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翌朝、ラミアは瞼を泣き腫らしたまま食堂に降りて行った。
ラミアが昨夜、目鼻立ちの整った見知らぬ青年と共にいたという事は噂は、マイナの耳にも届いていた。
からかってやろうと思っていた当のラミアが、(何かがあって泣いた)と言うのが丸わかりの顔をしている。
マイナは何も言わずに、水で濡らしたタオルを差し出した。
「これで目を冷やしな。そんな顔じゃ接客できないよ。」
「ありがとう・・・。ごめんなさい・・・。」
元気の無いラミアに、マイナが言う。
「少し外に出て気分を変えておいで。今朝の仕事はそれからで良いよ。昨夜のお祭りで町中が浮かれていたからね。今日は皆、起きるのが遅いだろう。ゆっくりで構わないよ。」
タオルで目を冷やしながら、ラミアは店から出て、街をぶらぶらした。早朝の少し冷えた空気が気持ち良く、少し気持ちをスッキリさせてくれる。この時間はまだ外に出ている人も多くはないが、マイナが言っていた通り、確かに今朝はいつもよりも少ないようだった。
(そう言えば、昨日、会場で目が合った男の人。見たことあると思ったけど、誰だったかしら・・・?)
ふと昨夜のことを思い出し、ラミアは考えを巡らせる。
そして、ハッとして青くなった。
(あの人、私がアルド商会で監禁されていた時、私を見に来た人じゃない?!)
ラミアが監禁され、仕事をさせられ始めてすぐ、アルド商会の幹部の数人がラミアを見に来たのだ。
その時に幹部の部下として一緒に来ていた者に、似ている気がする。
ずいぶん前だったため、頭から抜けてしまっていた。
(もう!なぜすぐに気が付かなかったのかしら!私のことが、アルド商会に気付かれたわ!)
(いつかはこの街も離れなくてはいけないかもしれない。)
そう心に留めてあったラミアは、旅に出られるよう、常に準備をしてあったため、食料さえ買い込めば、いつでも出発出来る状態だった。
だが、突然食堂の仕事を放り出して、長くお世話になったマイナとクスカに迷惑を掛けることは出来ない。
(やるべき事と、やらなくてはいけない事を。)
ラミアは今後の行動を考え、決意を固めると、食堂へと戻って行った。




