第13話 服装
「…ここが、服を売っている場所か…。」
俺達はしばらく歩いて、服を売ってる
場所に着いた。
…まあ、あの変装はセクタにバレバレ
だったし、ちょうどいい機会では
あったのかな…。
俺は、そう思いながら、そこに入った。
「…何っ!?」
…そこには、ただアンドロイドだけがいた。
「…いらっしゃいませ。こちらは、リウェア
リカバリー街店でございます。何か手伝える
ことはありますか?」
…そこに居たアンドロイドは、そう言った。
…この街って、リカバリー街っていうのか。
…そう言えば、聞きそびれていたな…。
店の名前は、リウェアか…。いい名前だと、
俺は思う。
「…変装用のグッズを探しているのですが…。」
リプラは、正直にそう言った。いや、
それって言って大丈夫なのかな。
「…かしこまりました。変装用のグッズですね。」
店にいたアンドロイドは、そういうと、
普通に服を取りに行った。
いや、変装用のグッズを買うことに対して、
何も聞かないのかい。
俺はそう思ったが、取り敢えず黙っておく
ことにした。
「…そちらのお客様には、この服がおすすめ
です。」
そのアンドロイドは、そう言って、俺に、
ジャケットとTシャツとズボンを渡して来た。
「えっと、これって、試しに着てみることって
できるの?」
「はい、そちらの、試着室で、お願いします。」
「…じゃあ、ちょうと着てみるか…。」
俺は、そのアンドロイドに渡された服一式を
試着室ですべて身につけてみた。
「…よし、全部着たよ…。」
「それならば、あとはこれを頭に付ければ完成です。」
俺が服を全部身につけ、試着室から出ると、
そのアンドロイドに、頭に何かを付けられた。
…その行為を少し疑問に感じながらも、俺は
皆に上手く変装できているか聞いてみる事にした。
「…みん……。」
そこまで言いかけたところで、気づいた。
みんなと目が合わない。…これは…。
俺は即座に試着室に戻り、鏡を確認した。
「全く似合ってねえ!!」
俺は思わずそう叫んでしまった。
全く似合ってなかった。なんというか、俺が
服に置いていかれているような感じだった。
…着る前にある程度確認しておけばよかった。
俺はすぐに着替え直した。
「…いや、さすがにこれは無理ですって…。」
「…すみません、しかし、この服が似合いそうな
顔をしていると思ったので…。」
そのアンドロイドは、申し訳なさそうに、そう
言った。
…この服が似合いそうな顔に見える…?と、思った
時に、そう言えば、俺は今別な人の顔に見えて
いるんだった、という事を思い出した。
…いや、気になるな…この服が似合いそうな顔。
…元の俺の顔より、イケメンに見えているのだろうか。
…まあ、でもどうせ見ることは叶わないだろう
から、考えないでおこう。
「…もう少し地味な感じでお願いします…。」
「かしこまりました。」
「…ツイト様、これはどうですか?」
…と、お店のアンドロイドが服を取りに行って
いる間、リプラがとある服を指さした。
「……ん?これは何……………んん!?」
初めは普通のTシャツだと思っていたのだが、
広げてみると、真ん中に、『勇者です ※本物です』
という文字が書かれていたのが分かった。
「た、確かに……ふふ、これは………っふふ。」
これはバレないというか、まさか本物の勇者が、
こんな服を着ているわけないだろうという
思い込みで、何とかなるかもしれない。
…いや、でもこれは…もしバレたら、恥ずかしい
という事はもちろん、逆に目印になってしまう。
…この服は、最終手段だな。
「では、この服をどうぞ。」
そんな事を考えていると、お店のアンドロイドが
俺に服を持って来てくれた。
…今度は、しっかりと確認した。
「…なるほど、この服なら…。」
俺は、今度は大丈夫だと思い、渡された服に
着替えた。
「…皆、今度は、どう?」
俺は、そう言いながら、試着室から出た。
「…なるほど…何か、芸術家っぽいね。」
セクタは、考えながらそう言った。
…芸術家、まあ確かに、言われてみれば
そう見えないことはない。
…外の景色を見て、ふむ…。とかやってそうな
服装だ。
「じゃあ、髪はこうして…。ベレー帽を
被ったら、もっと、芸術家っぽい…?」
「…!そうだね…。」
皆は、何か腑に落ちたような顔をしていた。
「…変装出来てるかな…?」
「…一目見ただけでは分かりませんが、見る人が
見たら、バレちゃうかもしれないですね。」
カラリは、真剣な顔でそう言った。
「…なるほど…じゃあ、気を付けないとな。」
俺はそう言いながら、試着室で着替え、
終わった後に、皆の元へ歩いて、お店の
アンドロイドの方を見た。
「…では、そちらの、アンドロイドの方、
どうぞ、あなたには、これがオススメです。」
お店のアンドロイドは、次にリプラにそう言って
服を渡していた。
…リプラ、一体どんな服を着るのだろう。
俺は、それが結構気になっていた。
…しばらく待つと、リプラが、終わったようで、
出来ました、とお店のアンドロイドに声を
かけていた。
「…どうでしょう?」
「…後ろ姿だけだったら、リプラだって
分からないかもしれない。」
「…なるほど、しかし、アンドロイドには、
似たような顔の者が沢山いるので、問題は
無いのかも知れません。」
リプラは、自分の服装を見ながらそう言った。
「…よし、じゃあ、これに決定します。」
「分かりました。」
俺がそう言うと、お店のアンドロイドは、
レジから、おもむろにスマホを取り出した。
…もしかして、カンパニーの時と同じような
仕組みで、支払いをするのか…?
