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第15話 次の都市へ

…どうして、こんな事に…。

俺は、心からそう思った。

俺は、少し、あの時だけ、若干勘が

良くなっただけだ。

世の中には、やっては行けない事が

あるという事を今知りました。

…神よ、戻れるのであれば、戻りたい、

何故俺はあの時白々しくあんな事を

言ってしまったのだろう。

…ああ、せめて、これから、穏便に

解決できますように…。

俺は、そう祈り続けた。


「…………………。」


ブロックさんは、ある程度進んだ所で

止まり、こちらに振り返った。


「…………………逃げないな?」


「…ひえ…逃げないです。」


俺は、焦っていたが、ブロックさんは、

そう言った後、手を離し、はぁ、と

ため息をついた。


「……………勇者、まず初めに聞くが…

………なぜ嘘をついた?」


「ああ、えっと…その、まあ、正直に

言ったら、本音を聞けないと…思いまして…。」


俺がそう答えると、ブロックさんは、

またため息をついた。


「………………勇者、お前は、魔王を倒す

のだろう?……………そんな事を気にして

いられる状況では無いのではないのか?」


ブロックさんは、呆れたようにそう言った。


「…いや、まあ、気にしているというか、

何となく勘づいてしまっただけなんです

けどね。…でも、ノーコメントなんですよね?

だから、まだ誰にも言っていないですよ。」


俺がそう言うと、ブロックさんは、少し

安心した様子になった。


「……………ん?待てよ、まだ…って。」


「ああ!いや、言ってませんし、

これからも言いません!」


「………………ならいい。……………戻るか。」


俺がそう言うと、ブロックさんは、

そう呟いて、俺に背を向けた。


「………勇者、この事は……忘れろ。」


さらに、そのままブロックさんは、そう

言った。…なるほど、まあ、ブロックさんが

忘れろというのだから、忘れておく事に

しよう。…忘れて、密かに応援しておこう。

俺は、心の中でそう考えた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「………………ただいま。」


「…………。」


「あっ無事だった。」


俺たちが、宿屋に戻るとセクタがそう

呟いた。


「2人とも、いったいなんの話をして

いたの?」


続けて、リムさんもそう言った。


「…………………いや、まあ、ちょっと、な。」


ブロックさんは、言葉を濁した。


「……………それで、今はいったい何をしている

んだ?」


「…何って、まあ、ブロックが急に勇者さんを

連れて行ったから、皆部屋に行かずに待って

いたのよ。」


リムさんは、そう説明した。


「…………………ああ……すまない…。」


「…いえ、いいのよ。…それじゃあ、2人とも

来た事だし、夕食にしましょうか。」


「そうですね…。」


俺達は、宿屋で、食事をする事になった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「………今回は、注文制じゃないの? 」


俺は、宿屋の宴会場のような場所で、

料理を待っている間、リプラにそう聞いてみた。


「そうですね、ああ、ツイト様、もしかして、

苦手な食べ物があるのですか?」


「いや、まあ…無いことはないけど…。」


俺は、今まで食べたもので、味で、食べる事が

出来ないというものは無い。

…しかし、俺は、ししゃもの食感というか、

卵が苦手だ。出されたら、食べないという事は

無いが…。


「えーっと、この世界には、ししゃもみたいな…。」


俺は、この世界にししゃもみたいな食べ物は

あるかとリプラに聞こうとしたが、

もし、この世界にししゃもがなかったら、

翻訳は考慮してくれるのだろうか、とふと思った。

…まあ、今までの事から、きっと考慮して

くれるだろう、と俺は思う事にした。


「…この世界には、ししゃもみたいな食べ物は

ある?」


「…ししゃものような食べ物ですか…ありますよ。

それが、苦手な食べ物ですか?今回の食事には

出てこないので、安心して下さい。」


俺の問いに、リプラはそう答えた。

よかった、と俺は翻訳が上手くいった事と、

ししゃものような食べ物が出てこないという

事実に安心した。

それならば問題ない、と俺は食べ物を待ち、

しばらくすると、奥からアンドロイドがやって

来て、目の前に食べ物が置かれ始めた。


「…こちらは、煮込みハンバーグです。」


俺達の目の前には、野菜と煮込みハンバーグ

と、パンが置かれた。

…なるほど、煮込みハンバーグか。…そう思った

時、俺は、違和感を覚えた。何だ?…俺が感じて

いるものは…。


…あ、分かった。料理の名前が普通なのだ。

この前の宿屋、えー、えーっと、シ、シヴィ…

そう、シヴィライゼーション!

