病院に居るはずの元依頼主が何故ここに

いるのかが気になったが、俺が少し

話しかけるのをためらってるうちに、

リムさんはサッと奥の通路へ行ってしまった。


「…お、俺達も…い、行こう。」


俺は、戸惑いながらも、そう言って、『ライト』

を一応リムさんの方に飛ばして、着いて行った。


「…ツイト様。」


俺が先に行こうとすると、リプラがかなり

小さな声で俺に話しかけてきた。


「…あっ、じゃあ、ブロックさん、セクタ、

イーネさん……お先にどうぞ。」


3人をリムさんの後ろにして、俺は、さっき

話しかけられたので、1番後ろでリプラに

近づいた。


「………リムさんは、きっと私の行動に

怒っているのだと思います。」


リプラは、そう言うと俯いて遠くを見つめて

いるような目をした。


「…行動?」


「…はい、先程の、薬屋での出来事です。

…イーネさんが、スキルを使って私達を

バラバラにしたと仰っていたでしょう。

…その時、最後に残った3人が、私と、

カラリさんと、リムさんだったので、

リムさんは、きっと、私がカラリさん

から目を離した事を怒っているのだと

思います。」


「…なるほど、って、そう言えば、リプラは、

一体どういうセリフで引き離されたの?」


「いえ、引き離されてた訳では無いです。

カラリさん…のフリをしているイーネさんに、

『私はこっちの薬が気になるので、少し見て

います。リプラさんの用が早く終わるので

あれば、ここに居るので先に行って来て

ください』…と言われたので、私は、すぐに

終わると思い、用を済ませてしまおうとした

ところ、ツイト様の様子がおかしかった

ので…。…人の出入りが分かるという事から、

油断していたのかもしれません。」


「…なるほど。」


確かに、ちょっとこちらを見ています。

と言われたら、少しその場を離れてしまう

かもしれないな…。

…しかし…リプラは、俺の場所がわかる

らしいが、カラリや他の人に関しては、

いったいどこまで分かるのだろうか。

わざわざ俺の居場所が、と付けた所から、

他の人の居場所は、ハッキリとは

分からないようだけど…。


「…あの、リプラ…。」


「…着いたようだよ。」


「…え?あ…はい。」


俺は、ついでに、リプラに聞いてみよう

としたが、その前にイーネさんに

そう言われた。

…前を見てみると、暗くて分かりずらいが、

また、ドアがあった。


「…。」


リムさんが、ドアを少しだけ開け、

中を確認すると、こちらをみた。


「…人が…いるんですか?」


「…ええ、おそらく…というより、

確実に、敵でしょうね…。」


リムさんは、そう言うとカチャカチャ

とドアに何かを設置していた。


「…それは……何ですか?」


「…一応あの人達が逃げたりした時の為に、

罠をしかけておこうと思ったのよ。

突入する時………気を付けてね。」


リムさんは、そう言いながら、そっと

ドアの前から避けた。

…えっ?俺が最初に行くの…?と、

一瞬思ったが、ここでためらっている訳には

いかないだろう。


「わ、分かりました…。」


俺は深呼吸をして、ドアを開けた。

…するとそこには、柄の悪い男達と、

さっき見たばかりの顔があった。


「…あっ…えっ?…元依頼主…?」


さっきリムさんに倒されていた筈なのに、

と驚いていると、元依頼主はシニカルな

笑みを浮かべた。


「…驚いているようだね、勇者サン。」


この感じ、双子だとか、たまたま似ているだけ

だとか、魔法で見せられているという訳では

なく、間違いなくあの森で出会った元依頼主

のようだ。


「…勇者さん、見ての通りだけれど、あの人は、

いえ、人ではなかったわ。」


リムさんは、小さな声でそう言った。


「…人ではない?」


「…ええ、きっと、複数体に増える事が出来る

タイプのモンスターよ。そう考えれば、

私が森で撒かれた時の事も、先程と私が戦った者と、

同じ姿をした者がいた事も、辻褄が合うわ。」


「…人ではない…。」


…しかし、目の前の元依頼主の姿はどう見ても

人だ。…それに、森では血も出ていたし、

骨も折られていた。リムさんの言っている

事が正しいとしたら、増えるだけではなく、

減る…というか、消える事も出来るはず。


…何か、まだ分からない事があるのか…?

…でも、とにかく、今は…カラリを助ける事を

考えよう。

…俺は、まず、部屋を即座に見渡した。

…目立つようなドアはなかった。


「…でも、とにかく、戦うしかないって

事だよな…。」


俺は、そう言いながら、少し後ろを確認した。

イーネさんやセクタは、何言ってんだよ…。

というような顔をしていたが、俺は構わず

リプラにアイコンタクトを送った。


「…!」


リプラは、頷き、俺の行動を待った。

…よし、行くか。


「うおおおお!!」


「…!?」


俺は、剣を構え、元依頼主に、無策のように

突っ込んだ。

元依頼主は、一瞬驚いたような顔をしたが、

すぐに手を前に構えた。


「…!」


「…。」


俺は、集中して、次の相手の行動を見極めた。

今回も、読んで下さりありがとうございます。


皆さん、覚えているでしょうか、元依頼主です。

いつぞやの、元依頼主です。


次回も良かったら読んで下さい!

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