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第17話 説明

「こちらです。」


リプラが案内した場所は、何やら

かなり近未来的な、清潔感のある

施設だった。


「…ここで一体何をするの?

さっきは、実質、ここにしかない施設

だって言ってたけど…。」


「はい、そうです。…ちなみに、ツイト様は、

私が森で話したことを覚えていますか?」


俺がリプラに話しかけると、リプラは

そう返してきた。


「…えっ?森?…えーと。」


「…覚えていないようですね、まあ、

候補が沢山ありますし、この情報だけでは

分からないと思います。

…状態異常に関してですよ。」


「…状態異常?」


…何だっけ。…えーっと、状態異常は…

何かあったんだっけ。


「…状態異常は基本的に、薬か

魔法で解けるという話です。

…しっかりとした、良い品質の薬が安く

買えるのは、ここだけなのです。

良い品質の薬は、他の場所でも買えない

事は無いですが、1番安く買えるのは

ここなのです。」


「…なるほど…安いのか…。」


…俺は、お金を使わせてもらっている立場

な為、安いという言葉につい反応してしまった。

…しかし、意外だな。リプラは、ネクステ村で、

ものすごく高そうな雰囲気の武器屋に

向かおうとしていたのに、今は安値で買える

薬屋に向かうなんて。


「…リプラも、やっぱり値段を気にするように

なったの?」


「…いえ、値段ではありません。

…この薬屋は、実質的に、この場所にしかない

施設なのです。」


「…さっきもそう言っていたけど…

薬屋が実質的にここにしかないって、

どういう事?…安い薬屋がここにしか

なかったら、かなり不便じゃない?

…ここから遠い家に配達するのは、

リムさんでも大変そうだし。」


「…まあ、そうですね。確かに、不便です。

他の村や街の安くて品質の良い薬屋は、

大抵、目立たない場所に、小さくあり、

品物があまり揃っていないですから。

違う種類の商品を大量に仕入れると、

管理するのが大変になってきますからね…。

…ですから、たくさんの種類があり、

安くて良い品質で買える薬屋は、実質的に

ここだけなのです。」


なるほど、そういうものなのか、と

俺はリプラの話を聞いて、そう思った。

俺は今、正直、薬よりもカラリの安全の

方が大事だろ!もう、リカバリー街へ

戻った方がいいだろうよ。という気持ちが

あったが、もしかしたら、カラリが

身を隠すのに役立つ薬なども取り揃ってる

かもしれないので、まずはどんな薬がある

のか、確認してみることにした。


…薬屋のドアに近づくと、ドアには、

読み込み中のメーターが出て来て、それが

100%になると開いた。

…加えて、その先には、大図書館のような

空間が広がっていた、しかし、棚に置いて

あるものは本ではなく、ビンに入っている、

ポーションである。


「うわあ…すごいな…。」


俺は思わずそう口に出していた。


「…無人なの?」


「はい、こちらは、商品を手に取り、

お店を出る時に自動的にアプリから

清算されるシステムになっております。」


「…なるほど…ちなみにお金が足りなかったら

どうなるの?」


「お店から出られなくなります。

…仕入など、例外的な状況を除き、常に

そのシステムは発動していますので、

注意してくださいね。」


「…あ、ああ、うん。」


俺は、リプラの声を耳に挟み、目の前の

棚を張り付くように見た。


「なるほど、これは、体力を前借りする

薬…。…そしてこっちは…。」


「…ツイト様、目的の場所に行きますよ。」


「あ、待って!」


俺は、声がした方へ、棚を眺めながら

スライドして行った。


「…なるほど、これは…。」


「ツイト様?」


「ああ、待って、今行くから…!」


その後も俺は立ち止まり、その度に

リプラに声を掛けられ、俺は棚を

眺めたままスライドして行った。


「ツイト様ー。」


「…ああ、待って、分かってるから!

今行くから…ん?あれ…。」


俺は、先程と何ら変わりなくスライド

移動をして、声の聞こえた方に向かった

はずなのだが、何故か行き止まりに着いて

しまった。


「…ん?何故だ…?リプラを追いかけた

はずなのに…。もしかして、途中で

違う列に入ってしまった…とか?

