第10話 真実?
「う…うん…あれ、朝…?」
気がつくと俺はテントで寝ていた。
…昨日テントに入った記憶がない。
…リプラに迷惑をかけてしまったか…?
「すぐに確認しないと!」
俺は、すぐにテントの外に出た。
「…あ、リプラ…!」
リプラは、昨日と全く同じ場所に
佇んでいた。
「おはようございます、ツイト様。」
「う、うんおはよう…。…えっと、
リプラ、昨日って…俺、どうした?」
「…寝ていたので、テントまで運んで
おきましたよ。」
「あ、やっぱりそうだったんだ…
…ありがとう…後、結局迷惑をかけて
しまって…ごめんなさい!」
俺は、リプラにそう言って、頭を下げた。
「…いえ、大丈夫ですよ。」
リプラは、笑顔でそう答えた。
…結局、何にも気づけなかったな、
と、俺はふとそう思った。
「…2人はまだ、起きてない?」
「そのようですね。」
「…あっ、じゃあちょっと行ってくる…。」
「…?」
俺は、リプラにそう言ってテントから
少し離れた。
…昨日試せなかった『フラッシュ』を
皆が起きる前に、試しておきたいと
思ったからだ。
「………『フラッシュ』!ぎゃああああ!」
…『フラッシュ』を発動させる事には
成功したが、俺にも効いた。
…次使う時は、目を瞑ろう。俺はそう
心の中で誓った。
「…どうしましたか?ツイト様!」
「…ツイト、さん?」
「…………?」
と、3人が俺の元に集まってきた。
俺の悲鳴に釣られ、全員起きてしまったようだ。
「い、いや…何でもない…。」
俺は、目を手で覆いながらそう答えた。
「…?」
「「…。」」
開けられるようになった後、薄目を開けてみると、
セクタは不思議そうな顔をしていたが、
リプラとカラリは何となく察した顔を
していた。
…次からは気を付けます…。
俺は、心からそう思ったのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
そして、もう慣れたエビチリ(?)や、
準備を済ませ、俺達は少し進んだ。
…すると、だんだん森が開けていき、
村の入口らしきものが見えてきた。
「…おお、ついについたのか。」
「…そうですね、あれが、リ・クエスト村の
入口です。ツイト様、カラリさん、これを。」
リプラは、そう言って、俺とカラリに
変装セットを渡してきた。
「…ええ?でもセクタにバレてたし、
村の中でも、きっと勘のいい人は気づくって…。」
「ご安心下さい!少しメガネを改良して
おきました。」
リプラは、そう言って俺にメガネを渡してきた。
「…ん?何これ、何かレンズの面積が増えて
いるというか…化学実験の時に使うような
ゴーグルと化しているというか…。」
「…これは、レンズが入るべきところに
マジックミラーを入れたゴーグルです。
外側からは目を隠せますよ。」
俺は、装着してみた。
「…何か…やっぱりおかしいよね?」
俺は、皆の方を見てそう言った。
「…ふふっ。」
カラリは、少し感情が漏れ出ていた。
「………………。」
セクタは、俺から目を逸らしていた。
「あー、これはダメなようですね。」
リプラは、冷静にそう言った。
「いや、付ける前から何となく察してたけどさ…。」
俺は実験用ゴーグル風メガネをそっと
リプラに返却した。
「…こうなったら、前髪を下ろし、帽子を
被って、寡黙になるしかありませんね。
ツイト様の髪は……なるほど、目の辺り
までは持って行けそうですね。どうぞ、
帽子です。」
リプラはそう言って俺に帽子を渡した。
「うーん…。…どう?」
俺は、目が隠れるように髪を持ってきて、
帽子をかぶった。
「ああ、でも一目ではわかりませんよ?」
「そうですね、さっきよりはだいぶましに
なりました。」
リプラは、笑顔でそう言った。
…いやいや、初めにメガネを改造したのは
あなたじゃないですか…。
俺は心の中でそう思った。
…そして、皆1番隠さなければならない俺の
変装がうまくいったのを見て安心したのか、
リプラとカラリもそそくさと変装を始めた。
「…これで大丈夫ですね、では、行きましょう。」
そして、全員の準備が終わったところで、
俺達は村へ向かったのだった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「……………。」
俺達は、村の門を通り過ぎ、扉から中に
入ろうとしていた。
「…バレてないよね?」
「…そのようですね。」
