6 side カーディラス
(side カーディラス)
祭りの夜にラミアと別れてから、カーディラスは再び仕事に追われた。
(く!自分の時間がとれやしない。気まずいままラァと別れてしまったからな。会いに行っておきたいんだが。)
ラミアのことを気にはするものの、ノルデンへは王都から馬で一日かかる。
カーディラスは半竜であり、強靱な肉体と長命を持つが、まだ竜に変わることは出来ないため、移動は人間と同じ手段しか無いのだ。
王子の仕事には夜会出席も当然含まれる。今夜はカーディラスが無事に帰還した祝賀会だ。
会場には着飾った貴族が大勢足を運んでいた。
会場に王、王妃が登場し、王太子レオンハイム、第二王子カーディラス、第一王女、第三王子がそれ続く。
身重の王太子妃は、今夜は大事をとって欠席だった。
国王一家の入場を静かに見守っていた出席者だが、一家全員が揃うと、会場は歓声に包まれた。
「皆の者、よく集まってくれた。今夜は第二王子カーディラスが旅から戻った祝賀会だ。カーディラスは広い国土を持つこの国の状況を実際にその眼で見て、様々な情報を持ち帰ってくれた。今後はそれを基に方針を決めねばならないが、その前に今夜は成果を上げたカーディラスを労って欲しい。それから皆の者も、今夜は楽しんでくれ。」
「皆さん、今夜は私のために集まっていただき、ありがとうございます。
今のところはまだ王都に影響はありませんが、この国の一部では魔物の増加や天災などが起こっています。今後、皆さんのお力をお借りすることもあるかと思います。一緒にこの国を守っていって欲しい。今夜は、そんな皆さんと気持ちを一つにしたいと思います。楽しんでいって下さい。」
王の挨拶に続き、カーディラスが発言すると、大きな拍手と歓声が上がる。そして、パーティが開始された。
今後のために貴族らと仲を深めるのは、王子や王女の役目である。
カーディラスが挨拶に回ると、当然ながら、年頃の娘が紹介される。
カーディラスは半竜で人間とは寿命も違うため、王は結婚はカーディラスの自由にさせてくれていた。既に結婚している王太子含め、第三王子と王女には幼い頃からの婚約者がいたが、カーディラスは決められていない。そのため、カーディラスには王位継承権は無いと知っていても、王家との繋がりを望む貴族は、カーディラスの妻の座に娘をと、狙っているのだ。長命な寿命を原因に断っても、見目麗しく優しく優秀なカーディラスは人気で、それでもと、恋心を持つ娘もとても多かった。しかも竜は一途で一人の番を愛し抜くと言われている。
見た目と地位に寄ってくる者達に辟易としながら、カーディラスは隙を見て会場を抜け出し、空いている部屋に逃げ込んだ。
なにせ、今まで任務とはいえ気軽に一人で旅に行っていたのだ。息が詰まる王子としての仕事の中でも、たくさんの貴族相手全員に笑顔を振り向かなくてはならない夜会は最も好かない。それに令嬢に寄ってこられても困る。カーディラスは、こんな場でたった一人の大事な相手を決めるつもりは無かった。
(ああ、疲れた。全く、香水臭い令嬢ばかりで、見分けも付かん。)
カーディラスは部屋のソファにごろんと横になった。
見た目や地位を求めてカーディラスに言い寄る娘が多いが、純粋にカーディラスに好意を寄せてくれる娘もいることは知っている。一人一人話せば、気が合う娘もいるかもしれない。だがどうにもこういった場で話す気にはなれないのだ。皆、猫をかぶっているに決まっているし、こんな夜会の当たり障りの無い話しなんてつまらない。
(ラァと話しているのはとても楽しかった。幼いのにしっかり自分の考えを持ち、判断して決断する。自分の足で立って、常に前向きで。俺の方があの心の力強さに引きずられる。)
カーディラスは他の令嬢をついラミアと比べてしまっていた。
(それに・・・数日だが二人で過ごしていたあの日々。とても充実していた。)
ラミアと過ごした日々を思い出すと、カーディラスはつい微笑みを浮かべてしまう。夕刻に洞穴に戻ると、夕食を用意していたラミアが笑顔で迎えてくれる。ちっとも王子らしくない生活であったが、とても癒やされた穏やかな日々だった。
(一年も前のことなのに、鮮明に思い出せる。あの暖かい日をまた過ごしたい。)
カーディラスは、ラミアと過ごした日々に、思いを募らせるのだった。




