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第一章 出会い 1
「はぁっ はぁっ はぁっ はぁっ」
「探せ 探せぇ!! まだ近くにいるはすだ!」
「犬を離せ!匂いを辿らせるんだ!」
「必ず見つけだせ!」
「はぁっ はぁっ はぁっ」
(見つかるわけにはいかない!)
雨の中、少女は森の中を必死で走っていた。
これまで、この機会をずっと待っていたのだ。
(絶対、絶対に逃げきるんだ!)
幸運な事に、少女が逃げ始めてすぐに森には霧も出始めた。霧は視界を隠す。陽に当たってキラキラと輝く少女の白金の髪も、霧に中では目立たない。
更に、次第に段々と雨が強くなってきた。これで匂いを辿られることも無いだろう。霧と激しい雨の中、少女は必死に走った。方向など分からない。しかし今は、とにかく走るのみ。人気の無い方へ、無い方へと足を動かした。
「あっ!!」
だが霧は、少女の視界も奪っていた。足下の木の根に足を取られた少女は、そのまま崖を落ちて行った。
「しまった!」
崖の下で待つ、雨で水かさが増した川が、少女の姿をあっという間に攫ってく。
冷たい激流に飲み込まれ、少女はそのまま意識を手放した。