…いや、違うな…そうだとしても、

その次の呼び掛けの声が遠くなるはずだし、

この行き止まりに来る直前まで、

こっちの方から声は聞こえていたし…。」


「困っているようだなぁ…?」


…気のせいって訳でもないよな…と、

俺が来た道を戻ろうとすると、上の方

から声が聞こえた。

俺が上の方を見ると、薬が置いてある棚の

上に金髪の…女性がいた。


「…え?」


「…ふふ、驚いたか…?」


「…そ、そんな所にいたら、危ないん

じゃないの?」


何故かドヤ顔でいる金髪の女性に、

俺がそう言うと、突然不満そうな表情を

あらわにした。


「…お前…まだ子供扱いする気か…?」


「…え?いや、そういう訳では…。」


俺がそう言ったその瞬間、気づいてしまった。

…多分、この人は、自分の身長を気にしている…

というか、多分、背丈ではなく、俺を見上げる

様な立ち位置に来たくないのだと思う。


…俺は周りをキョロキョロ見渡して、

脚立のような物がないか探した。

…いや、脚立では、少々危ないかもしれない。

ちょっとだけ高い台は無いだろうか。


と、少しの間周りを見渡していると、

小さめの踏み台を見つけた。


…よかった、と俺はすぐさまその踏み台を

こっちの方に持ってきた。


「あ、えーっと、もう大丈夫ですよ。」


俺が、そう金髪の女性に言うと、金髪の

女性は、不満げな様子を見せたと思ったら、

少し考えるような素振りをして、最終的に

こちらに降りてきた。

…そして、そっと踏み台の上に昇った。


…俺はそこで全てを悟ってしまった。

…なるほどな…。


「…何だよ、そんなしんみりとした顔をして

…別に、何も気にしていないからな?」


金髪の女性は、そう言うが、これで

何も気にしていないと言うのは、

さすがに苦しいだろう。

…まあ、ただ、本人がこういう態度を

取っている以上、触れないに越したことは

ないのかもしれないが。


「…んで、私は君と話をしたかったんだよ。」


「あ、まあ…俺も…です。」


「へぇー、私達、同じ事を思っているなんて、

運命だねぇ…。ってちょっと!」


金髪の女性は、そう言って俺の手を

握ったが、俺は、すぐにそっと外した。


「…ふ、ふっ、まあ…いいさ。

君が、今一番知りたいことを教えてやろう。」


金髪の女性は、そう言うと、少しの間

静かになった。

…俺は、固唾を呑んで次の言葉を待った。


「…私の名前は、イーネだ。」


…何だってー!?この金髪の女性は、

イーネという名前だったのかー!?


「…って、そうじゃないですよ、いや、

それも気になってましたけど、『AI化病』

についてですよ!」


俺は思わずツッコミを入れてしまった。


「…分かってるよ。勇者様。

まず、君がどういう状態なのか教えて

あげよう。…ちなみに今、疲労は

感じてる?」


「…まあ、ずっと剣を振っていたから、

少し疲労感はあるかな…。」


「なるほどねぇ…。」


俺がそう言うと、イーネさんは考える

ようなポーズを取った。


「…疲労感があるって事は、まだそんなに

手遅れな所までは、病状は進んではいない

ようだな…。しかし、私という可愛い女性に

手を握られておきながら、あの反応…。

感情が欠け始めているというのも事実か…。」


「いや、さっきのはただ単純に…。」


「黙れ、お願いだそれ以上言うんじゃない。」


イーネさんは、笑顔で俺の言葉を止めた。

…そして、軽く咳払いすると、話を続けた。


「…まあ、進んではいるが、まだ、頭脳明晰な

人間レベルという訳だな。…それで、私が

どのくらいの関係者か…。…当てられるかな?」


「…えっ!?」


…突然始まったクイズに、俺は思わず驚きの

声を上げてしまったが、冷静になってみる

事にした。


見た目はそんなに深い関係者には見えないが、

年齢は22歳らしいし、俺より先にAI化病に

なっていたとみられるリムさんがどこかしらで

見かけたらしいから…もしかして、結構な関係者?


「…うーん、結構な…それこそ、AI化病を

産みだした人を知っているくらいな関係者…とか?」


俺は、考えを少し盛ってクイズに答えた。

不正解を言って、なるほど、君はまだ

そこまでしかしらないのか…。

じゃあ教えないね。などと言われたら

嫌だからである。

もしも、関係していなかったとしても、

違うよ、と言われるだけだろうし。

…煽り散らかされる可能性もあるが。


「…なるほどなるほどぉ…まあそうだね。

知ってるよ。」


イーネさんは、意外にもサラッとそう答えた。


「…えっ!?知ってるの!?」


「…うん、そうだね。知ってるー。

…それと、君らは、AI化病って呼んでいる

けど、あれは、もともと『UI』って名付けら

れたウイルスによって引き起こされている

病気なんだよね。…まあ、病気というか、

本来は、病気にするつもりで作ったウイルス

じゃあ無いのだけれど。」


「…どういう事?」


「…ここに置いてあるポーションの中にも、

記憶力を上げるとか、そう言ったものは

あるのだけれど、薬はいつか効果が

切れてしまう。…加えて、強い効き目が

あるものは、依存性も高くなるみたいだし。

…『UI』を作った人は、1度身体に入れて

しまえば、勝手に知能や分析能力が上がる!

