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ラミアは草原地帯に足を踏み入れた。草の高さは膝ほど。しかし、しばらく行くと背の丈ほどのススキのような草が広がるエリアに入る。そうなると、周りが見渡せなくなる。
(久しぶりの旅だわ。カーディに教えてもらった短剣。どのくらい腕が落ちているかしら。レベルの高い魔物に出会う前に、ある程度慣れておいた方が良いわね。)
剣技については、部屋で短剣を振りはしてきたものの、実践できていない。
(草原の魔物はそんなにレベルが高くない。ここでまずは慣れておかなくちゃ。)
ところが、草原地帯でラミアが出会う魔物はなぜか皆、のんびりと落ち着いていた。
試しに近づいてみても、警戒せず、むしろ、そのままごろんと横になり寝てしまう魔物もいる。
(??どういうこと?)
前にカーディラスと森を抜けたときは、こんなことは無かった。
(あの時は、逃げていく魔物もいたけど、襲いかかってきた魔物もいた。こんな風に穏やかになることなんて、無かったわ。)
どういうことだろう?ラミアは考えを巡らす。
(この草原の魔物が特別おとなしいってこと?そんな話、聞いたことも無いわ。)
(あの時との違い・・・まさか、これ?)
あの時は無く、今は持っている物がある。ラミアは手のひらの上に魔結晶を取り出した。
魔結晶が、心なしか鈍く光っている気がする。そして、何かを、ラミアに訴えている気がした。
「そう・・・貴方の力なのね。」
魔結晶をじっと見つめていたラミアは、ぽつんと声を漏らした。魔結晶には、魔物を落ち着かせる力があったのである。
この世界に魔石は存在しているが、それはいつの間にか自然に存在している物であり、人工的に作り出すことは出来ない。魔石がどのようにして出来るのか、それはまだ解明されていなかった。
魔石は魔道具の材料となる。魔道具職人が魔石を材料に作る魔道具は、火や水を出したり、夜に明かりをともしたりすることも出来、日常生活で欠かせない物だ。だが、魔道具の材料として使う以外に魔石を扱える者はおらず、魔石自体の研究は進んでいないのである。魔石自体に影響を与えられるのは、共石の村の者だけなのだ。
「これは・・・この力は、アルド商会に知られたら私、二度と外には出られないわね。気をつけなくっちゃ。」
魔結晶自体、知られていない物である。魔結晶が、この力は、世の中に大変な影響を与えてしまう。
共石の村も、今よりももっと探し求められるだろう。村人の安全のためにも、あってはならないことだった。
だがそんな魔結晶のおかげで、ラミアの旅はとても安全なものだった。その後中級程度の大きめの魔物が出てきて、ラミアの背筋に冷や汗が流れることもあったが、流石に眠りはしないものの、ラミアを一瞥しただけで去って行ったのである。魔物に襲われる心配がいらないというだけで、ラミアの旅はとても楽な物となり、夜も、安心して眠ることが出来た。
あとは、鍵の石を作るための魔石を、どうやって手に入れるかだ。