ネーミングセンスが特殊だったのは、あの宿屋

だけだったのか…。


俺は、ふとそう思った。


…それにしても、煮込みハンバーグか…。

…美味しそうだな…。


…俺は野菜とハンバーグを食べながら、

リプラの方を見てみると、やはり、

魔石で、魔力摂取をしていた。

…その様子を見ていると、なんだか豪勢な

料理を食べている事が申し訳なくなってくるが、

リプラは、多分こういった料理を食べる機能は

無いと思うので、俺は、気にせず食べる

事にした。


「……………じっ。」


気にせず…。


「……………じっ。」


気に…せず…。


「……………じっ。」


……………………。

何だか、リプラの視線を感じる気がする。


「…えっと、何だか、見られている気がする

んだけど…。」


「…はい、見ていますよ。私は、そういった

ものを食べる事が出来ないので、せめて、

見ておこうかと思いまして。」


「あ、ああ…そう…。」


それならば、気にする必要はないか。

俺はそう思い、食べるのを再開した。


「………………じっ。」


…これも、機械の力で作られたもの

なのだろうか。…詳しい事は分からないが、

前の宿屋で見たような機械で作られている

のであれば、この料理は厳密には煮込み

ハンバーグではないのでは無いだろうか、と

俺は考えながら食べ続けた。


「………………じっ。」


やはりこの世界では、機械が料理を作るのは

当たり前になっているのだろうか。

この世界に、手作りで、食事をする場所を

経営しようとしている人がいるなら、応援

したい気分になってくる。


「………………じっ。」


…まあ、別に、機械が作るからと言って、

そこに何か問題があるかと聞かれれば

ないとは思う。…何か腑に落ちない気は

するが…。


「………………じっ。」


………………………。


「…見すぎじゃない?」


俺は、思わずリプラにそう言っていた。

ダメだった、やはり気になる…。


「…その、食べている所をまじまじと

見られると、やっぱり、気になるって言うか…。」


「問題ないです。見ているのは、ハンバーグ

の方ですので。」


「…あ、ああ、そう…。」


「…………………じっ。」


「…………えっと、俺以外に出された食べ物も、

全く同じものだから、それを見るのでも

いいんじゃ…ないかな?」


俺がそう言うと、リプラは、確かにそうですね

と言って、カラリ達の煮込みハンバーグを

眺め始めた。

…よし、これで落ち着いてご飯を食べることが

できる…。

と思った次の瞬間、リプラがこちらに帰って

来た。


「……………え?」


「お気になさらず。」


「…あ、ああー…うん………。」


多分、ここまで言っても引き下がらない

のであれば、リプラはずっと引き下がらない

だろう。俺は、諦める事にした。


…そして、俺はずっとリプラの視線を

感じながら、食事を終えたのだった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

落ち着かない食事を終え、様々な準備を

して、就寝する時間になった。


「はい、こちらが今回泊まる部屋です。

こちらがツイト様の泊まる部屋で、

こちらが、ブロックさんが泊まる部屋、

さらにこちらがリムさんが泊まる部屋で、

こちらがセクタさんが泊まる部屋、

そして、カラリさんが泊まる部屋です。」


リプラはそう言い、俺達に泊まる部屋の

カギを渡した。


「ありがとう、それじゃあ私はもう寝るわね。」


「…………………じゃあな。」


リムさんとブロックさんは、そう言いながら

自分が渡されたカギの部屋に入って行った。


「…あれ?リプラはどの部屋に泊まるの?」


リムさんとブロックさんが部屋に入った後、

俺はリプラにそう質問した。

…リプラの手元にカギは残っていない。


「…怪しいものが狙ってくると

すれば、夜ではないかと思ったので、

今日の夜は、カラリさんを護衛しようと

思ったのです。」


リプラは、そう答えた。


「…そっか…ん?」


「…ひとり…。」


俺がリプラと話をしている時、セクタが

何かボソボソと呟いていた。


「…セクタ、今なにか言った?」


「…え!?いや、はは…。」


俺がそう言ってセクタの方を見ると、

セクタは苦笑いをした。…俺と目を

合わせてはいるのだが、自分が泊まる部屋を

チラチラと見ている。


「…もしかして……ひとりで寝れない…とか…。」


「…は、はあ!?そんな事ないし!!」


俺がそう言うと、セクタは、もう寝る!