と、思っていると、やはりリプラもスマホを取り
出し、アプリを開いたかと思うと、スマホを
重ね合った。
「………。」
すると、ティロンという音がした。
多分支払いが完了した音だ。
「はい、購入、終わりました。」
リプラは、こちらに振り向いて、そう言った。
「…なら、着替えて、リムさんを待つか…。」
「そうですね。」
「…待ちますか。」
「…………………ああ。」
そして、俺とリプラが着替え、リムさんを
待つ事にした。…何故かブロックさんは、
何か悟った様な顔をしていた。
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…リムさんを待っている間、俺は、
『kantsumire』にさっきまでの俺の変装の
情報が載っていないか、を調べる事にしていた。
「…『勇者』っと。…ん?…うわ、そうか…。」
…俺は『勇者』というキーワードで、メッセージ
を絞ってみたが、何と、割とさっきまでの服装の
俺が勇者だと気付き、激写し、『kantsumire』
に上げている人がいた。
…すごい観察眼だな…。…じゃなくて、結局
バレバレだったってことか…。
…これだと、今回の変装もすぐバレそうだな…。
…どうすべきか…。
…。
…いや、どうすべきかと言うか、俺が
『kantsumire』で、『魔王軍に今いる場所が
バレるので、俺の事はつぶやかないで下さい』
ってつぶやけばいいのではないだろうか。
…それだ。
…俺は、『魔王軍に今いる場所がバレるので、
俺の事はつぶやかないで下さい』と、つぶやいた。
…すると、すぐに、『分かりました!』と、
いうコメントや、謝罪が寄せられた。
…初めからこうしておけば良かったな。
…しかし、これで、一安心だ。
俺は、ふー、と息を吐いた。
「…待たせたわね。」
「おわああああ!?」
…と、リムさんが突如目の前に現れ、
俺は思いっきり後ろに倒れてしまった。
「…あっ…大丈夫!?」
「…いや、まあ、うん…大丈夫。」
俺は、打った場所を擦りながら、起き上がった。
「ごめんなさいね…怪しい人が居たから、
自警団に突き出してきたの。…だから、
遅くなっちゃって…出来るだけ速く
着こうと思って…。」
リムさんは、そう言いながら謝った。
…いやいや、十分速いんですが。
リムさんは、もしかしたら俺達とは違う
次元に生きているのかもしれない。
俺は、そう思った。
「…………………。」
ブロックさんは、複雑そうな顔を
していた。こうなる事を、全て
察していたのかもしれない。
「では、リムさんも来た事ですし、
行きましょうか。」
「…って、行くって、俺が依頼を受けた
人がいる場所以外に、どこか行く場所が
あるの?…そこに行くんだったら、もう少し
この機械を使っておかないと…。」
俺が焦って機械を起動し、街中の物を
分析しようとしていると、リプラは、
いえ…と、話を始めた。
「この街…そう言えば、街の名前を言って
いませんでしたね…リカバリー街という
のですが、その、西側に、池があります。
その池の周りに、魔王の力の影響を受けた
魔物がいるという噂を耳にしたので、
少しその辺を確認しておきたいとは思って
おります。」
「なるほど、池か…。」
「それなら、早速そこに行きましょう。」
俺がそう呟いた直後、リムさんは、即座に
そう言った。
「…えっ?でも、宿とか…。」
「…じゃあ、予約してくるわ。…リプラさんに
宿を調べて貰えば、すぐに予約出来るわよ。」
リムさんは、自信に満ち溢れている様子で
そう言った。
「…分かりました、では…こちらの…。」
リプラは、場所を説明し始めた。
「…なるほど、分かったわ!」
リムさんは、そう言ったかと思うと、
バッと目の前から姿を消した。
「問題ないようです、西を目指しましょう。」
リプラは、笑顔で冷静にそう言った。
カラリとセクタは、すごい…!と、言いたげな
目をしているが、ブロックさんは、呆れた
ような、諦めているようなそんな目をしていた。
確かに、リムさんがいつも、この調子だったら、
そんな表情にもなるのかもしれない。
…俺は、そんなブロックさんを暖かな目で
見ながら西に向かった。
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「ここです。」