俺は、不安でいっぱいだったが、誰1人
俺が勇者だということに気づく人は居なかった。
「…良かったー。」
俺達は、誰も気付く者が居なかったことに
安堵し、村に入っていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…で、無事に村に入れたた訳だし、
あの、武器屋のリテラさんの言っていた、
妹さんを探してみるか…?」
「…そうですね、1度、探してみても
いいかもしれませんね。」
俺達は村に入ったあと、そういった話を
した。
「かなり目立つ格好をしている様です
ので、聞き込みをすれば見つけられるかも
しれませんね。」
「…聞き込みかぁ…バレないか不安だな…。
まあ、それが手っ取り早い方法ではある
よな…。」
俺達は、聞き込みをするために、カンパニー
に向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…えっと、…ここで、昼間でも、真っ黒な格好を
している人をさがしているの…ですが…。」
俺は、カンパニーにいる人にそう聞いた。
するとある人は、何か察したような顔を
していた。
「ああ、あの人か…。」
「…何か…知っているんですか?」
「いやあ、あのな、たまに来るんだよ、
そんな格好の人が…。
…バッと現れ、依頼を受けて、バッと
消えて、しばらくしてバッと現れて
お金を受け取ってバッと帰る…。
…珍しがって、話しかけに行ったやつも
いるんだが、『急いでいるので』と言われて
バッと消えられたらしい。
…たまに、騎士のような人と一緒に来ている事も
あるらしいが、最近は見ないなぁ…。」
「…なるほど、ありがとうございます。」
しばらく聞き込みをして、最終的に、集めた
情報を、整理することにした。
「…俺が聞いた話をまとめると、その人は、
かなり移動が速く、騎士みたいな人と
たまにここに来る、という事になる。」
「私は、その騎士みたいな人の家の居候
だと聞きました。」
俺の言葉に、リプラはそう付け足した。
「…なるほど、じゃあその騎士みたいな
人に聞けば…!」
「…しかし、私が聞いた人達は、皆さん、
最近はは見ていないと言っていましたよ。」
俺の言葉に、カラリはそう言った。
「…あー、そういえば俺もその話聞いたな…。」
「私もです。」
「…僕も。」
「………?…取り敢えずカンパニーから出て、
これからどうするかを考えるか…。」
「…そうだね…。」
「「「………。」」」
「…ん?」
俺は、何となくこの空間に、違和感を覚えた。
…一体何が…………。
俺はそう思いながら、カンパニーを出た。
「…それで、これからどうしようか。」
カンパニーを出て早々に、セクタは俺にそう
言った。…あ、違和感の正体が分かった。
「いや、セクタは次の都市に行くって言って
なかったっけ?」
「……え?、いや……うん、そう、だね。」
「…行かないの?」
「…いや、それは、その…。」
セクタは何故かバツが悪そうにしている。
…なるほど、多分一緒に来て欲しいとか、
そういう事なんだろうな。
「…セクタ、残念だけど、俺達は、この村
で、まだやる事があるんだ。…だから…。」
「あああああ!…分かったよ!…僕も、この村
で、勇者さんを手伝うよ…。…多分、僕が
行く都市は、勇者さんが通るところだと
思うから…。だから、ね?」
セクタは必死に俺達を引き留めていた。
「…まあ、それなら…大丈夫?」
俺は、リプラとカラリに確認を取った。
「はい、ツイト様が良いのであれば。」
「うん、私も…大丈夫。」
「…じゃあ、そういうわけで、大丈夫です。」
俺がそう言うと、セクタは、神よ、我を
救ってくださり、感謝しております。
というように、目に涙が浮かんでいた。
「…えっと、まあ、それで結局、その、
謎の格好をしている人を、どう探す?」
「そうですね…この村にはいないという
可能性も考えられますが…取り敢えずは
村の様々な場所を回ってみるしかない
でしょうね。」
「…じゃあ、やっぱり、村全体を回ることが
出来る依頼を受けて、探す事にしようか?」
「…そうですね、それが一番効率がよい方法
だと思われます。」
「じゃあ、やっぱり戻ろうか。」
俺達はそう決めて、もう一度カンパニーの
中へ戻っていった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…?」