と言って部屋に入って行ってしまった。

…図星…だったのかな。だとしたらセクタは、

1人で森で、どうするつもりだったのだろうか。

あの時、俺達がセクタを連れていかなきゃ、

本当に、どうなっていたんだろうか。


「…えっと、じゃあ、俺も、寝ようかな…。」


俺は、そう言って渡されたカギの部屋に

入ろうとした。


「あっ、ツイト様、お待ち下さい。

こちらをどうぞ。」


…が、ドアを開けた瞬間、リプラがそう

言って、ウィッグを渡してきた。


「…ん?え?何これ。」


突然の出来事に俺は困惑していた。


「こちらは、ウィッグです。」


「いや、それはわかるんだけど…。」


俺は、そう言いながら、渡されたウィッグを

見てみた。

…でも、このウィッグ、どことなくカラリの

髪型に似ているような気がする。

…まさか…。


「これを、つけて、カラリのフリをして、

敵の目を欺け…と?」


「はい、その通りです。」


…いやいやいや、普通に考えて、無理でしょ。

性別も、身長も違うのに、これだけで

敵の目を欺けるはずが無い。


「リプラ、それはちょっと…。」


「おや、良いのですか?護ると約束して

いるのでしょう?」


俺が断ろうとすると、リプラが、小声で

そう言って来た。


「…………うっ、それは…。」


俺はそう言いながら、カラリの方を見た。


「………?………。」


カラリは、俺と目が合うと、ニコッと

微笑んだ。


「…カラリさんの為だと思ってください。」


「……………。」


リプラにそう言われ、俺は仕方なくウィッグを

受け取って、部屋に入った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


…そうだよな、俺、護るって約束を

していたのに、全然護れていないもんな。

これで、少しでもカラリを助けられるなら…。


俺は、そう思いながらウィッグを付けた。

そして、スマホを充電し、軽く体幹トレーニング

をし、ベッドに横になり、布団を被った。


「………………………待って、俺、騙されてない?」


俺は、すぐ起き上がり、そう呟いた。

カラリの為だという言葉で納得してしまったが、

性別も、身長も全く違うのに、ウィッグを

被っただけで、敵の目を欺けるはずが無い。

さっき、そう考えていたじゃないか。


…いや、でも、リプラが勧めるのだから、

多少意味はあるのかもしれない。

…それに、布団を口元…鼻の辺りまで被れば、

意外と分からないのかもしれない。

そうだ、きっとそうだ。


…俺は、自分にそう言い聞かせ、布団を

鼻の辺りまで被り、寝た。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…………うーん……朝…か?」


俺は、ゆっくりと身体を起こした。


「…何も起こっていないみたいだな…。」


俺は、そう言いながら、身支度をして

部屋の外へ出た。

…俺は、念の為皆の部屋のドアにノックを

して、所在を確認してみた。

…が、誰も出てくる事はなかった。


皆、昨日と同じ所に集まっているのか…?


と俺は思い、昨日集まっていた場所に

行った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


「…あっ、皆、おはよう。」


昨日集まった場所には、リプラとカラリと

ブロックさんがいた。


「…………………………!?」


ブロックさんは、俺を見るなり、驚いた

様な顔をした。


「…あれ?リムさんとセクタは?」


「……………あ、ああ、まだ…部屋にいると思うぞ。」


俺がそう言うと、ブロックさんは、困惑しながら

そう言った。…何だ?俺、何かしたのか?