…って、ウイルスを作りたかったみたい

なんだけど。


…まあ、知っての通り、失敗しちゃった

みたいなんだよね。

…『UI』は、人が考えることで成長して、

増えて人が考える事を助ける…って

言うようなサイクルで出来ているんだ

けれど…。

まあ、最終的に感情や疲労感が欠けて、

AIと変わらない様な感じになっちゃう

みたいなんだよねぇ。」


イーネさんは、しっかりとした説明をした。


「まあ、感情や疲労感が欠ける理由としては、

その、増えたウイルスが脳を巣食っちゃう

って事に原因があるみたいだけど…。」


イーネさんは、サラッと恐ろしいことを言った。

なんか、ガッチリと説明されると、俺が今

患っている病気は、結構恐ろしいものなんだな…

と、改めて思ってしまう。


「…ちなみに、打ち込まないと感染はしない。

それに、考える事で成長するウイルスという

事は…?」


イーネさんは、そう言いながら、俺と目を

合わせてきた。


「…あまり頭を使わなければ、ウイルスは

死ぬって事ですか?」


「…そうそう、そういう事。」


現状を把握出来て、俺は少し安心した。

…しかし同時に、もっと気になることも

出来た。


「…打ち込む事でしか感染しないなら、

俺はどうやって感染したんだ?

…それに、リムさんは…。」


「…知りたい?」


俺がそう呟くと、イーネさんはそう言った。


「…知りたい、です。」


「…ここから先は有料だよ。」


イーネさんは、ゲームの体験版が終わった

時のような事を言った。


「有料って…なんですか?」


「…金を取るっていう事だよ。」


「いや、それは分かっているんですけど。

…辞書的な意味じゃなくて…。」


「…ただで情報をやるわけないでしょ。

やっぱり、貰うものは貰わないと。

ただでさえ計画と計算が狂ってムカッと

したからさぁ…。

まさか、あの面倒なのを仲間にするとは

思わなかったし。」


…あの面倒なのとは、リムさんの事だろうか。

…偶然とか、運命とか言ってなかったっけ?

もうその辺は隠す気がないのかな。


「…あ、ヤベ。まあ、関係はしているけど、

あの…リムってやつは知らないかな。

……って、さすがにもう遅いか。

…まあ、それも有料だよ。」


イーネさんは、開き直ってそう言った。

何だか、ちょっとイラッとする。悪質な

商法じゃないのか。


「…話は聞かせてもらいました。」


「…え!?」


…と、俺とイーネさんが会話している所に、

どこからともなく別の声が聞こえた。


「…リ、リプラ!?」


「…なっ、どうして…!?勇者と私だけが

いなくなったら、怪しまれると思って、

声真似する魔法を使って、全員を分散

させた筈なのに…。」


「私には、ツイト様の居場所が分かる

機能が付いておりますので。」


そういういえば、そんな機能もあったな。

…って、全員を分散させたって事は今、

カラリは1人って事じゃないか!


「…ねえ、リプラ、カラリは今大丈夫なの?」


俺がリプラにそう聞くと、リプラは、

落ち着いた様子で、大丈夫です、この施設は

人が入って来たら分かりますし、出て行っても

分かります。不審な人物が入ってきた様子も、

カラリさんが出ていった様子もありませんよ、

と言った。


「…ちょっと待ってください。」


なるほど、それならよかった…。と思った瞬間、

リプラが不穏な空気を感じさせ始めた。


「…今、カラリさんがこの施設を出て行った

様なのです。」


「…ええっ!?何で!?」


「…もしかしたら、洗脳とか、誘導する系の

魔法を使われたのかもね…。」


イーネさんは、ニヤニヤとしながらそう言った。


「しかし、不審な気配は全く…。」


「まあ、今やパンを食べて魔法を発動出来る

時代だし、どこかに魔法が仕組んであっても、

不思議ではないんじゃない?」


「…しかしそうであれば、私達がここに

来る事が読まれていたという事に…いや、

読まれていたとしても、カラリさんが1人に

なって、カラリさんが罠を踏む事も計算

していたという事になります…。

…しかし、今はその理由を考えている

場合では無さそうですね。

…他の皆さんも呼んで、今すぐカラリさんを

追いましょう。」


リプラは、話の途中から、俺の方を見て、

そう言った。


「…そうだね、行こう。」


「…ツイト様、出口はこちらです。」


俺は、そう言いながら走るリプラを

追いかけた。


「………………。」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…リムさんは、気配にいち早く気づき、

すぐに追いかけて行ってしまったようです。」


出入口に、リムさん以外の全員を集め、

事情を説明した時、リプラは、そう言った。

…本当に何者なんだ、リムさん…。


「私達も、直ぐに追いましょう。」


「………………。」


リプラの言葉に、ブロックさんは、

呆れたような顔をしていた。多分、

リムさんの事だろう。


「…え、え、行くの?…ま、まだ心の

準備が…。本当にお父さんが…。」


…セクタは、少し緊張しているような、

顔をしていた。まあ、そうだよな、

自分のお父さんが、犯人かもしれないんだから…。

そして、カラリを追いかけたら、それが

分かってしまうかもしれないのだから。

…リ・クエスト村で、俺達と別れなかったのは、

真実を知るのが怖かったからなのだろうか。


「………………。」


俺も、つられて(けわ)しい顔になってしまった。


「……………。」


リプラも、少し落ち込んだような顔をして

いるような気がした。


「…こちらです。」


そして、そう言って俺達は、薬屋を出たの

だった。

今回も読んでくださりありがとうございます。


カラリは、無事なのでしょうか。


次回もよかったら見てください。

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