カンパニーの中は、なぜだかさっきよりも
ざわざわとしていた。
「えっ、何?…何があったの?」
「ああ、さっきの人か…いや、来ていたんだよ。
さっき話した、バッと現れる人が…な。」
…ええ!?かなりのニアミスだったな…。
「…えっと、どこに行ったとか…何の依頼を
受けたかとか、分かります?」
「…いや、依頼は受けていなかったような…
どこに行ったかは、分からな………あっ
今君の後ろに!」
「…えっ!?」
俺は思わず後ろを向いたが、そこには誰も
いなかった。…でも、確かに、残像の様な
ものは見えた…。いたというのは、嘘ではない
のだろうとは思う。…しかし、速い。
本当に、バッと去るんだな…。
「…確実にこの村にいるということはわかり
ましたが、どこに行ったかは分からないと
なると、やはりカンパニーの外で話した
事をするしか選択肢は無いですね。」
リプラは、冷静にそう言った。
「…ん?」
俺も、リプラの言う通りだと思っていたが、
ふと、手に何か握っている感覚があった事に
気付いた。
…手を広げてみると、それは、折られたメモ
だった。
…広げてみると、『勇者さんへ ここに来て欲しい』
というメッセージと、簡易的な地図が書いて
あった。…なるほど、カンパニーから、そう
遠くない場所のようだ。
…何故、事情を知らないリテラさんの妹が、
こんな地図を渡して来るのかは分からないが、
まあ、取り敢えず今は、ここに行った方が
いいような気がする。
「あ、待って!リプラ…。」
俺は、リプラに事情の説明をした。
「…なるほど、そのようなものが…。
確かに、この地図ですと、ここから
そう遠くないように見えます。」
「…行きましょう!ツイトさん!」
「あ、う、うん…。」
そして俺達は、リプラの案内で、地図に
書かれた場所に向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…ここ、ですね。」
そこは、ごく普通の民家だった。
…ここに、リテラさんの妹がいるのか?
俺は、ドアをノックして、しばらく待った。
「……………はい。」
すると、大柄の緑眼の人が、ドアを開けて
出てきた。
「あ、あの…えっと…ここに、昼でも真っ黒な
格好をしている、リテラさんの妹さんって、
いらっしゃいますか?」
俺はその人にそう聞いてみた。
「…………ああ。」
その人は、そう呟くと、部屋の奥に戻っていった。
…少し待っていると、若干リテラさんに似ている
雰囲気の女性が出てきた。
「…あ、えっとあなたが…。
…えっとそれで、なんで俺が勇者だと…。」
「…勇者さん、どうぞ。」
リテラさんの妹は、俺に質問する猶予を与えずに
そう言った。
「あ、あっ、はい。」
「少し変わった人ですねー。」
「………………。」
俺達は、少し困惑しながら、家にお邪魔する
ことにした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「えっと…それで、何で俺が勇者だと…。」
「…ああ、その前に、私の名前はリムって言う
のだけれど、姉に聞いているかしら?」
「あ、いや、それは聞いていないです。」
俺がそう答えると、リムさんは、はぁ、と
ため息をついた。
「…何で回りくどい言い方をするのかなあの
姉は…。」
そして何かボソッと呟いた。
「…え?今、何と…。」
「ああ、いいのいいの気にしないで。
…で、何で私があなたの事を勇者だと知って
いるか、だっけ?」
…あ、スルーされたと思ったんだけど、
しっかり聞いていたようだ。
「…簡単な事よ、尾行していたの、ずっと。」
リムさんは、サラッとそう言った。
「え?尾行?」
「そう、尾行よ。」
尾行って、尾行だよな。つまり、ずっと
追ってたって事だよな?
「…え?いつから…?」
「…そうね、ネクステ村で追いついたわ。」
「……………。」
俺は、唖然とした。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「…………え?………?リプラ…じゃ、ないよね。」
「はい、私ではありません。
…何者かが、私達の手助けをしてくれたようですね。」
何者か?…何者かっていったい何者なんだろうか。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
…もしかして、あの時、森で俺達を助けてくれたのは、リムさんだったのだろうか?
