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導きの竜と魔石の国  作者: キャスパー
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ラミアを追ってきた、あいつらーーー


ラミアは父亡き後、母とある村で暮らしていた。母の生まれ育った村でもあるそこは、共石の村といい、この国ではその存在を幻とされ、村人以外にその場所を知る者はいないとされる村だった。


共石の村とは、その名の通り、石と共にある村である。


この世界では、魔術を使うにも、魔道具を使うにも、魔石が原料となる。魔石は鉱山等で掘り出されるが、質の良い魔石だけでなく、悪い魔石もある。特に、最近はあまり質が良く無い魔石が多くなっていた。そのため質の良い魔石はかなり高価になってきている。


幻とされる共石の村の人間は、石に愛され、魔石の力を更に引き出す、魔石と共鳴する力ー共鳴力が使えると言われていた。

質の悪い魔石を、良い魔石に変える事ができるのだ。

そのため、欲に目がくらんだ者は共石の村を追い求めた。

そこで共石の村では、魔石で強力な結界を張り、村を守っている。

現在共石の村は、国の地図にも存在せず、実在するかどうかも不明な、幻の村となっていた。



ラミアが10歳の時に、ラミアの母は病気で亡くなった。

村人は皆助け合って暮らしていたので、ラミアは周囲に助けられながら、その後も村で暮らしていた。


しかし13歳の時。森に薬草を摘みに行ったラミアは、うっかりと結界を出てしまったのだ。そこを運悪く、()()()()に捕まってしまった。


ラミアの言う()()()()は、アルド商会のことである。アルド商会は鉱山をいくつか抱え、魔石の販売が主な取引である。魔石を販売する商会は他にもあるが、他よりも質の良い魔石を取り扱うため、贔屓にしている貴族も多い。そのため、アルド商会は悪い噂が流れることもあったが、取り締まりが行われる事はなかった。


手広く商売をする彼らは、当然、共石の村についても知っていた。そして、情報網を駆使して共石の村の存在しそうな場所を探っていたのだ。ラミアは、結界を抜けたところを捕まってしまったのだ。


捕まった後、ラミアは共石の村の場所を吐くよう、脅迫された。しかしラミアは捕まった際、隙を見て、躊躇無く、村に入るための鍵を壊した。共石の村人はにとって、村を護ることは何より優先すべきことなのだ。強力な結界を持つ共石の村は、村人の証である鍵を持たないと入り口を見つけることすら出来ない。そして壊れた鍵を見せ、村には入れないと伝えた。逆行した商会の者はラミアの頬を殴りつけたが、貴重な村人であるラミアをあまりに痛めつけることは出来ず、村を諦め、ラミアを有効活用する事を選んだ。


そして二年の間、ラミアは監禁され、脅されて、質の悪い魔石から質の高い高価な魔石を作らされ続けたのである。


たった一人で、心を許せる人もいずに、ただただ魔石づくりを黙々とする日々。

だがラミアは、そんな毎日に挫けることは無かった。


常に心に希望を持つ事は、亡き母の教えである。


また、共石の村人は己らの希少性を理解していたので、常に危機感を持ち、<どんな有事の際にも、己の成せる事をせよ。最善を尽くせ>と、幼い頃から心に染み込まされているのだ。


(いつか必ずここを出るんだから!チャンスを掴むために、今、出来ることを考えよう。)


食事を持ち込まれる際と、魔石を受け渡す際。そのほんの少しの会話の機会から、ラミアはまずこの場所の情報を得た。そこは、とある街の屋敷らしい。逃げ出すことの出来ないよう、厳重に守りを固められていた。


ラミアは仕事をさせられながら、自分の力についても探った。

これまで何となく使ってきた力。それが、こんなにもたくさんの魔石に触れる機会が出来たのだ。

どうすればより魔石の力を引き出せるか。魔石のどんな力を引き出すことが出来るのか。ラミアは与えられた仕事をこなしつつ、検証を重ねた。魔石に力を込める仕事をすればするほど、ラミアの力はより高まっていった。そしてラミアはとうとう、魔石の質を変えるだけでなく、形や性質も変える力を得た。


新たに得た力を使って、ラミアは魔石を割り、小さなかけらをほんの少しずつ貯めていった。渡される魔石の数は管理されていたが、大きさまでは管理されていなかった。まさか戻ってくる魔石がほんの少しずつ小さくなっているなど、商会の人間は考えもしないだろう。分けて貰う魔石は、気が付かれないように毎回ほんの少しにしていた。


そして商会には少し力を弱めて作成した適当な魔石を引き渡しつつ、ラミアは逃げ出す機会を探っていたのである。



ある時、より魔石採掘場の近くの街へと、自分が移送されることをラミアは知った。


(逃げ出すならその機会しか無い。)

その唯一の機会に確実に実行するために、準備をした。



そしていよいよ当日。外は雨が降っていた。

馬車に移されたラミアは、逃げ出さないよう手を縛られ、見張りが二人ついていた。


しかし、街を出て、しばらく走り、森に差し掛かった時。


(今だわ!)

ラミアは、隠し持っていた、ナイフに形を変えておいた魔石で手を縛っていた縄を切り、粉砕した魔石を見張りの目に投げつけて目をくらまし、馬車から雨の中へ飛び出した。


「この野郎!!待て!」

「おい!娘を逃がすな!!」

粉が入って痛む目を押さえながら、見張りが叫んだ。


走っている馬車から飛び出したラミアは、下に落ちて転がったが、痛みを気合いで振り絞って、森の中へ逃げ込んだ。


まさかそんな行動をラミアが起こせるとは考えてもいなかった商会の人間は、一瞬行動が遅れた。


外にいた商会の人間が、慌ててラミアを追ってきたが、森の霧と雨で、ラミアは冒頭の通り逃げ出す事が出来たのである。




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