「………えっ?でも、俺、一応全員の部屋の

ドアをノックして来たんですけど…

まだ寝ているんですかね…。」


俺がそう言うと、ブロックさんは、

悩み始めた。


「………………セクタ君は知らないが、リムが

それで応答しないのはおかしいな…。

……………まさか、何かあったのか?」


そして、そう焦りだした。


「…えっ?そんな、何も無いと思っていた

のに…。」


ブロックさんが焦っているのを見て、俺も

つられて焦りと不安が出てきた。


「…ツイト様?どうしました?」


「ツイトさん?」


それにつられて、リプラとカラリも心配

そうな顔でこちらを見ていた。


「いや、でもまだ何かあったと決まった

訳じゃ…。」


「あ、みんなおはよう、何、どうしたの?」


「…えっ?」


と、皆に焦りが広まっていたその時、

宿屋の入口から、何食わぬ顔でリムさんと

半分寝ている様なセクタが現れた。


「……………………リム、どこに行っていたんだ?」


と、2人が入ってくるや否や、ブロックさんは

リムさんにそう言った。


「…あー、えっと、昨日寝る前の話なのだけれど、

怪しい気配を感じたから、起きてみたら、

やっぱり、怪しい人がいて、自警団に突き出して、

寝たのだけれど、しばらくしたら、また

怪しい気配を感じて…………を繰り返していたのよ。」


リムは、眠そうな顔でそう答えた。


「…えっ?寝ていないんですか?」


「…寝たわよ、これでも寝つきはいい方なのよ。

少し寝不足ぎみかもしれないけど、ほとんど

問題ないわ。」


リムさんは、笑顔でそう言った。


「…いや、でもリムさん、俺と同じ病を持って

いるんですよね、そんな事して、病状が進んだり

しませんか?」


俺が心配しながらそう聞くと、リムさんは、

治りかけてるって言ったわよね、気にする事じゃ

ないわ。と、言った。…本当に大丈夫なのだろうか。


「…えっと、それでちょっと聞きたいことがあるん

ですけど、その怪しい人達って、凄く柄が悪い

集団だったりします?」


「…うーん、まあそうね、そうだったわ。」


リムさんは、そう答えた。

…うーむ、それなら、やはり、その怪しい人と

いうのは、カラリを狙っていた、柄の悪い

集団だったのだろうか。


「…というより、私が勇者さんを追っていた

時も、周りに怪しい者は居たわよ。

まあ、自警団に送っておいたけどね。

…何か悪い事をしている集団なのか、

途中で光学迷彩スキルを使って、

撒かれちゃって、勇者さんを追えなくて

とっても困ったのよね…。」


…そんなことを考えていると、リムさんが、

そんな事をぽつりと呟いた。

…それなら、その柄の悪い集団で確定じゃないか。

…もしかして、俺がモンスターを倒し終えて、

攫われそうなカラリを追いかけている時に

リムさんは、スキルを使われて撒かれたり

していたのだろうか。


…というかリムさん強くない…!?


俺は、リムさんの強さに唖然としていた。


「…ところで勇者さん、その、髪に付けている

物は何かしら。」


すると、リムさんは何やら申し訳なさそうに、

俺にそう言った。


「…ん?……あ。」


俺は髪を触ってみると、そこには昨日つけた

ウィッグがあった。

…取っていたと思っていたのだが、少しズレて

引っかかっていたようだった。

…ああ、だから、ブロックさんが驚いた顔を

していたのか…カラリには、ギリギリつけてる

物が見えない角度だったらしい。

…なるほど、確かに、髪に女性物のウィッグを

引っ掛けていたら、不審に思うよな…。

と、ウィッグを外すと、ブロックさんと、

リムさんが、まあ、それも個性のひとつだよね

といったような目でこちらをみている事が

分かった。


「…………………って!別に趣味でつけている

訳じゃ無いですよ!?」


と俺はすぐ言ったのだが、2人は、分かってる

分かってるというような優しい目になった。

…あ、これ完全に誤解されてる。


「違うんですよ!これは、カラリをあの集団

から護るためで…。」


…と俺は必死で言葉を探した。


「…えっ?…もしかして、その怪しい人達が

どういった集団か、心当たりがあるの?」


「…ん?」


俺は、そのリムさんの反応に疑問を持った。

…が、よく考えてみれば、リムさんは、

あの集団に撒かれて、あの後何があったか

が分からないなら、この反応は当然というか…

…というか…これかなり大事な事じゃん!

…リムさんと、ブロックさんに話していないじゃん!