「…ま、まあ、だから、俺が勇者だと知って
いる、と。」
俺は、取り敢えず、余計なことは考えず、納得
する事にした。
「…えっとそれで、どうして俺達を追っていたん
ですか?」
「…ああ、まあ、『kantsumire』で見た時、
気になった事があって、情報を元に、勇者さん
がどこにいるか調べて追っていたの。
…勇者さんを追っているうちに、気になった事
は、気のせいじゃないと思い始めたわ。
…勇者さんも、病院に行ったなら気付いたで
しょうけど……。」
「あっ、ああ…!」
「…?」
リムさんの話の途中で、カラリが突然
苦しみ始めた。
「…あ、リムさん、カラリさんの様子が
おかしいので、休ませてもらって大丈夫
ですか?」
「…え、あ、うん、いいけど…。
じゃあ、勇者さん、ちょっと待っていて
ください。」
「…あ、は、はい。」
リムさんはそう言って、2人は別の部屋に
行った。
「…カラリ、急にどうしたんだろう…。
…大丈夫かな…。」
「…心配ですね…。」
リプラと、セクタも心配そうな顔をしていた。
「…それに、さっきリムさんがしていた話も
気になるし…病院に行って、気付ける事って、
一体なんだろう…。」
「…病院で気付く事なんて、病気以外に
ないと思うけど…。」
セクタは、そう、ボソッと呟いた。
「…病気?って言っても、俺は異常なし
って………。」
…そう思った所で気が付いた。
…そういえば、あのお医者さん、インポート
さんは、リプラ達に伝える事があると言って
いた。
…それに、カラリは、何故か哀愁的な表情を
していた…。
…もしかして、何か、ある…?
…いやまさか、何かあるなら、まず本人に
伝えるはずだろう。
…いや、でも確かに、病気によるが、病院側で、
聞かれなければ告知しないというような方法を
とる場合も無い訳ではない。
…それにここは異世界だ。もしかしたら、
俺が全く知らない、この世界のウイルスに感染した
のかもしれない。…しかし、この世界には回復魔法
がある。
…それを踏まえて告知されないとすると…
もしかして俺はかなり重い病気に…?
…いや、でも、普通に、異常はないですが、
少し疲れているようなので、これからは、
しっかりと休ませてくださいね。
…とか、言われただけかもしれないし…。
いや、もうこれは考えててもわからない。
聞いてみよう。
「…ね、ねえ、リプラ、病院で、何か
言われたの?」
俺は恐る恐るそう聞いてみた。
「……………。」
リプラは、黙っていた。
…これは、まさか、本当に何かあるのか…?
「ああ、勇者さん、待たせて悪かったわね。
この子は大丈夫だったわ、少し足が痺れた
だけよ。」
「いや、皆さん、ご迷惑をお掛けしました…。」
と、俺がそう思っていると、2人が戻ってきた。
…ちょうどいい、確かめてみよう。
「いやー…俺、さっきリムさんに言われた事を
考えてみて、気付いたんだよねー。」
俺がそう言うと、カラリは少し表情が強ばった。
「…俺、実は何かしらの病気なんじゃないかって。」
俺は、そう、カマをかけてみた。違うのであれば、
多分みんな笑顔で、違うよー、考えすぎ。
とか、言われるのだろう。
…場に沈黙が流れた。
…という事は、今のこの状況を見ると、どうやら、
考えすぎというわけではなかったようだ。
「あら、カラリさん、さっき、あんなに熱心に
説得してくれたのに、どうやら、勇者さんは
気付いていたみたいよ。…残念ね。
…まあ、私もそうだったから、気持ちは分かるわ
勇者さん。…そう、あなたは病気なの。
…そして、私も同じ病気。だから、私は
あなたを追ってきた。」
…リムさんは、沈黙を破ってそう言った。
…や、やっぱり病気…?…って、え!?
待って!?今サラッと衝撃的な事が判明
してない?
…リムさんも俺と同じ病気で?
だから俺を追ってきた!?
…って事は絶対に軽い病気では無い!
しかもこの世界の人ではない俺を追ってくる
ってことは、多分まだ治療法とかも判明
してなくて、だから違う世界の人間である
俺だったら、何かまた違うことが起こるんじゃ
ないかみたいな、そんな希望を持っているとか?
…いや、考えすぎかもしれない。
いや、でも考えすぎじゃないかもしれない。
「…それで、その病名は…。」
…俺は唾を飲み込んだ。…いったい、俺は
どういう状況なんだ…。
「…………………リム、待って。」
「…え?」
…と、俺がドキドキしていると、さっき玄関で
出会った緑眼の男性が現れて、リムさんが話すの
を止めていた。
「…………………勇者、ちょっと、来て。」
「え?…え?」
そして、俺はその男性に、腕を引かれて、
何故か家から外へ出された。
「…………こっち。」
そして、緑眼の男性は、そう言って、
村の道を歩き始めた。
「……?」
俺は、困惑しながら、その男性について行った
のだった。
今回も読んで下さりありがとうございます。
いやー、すごく中途半端な場所で終わりましたね。ツイト君はどういう状況なのでしょうね。
まあ、そんなに最悪な状況では無いので安心してください。
よかったら次回も見て下さい!