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今日は、ノルデンの秋祭りである。
国の北にあるこの付近は、冬は雪の降る日が多くなり、厳しい寒さとなる。そのため、冬を迎える前に、皆で秋の実りを祝う祭りを開き、冬を迎えるための活力を得るのだ。近くの村も収穫した自慢の秋野菜を持ち寄って参加するため、祭りはかなり賑わう。ちなみに春にも春の喜びを祝う祭りがある。ノルデンの春と秋の祭りは有名で、観光客も訪れるのだ。
ラミアの働く食堂も祭り会場で屋台を出すため、ラミアも早朝からその準備を手伝っていた。
「ラミアちゃん、本当に助かるわ!昼間は屋台の手伝いもお願いするけど、夕方からは遊びに行っていいよ。仕込みを日中にしておけば、夜は売るだけだからね。夜はランタンが綺麗だよ。誰か良い人でも誘って、お祭りを回りなよ。」
「ああ、それがいい!お酒も出るし、お目当ての人と良い雰囲気になるの間違いなし!」
マイナとクスカが、ラミアをからかう。
「もう、やめてください。そんな人いないの知ってるくせに・・・。」
「だって、ラミアちゃんときたら、片っ端から振っちゃうんだもの。これは好きな人がいるって思うでしょ。」
「おお、そうなのか?こりゃぁ今晩、やけ酒飲むやつが大勢出るなぁ。」
「そんな人、いませんてば!」
「あはは、わかったわかった。でも、今夜は本当に盛り上がるんだよ。去年は私が身体壊して夜まで働いてもらって、遊びに行かせてあげられなかったからね。悪かったなと思ってるんだ。今年は行ってくるといいよ。」
「そんなマイナさん、気にしないでください。屋台のお仕事もなかなか出来ない経験で楽しかったです。でも、お言葉に甘えて、今夜は会場まで行ってみますね。」
「ああ、行ってくるといい!」
街は祭り一色で、朝から軽快な音楽も流れ、人々も浮かれて過ごしている。
ラミアは祭りを楽しみに、夕方まで一生懸命働いた。
そして夕方。
「じゃあ、行ってきます!」
「ああ、楽しんでおいで!」
マイナが手を振って笑顔で送り出してくれた。
会場へ足を向けるラミア。本会場で無くとも、たくさんの出店や屋台があちこちにあり、かなり賑わっている。街の角では楽士や道化師もおり、ラミアはそれを楽しみながら歩いていた。
会場へ近づくにつれ、だんだん人も増え、混み合っている。
突然、ラミアの目の前の客達が口論を始めた。
「おいお前!今、ぶつかっただろう!」
「なにを!ぶつかったのはお前だろう!」
どちらもかなり酔っ払っているようだ。
口論から一人が相手を小突くと、もう一人が更に力を入れて押し返す。口論はけんかに発展してきた。
かなり大柄な体格の者同士のため、周囲の者は手を出せず、巻き込まれないように遠巻きに眺めていた。
だが、見ればそのうちの一人は、常連客のカミュであった。
カミュは50代くらいの、普段はとても良い人で、ラミアにもいつも優しく接してくれていた。
「カミュさん!落ち着いてください!」
周囲の者が眺める中、ラミアは意を決してカミュに話しかけた。
だが、カミュは相手と胸ぐらをつかみ合っており、ラミアに気が付かない。
「カミュさん!お祭りの中ですよ!」
ラミアは、カミュに近づいて呼びかける。
と、カミュがラミアに意識を向けたとたん、相手が勢いづいてカミュを突き飛ばし、
カミュは、ラミアの方に飛ばされてきた。
「危ない!!」
周囲で見ていた者達が声を上げる。
(!!ぶつかる!!)
ラミアは、思わず目を瞑った。
しかし、待っていた衝撃は訪れず、代わりにぐいっと身体を引かれ、、、暖かいものに包まれる感覚があった。
(・・・痛くない・・・なに・・・?)
ラミアは恐る恐る目をそっと開ける。
そこには、懐かしいラミアの焦がれる者の姿があった。