俺達は、見えない防壁の端と見られる所まで
来ていた。
「…ここか…なんか人がいるがいるけど、
大丈夫なのかな?」
「確かに、それは少し気になりますね…。」
俺達は、人を気にしつつ、そちらの方へ
向かって行こうとした。
「…ここから先は、立ち入り禁止らしいわ。」
「…!?」
すると、突如目の前にリムさんが現れ、
そう言った。
「立ち入り禁止ですか…。」
「…ええ、池に向かう途中に橋があって、
それが壊れちゃっているみたいなの。
…本来なら、すぐに直せるはずなんだけど、
誰かが、その橋がかかっている場所に
とても強い呪いをかけたみたいで…
今、呪いを解く作業をしているから、
通れないらしいわ。」
「…なるほど、ちなみに、その情報は
どこで…?」
「…ああ、宿屋や、街で噂しているのを
聞いたのよ。」
…なるほど、噂しているのを聞いた…。
リムさんは、情報屋としても生きていける
のかもしれないと、ふと思った。
「…呪いか…何とかして、解けないかな…。
…そうだ、リプラは、『ピュアー』を
持っていたよな…あれは、本来聖なる力で
アンデッドを退ける魔法なんだよな…?
…あれで、呪いもなんとか出来ないかな…。」
俺はリプラにそう聞いてみた。
「そうですね…『ピュアー』の、上位に
位置する魔法であれば、解けるかもしれ
ませんが…それでも、やはり時間はかかる
でしょうね…初めに、次に行く予定の場所
に向かっておいた方が、いいかもしれません。」
「…というと?」
「取り敢えず今日は、宿屋で休憩をして、
明日は、次の目的地へ向かう事にしましょう。」
リプラは、笑顔でそう説明した。
「なるほど…あれ、それなら、依頼を達成したら、
今日はもう…やる事は無い?」
「そうですね…では、今日は休憩です。
街を観光することにしましょう。皆さん、
スマホを貸してください、宿の場所を
送ります。夜までにここに集合する
事にしましょう。
…その間に、ツイト様が依頼を受けた
ものも、テストしましょう。」
リプラはそう言って、皆のスマホに
宿の情報を送った。
「…では、また会いましょう。」
リプラは、みんなにそう言った。
「…それなら、私は見たいところがあるから、
少し別行動するわ。」
「…………………あ、それなら、俺も行く。」
リムさんと、ブロックさんは、そう言って、
東の方向に歩き始めた。
「という事で、ツイト様、私は、ツイト様に
着いていきますので、行きたい場所を
言ってくだされば、ご案内致しますよ。」
「…あ、私も、ツイトさんと一緒に行きます!」
リプラとカラリがそう言っている間、
セクタは、歩いて行くリムさんとブロックさん
を、一定の距離を開けて追おうとしていた。
「…セクタ、何やってるの?」
「…あの、えっと…あの二人は、一緒に
暮らしてたんだよね?」
「…まあ、そうだね、そう言っていたね。」
…不満も多そうだったけれど。
「………気にならない?」
「…え…?」
「…気になるよね?何も無いわけないと
思うんだけど…。」
セクタは、目を輝かせながらそう言った。
「…何か…。」
…ブロックさんの話からするに、多分、
何かあるかと聞かれたら、ないとは思う。
…しかしまあ、確かに…全く意識しないという
事は無いのかもしれない。
…確かに…少し気になる…のも分かるな。
…そんな事を考えている間にも、セクタは
2人を、一定の距離を開けて追いかけようと
していた。
…うーん、まあ、セクタを1人で行動させる
のは少し危険だし、俺達も、着いて行った
方が良いよな…。
…うん、そうだ、そうだな。
俺は、自分にそう言い聞かせ、セクタに
着いて行く事にした。
「リプラ、カラリ、セクタに着いて行こう。」
「…気になるのですか?ツイト様も。」
「い、いや、えっとまあ、セクタを1人で
行動させる訳には行かないかなって…。」
「…なるほど。」
俺がリプラにそう言うと、リプラは、納得
したような顔でそう呟いた。
「行きましょうか。」
さらに、リプラは笑顔でそう言い、
歩き始めた。
…これは、察されているな…。
「あ、ああ…。」
こうして俺は、セクタ…もとい、リムさんと
ブロックさんを追うことになったのだった。
今回も読んでくださりありがとうございます。
2人がどういったご関係か、次回、判明するのでしょうか!?
次回も、良ければ見てください。




