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導きの竜と魔石の国  作者: キャスパー
22/39

小さな街だ。宿屋は一軒のみであった。安くも無いが、だからといってそんなに高いわけでも無く、清潔で暖かい布団のついた部屋だった。


(良い部屋ね。雑貨屋も武器屋も、品物の質が良いし、店主も良い人だし、良い村だわ。共石の村に一番近いのに、昔は全然知らなかったな。でも、まさかここでソラに会えるなんて。幸運だわ。鍵の石がまだ完成してないから、ちょっと不安だったのよね。)


魔結晶が出来たから、きっと村の鍵も作ることが出来るだろうと思っていたが、本当に出来るか不安もあった。でも、恐らくソラは鍵の石を持っている。村の民が鍵の石を手放すなど、通常では有り得ない。だからソラの鍵の石を見せてもらえば、同じ物ならラミアの力で作ることが出来る。ラミアは心配事がひとつ無くなり、ほっとした。


ずっと野宿だったラミアにとって、久しぶりの宿屋だ。魔物に襲われないとわかっていても、外で寝るのはやはり気を張ってしまう。気が抜けたラミアはいつのまにか眠ってしまい、ドアをノックする音で気が付いた。

外は少し暗くなり、夕暮れ時を知らせていた。


ラミアは慌てて起き、ドアに向かって返事をする。

「はーい!」


「ラミア姉ちゃん?お待たせ!」

ソラの声だ。ラミアは簡単に身なりを整えて、ドアを開ける。

「お疲れ様!ソラ!」

ラミアの笑顔にソラは少し顔を赤らめながら頷き、外へ促した。


「あー、腹へった!早く食いに行こうぜ!」

「オススメのお店、あるの?」

「小さい村だからなぁ。食うトコなんて二ヶ所しか無いよ。姉ちゃんが泊まってる宿屋の下と、村の入り口近くの食堂。姉ちゃん、宿屋の下はこれから行く機会がまたあるだろう?だから今日は食堂に行こう。」


ご飯時より少し早い時間だが、食堂はすでに賑わっていた。早々と仕事を終えた村人の他に、数人の旅人がいるようだ。

「いらっしゃい!あら、ソラくん、今日は可愛い子と一緒ね?彼女ぉ?」

「ち、ちがうよ!幼なじみ!」

店員のお姉さんに言われて、ソラは顔を赤くして応える。

ラミアはそんなソラの様子が新鮮で、クスクス笑いながら見ていた。


二人は店の隅の落ち着いた席に座り、店の人気料理”ベアシチュー”を注文した。材料となる(ベア)は、店主が森に狩りに行くらしい。国の外れにあるこの村は、商人がほとんど来ないため、雑貨屋や武器屋のように、それぞれの店の店主が自分で外に仕入れに行く者が多いらしい。そのためこの村にしかない品をもとめて、やってくる旅人もまれにいる。


「良い村だろう、ここ。」

「本当に。人もとっても良いし。こんな村が私たちの村の近くにあったなんて、全然知らなかったわ。」


注文した料理が来たところで、ソラが本題を切り出した。


「3年前に突然いなくなっただろ、ラミア姉ちゃん。皆、本当に心配したんだぜ。母ちゃんも父ちゃんも俺も、森を探し回った。」

「・・・ごめんなさい。ありがとう。心配掛けたわ。」

「いったい、何があったんだ?」


ラミアはそっと辺りをうかがってから、話し始めた。


「あの時、ついうっかりと結界の外に出てしまって。アルド商会に捕まってしまったの。まさかあんなところまで、アルド商会が入り込んでるなんて思わなかった。」

「!!!アルド商会?!大丈夫だったのか?」

「とっさに、鍵の石を壊したのよ。それで村には進入させずにすんだの。村への進入方法を問い詰められて、脅されてちょっと殴られはしたけど・・・せっかく捕らえた貴重な村人をそれ以上痛めつけられなかったんでしょ。あいつら、村を諦めて私を使うことを選んだの。」


でも、そう言えば、と、ラミアは思い返す。

(あの時、鍵の石が無いってことで、アルド商会は私への追求を諦めたわ。村へ入りたいはずなのに、あんなに直ぐに諦めるなんて。・・・もしかして、アルド商会は鍵の石を知ってる・・・?)


