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降り続いた雨がやみ、少女の身体にも太陽の光が届いていた。
暖かな太陽の光が、濡れて冷たくなった少女の体を温める。
「うーん・・・」
少女はうっすらと意識を取り戻し、そして、ハッと目を開けた。
白金の髪に大きな緑の瞳。整った、可愛い顔立ちの少女であった。
(確か、川に落ちたはず。ここは・・・?)
暖かい陽の中、少女はふかふかした草の上に寝かされていた。どのくらい意識を失っていたのだろうか。濡れたはずの衣服はもうほとんど乾いていた。
「目が覚めたか?」
耳に馴染みの良い、優しいバリトンボイスが少女に届く。
急に聞こえた声に驚き、少女はパッと跳ね起きて、声の主を見た。
声の主ーそこには茶色の髪と切れ長の瞳の、背の高い少年が立っていた。
切れ長の瞳と高い鼻。髪と瞳は一般的な色だが、その目鼻立ちの整った顔立ちは、通常であれば誰もが一度は彼に見惚れるだろう。
しかしこの状況である。少女は、警戒心を露わに少年を見た。
「君が向こうの川の岸辺の木に引っ掛かっているのを見つけてね。
濡れたままでは冷えるだろうから、ここへ運んだんだ。
あの川を流されて助かるとは。君は相当に運が良い。」
警戒心から睨む少女の視線を物ともせず、少年は少女の近くまで歩み寄り、膝をついて目線を合わせて言った。
「身体の具合はどうだ?」
心配そうに問われて少女は、身体中が擦り傷だらけでヒリヒリするのに気が付いた。打ち身も少々あるようで、身体を動かすのはまだ辛い。しかし、大きな傷は無さそうだった。
「大丈夫・・・あの、他に人は見掛けなかった?」
「いや?この数日で見掛けたのは、君が初めてだ。そもそもこんな奥深くまで来る奴は普通いないだろう。この辺りは比較的安全そうだが、ここに来るまでには魔物が多いエリアも通る。」
その言葉で、追っ手を警戒していた少女は、やっと警戒を解いた。
「じゃあ、貴方に助けてもらえた私は、本当に運が良いのね。私はラミア。助けてくれて、ありがとう。」
雨が止み、陽の光を受けてキラキラと輝くラミアの白金の髪と安堵からの微笑みに、少し意識をとられながら少年は返事を返す。
「いや、助けられて良かった。俺はカーディラス。よろしく、ラミア。」