「あ…えーっと。」


俺は、リムさんにどこで撒かれてどこで再び

俺達を見つけたのかを聞き、俺達を再び見つける

までにあった事を全て話した。


「…なるほどね、悪質な詐欺ね……そんな状況に。

…それと、勇者さん、ひとついいかしら?」


「あっ…はい、何でしょう。」


「…それ、もっと早く言うべきじゃなかった?」


…ごもっとも。

…いやしかし、自分が重い病かもしれない

とか、自分が勇者だという事がバレないか

とか、歴史とかでいっぱいいっぱいで、リム

さんとブロックさんに、こっちの状況の説明を

するまで、頭が回らなかった。


「…申し訳ないです…。」


俺がそう言うと、リムさんも、まあ、私が

勇者さんの立場だったら、確かに色々

忙しくて、説明をしている暇なんてない

かもしれないわね、と笑顔で言ってくれた。


「まあ、それなら勇者さんを責めることは

出来ないわね…。」


リムさんは、そう言って、隣にいる、

半分寝ているセクタを揺すった。


「…セクタ君も、どうして教えてくれない

のよ。」


「…………ん、んん…?いや、あの、えっと…

も、もう、皆が説明していたかと……。

………………スヤスヤ。」


セクタは、そう言うと、床に座って眠り始めた。


「…ちなみに、セクタは何をしていたんですか?」


俺は、本当に眠っているのか、狸寝入りなのか

分からないセクタを見ながら、リムさんにそう

聞いた。


「…ああ、何でも、眠れなかったそうだから、

眠くなるまで一緒にいてあげる事にしたのよ。

…でも、私の方が先に寝ちゃったり、怪しい

気配を感じて居なくなったりして、一緒に

居られなかったから、気が紛れる様に

高速移動の極意を教えてあげたのよ。

…そしたら、結構才能があったみたいで、

本気で習得しようとして、寝不足に

なっちゃったみたいなの。」


高速移動の極意や、本気でそれを習得

しようとした事や、やっぱりひとりで

眠るのが怖かったのか、とか、セクタを

寝不足にしてしまったのは俺のせいになる

のか、とか、様々な思考が溢れて来たが、

セクタが外から来たのは、そういった理由

だったのか、と、ひとまず納得する事にした。


…高速移動の極意か…ちょっと気になるな…。

俺は、そう思った。


「ちなみに、そのウィッグ、全く意味を

成してなかったわよ。多分、しっかり

付けても、カラリちゃんには見えないんじゃ

ないかしら。」


そしてリムさんは、さらっと俺の傷を

えぐってきた。

俺は、ウィッグを怒りに任せて床に

投げつけようとしたが、抑えてそのまま

そっとリプラに渡した。


「……………まあ、とにかく事情は分かったわ。

それで……次に行く場所がその集団の本拠地

なのね?」


リムさんは、俺が落ち着いたのを確認して、

そう言った。


「…まあ、本拠地に行くとは限らないけど…

はい、そうだと思います。」


「…それなら、カラリちゃんはここに

置いて行った方がいいと思ったのだけれど…。

後で、安全が確保出来たら、迎えに

来るっていうのは……どう?

誰か、カラリちゃんの他に1人、一緒に

いてあげて…。」


リムさんは、そう言いながらカラリの方を

見た。


「…わ、私は………で、出来れば………

ツイトさんと一緒に…行きたい……………です。

…………でも、迷惑を掛けてしまいますよね…。」


カラリは、寂しそうな顔でそう言った。


「………………………。」


…ブロックさんは、何かを察した顔に、

リムさんは、何かを察して、少し悩む

様なポーズを取った。


「………………なるほど、分かったわ。

…問題ない、私の手にかかれば、

女の子1人護るくらい造作もないわ。」


「………………………俺も、手伝おう。」


「…私も、しっかりカラリさんを護り

ます。」


3人は、次々にそう言った。


「…えっと、俺は…。」


俺はそう口を挟んだが、リプラは、

ツイト様は、護る方ですよね?と言った

顔をしていた。


「……えーっと、俺も…ま、護ります。」


「……………あ…ありがとうございます…

皆さん。…私も、出来る限り…いえ、

全力で、頑張ります!」


俺達の言葉に、カラリは真剣な顔で

気合を入れていた。


「では、行きましょう、リーディング

シティへ。」


こうして俺達は、リーディングシティへ

向かった。

今回も、読んでくださりありがとうございます。


カラリちゃんが、みんなのヒロイン化している気がします。

みんな無事でリーディングシティを抜けられるのでしょうか!お楽しみに!


次回も、よかったら見てください!

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