ラミア姉ちゃん、と、ソラに声を掛けられ、ラミアはハッと思考を戻した。

「それで、その後姉ちゃんはどうしたんだ?」

「それで連れて行かれて、どこかわからない屋敷に監禁されて、約二年。仕事をさせられたわ。」

「姉ちゃん・・・。」

ソラは悲痛な面持ちでラミア見ていた。

「そんな顔しなくっても大丈夫よ。大人しく、きちんと仕事をこなしてたから、そんな辛い目にも遭わされなかったわ。身体を傷つけられることも無かったし。」

ソラを安心させるように、ラミアは敢えて笑顔をつくって話す。

「それで、私を二年目に他の街の屋敷に移動させるってっ時に、隙を突いて逃げ出したのよ。その後運良く助けてくれる人にも出会えて。他の街で働いてたんだけど、そこでアルド商会に見つかっちゃったから、また逃げてきたって訳。村に、帰ろうと思って。」


「・・・辛かったな。」

話しを聞いたソラは、ぽつんと零した。


「本当に心配して、でも誰も村から出て探すことが出来なかったんだ。・・・俺も。姉ちゃんが辛い目にあってるって言うのに、助けにいけなっくって・・・ごめん。」

ソラは悲しそうに項垂れた。

「気にしないで、ソラ。村を護るのが優先事項なんだから、それで当然よ。私の不注意で村の皆を危険な目に遭わせるわけにはいかないわ。」

「ああ、だけど、それでも・・・。」

ソラは、あの時、自分が幼くて、弱かったことを酷く悔やんだ。ラミアが辛い目に遭っているときに、自分は村から出て助けに行こうという決心が出来なかった。村に戻って来ないと言うことは、きっとラミアの身に何かあったに違いなかったのに。




「あれから、村が変わったんだ。」

ソラはラミアを見つめてぽつりと言った。

「ラミア姉ちゃんがいなくなって、でも村から出ることも出来なくって、これじゃ駄目だって言うやつが、出てきたんだ。共石の村を探す奴らが増えたら、将来、結界が破られるかもしれないし、村としてもっと自分たちを守る力をつけなくちゃいけないって。それに、危険を避けるためにもっと国や近隣の情報も得なきゃいけないって。皆で話し合って、それで、長巫女様が動かれた。希望する者で、長巫女様が認めた者は、村の外に出るようになったんだ。情報を集めにいくやつもいれば、俺みたいにどこかで修行して、村に役立つ力を付けようってやつもいる。皆、共石の村が好きだし、村の民を家族みたいに思ってる。村を、村のみんなを守りたいんだ。」


「ソラはそれでこの村にいるのね。」

「ああ。村のために自分に何が出来るかまだわからないけど、とにかく何か力をつけたくて。今は、さっきの店で修行させてもらってるんだ。武器をつくるだけじゃなくって、おやっさん、渓谷や森にも素材をしれに行くから。それで魔物と戦う経験も出来る。これでも少しは強くなったんだぜ。」


「そういえば、ソラだけで渓谷まで案内してるんですって?」

「ああ。ラミア姉ちゃんもいくんだろ?俺、一緒に行くよ。」

「そうね、ソラならお願いしたいわ。」

「ああ!任せといてくれ!」


3年前はラミアを助けられなかったけれど。今なら多少は強くなった。

(今度こそ、きっとラミア姉ちゃんを守りたい。)

そんな気持ちが、ソラの中に沸いていた。


村にいたとき、ラミアはソラにとって、憧れの姉であった。

母を亡くしても、気丈に振る舞い、いつも笑顔で優しくて、可愛い顔立ちをしたラミアは村で人気で、憧れる者が多かった。そんなラミアと、ソラとソラの兄弟は特に仲が良くて、たくさん遊んでもらったし、たくさん面倒を見てもらって、優越感を感じていたものだ。


そのラミアと再び出会え、二人きりで行動できることに、ソラの心は浮き足立つのだった。



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