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ピカソとかゴッホって絵下手じゃない?

 実を言うと、ピカソは物凄く絵が上手いです。しかしゴッホはそれほど絵が上手くありません。


 ゴッホは絵をまともに描き始めた時期がかなり遅かったし、早く死んでしまいましたので、絵が下手です。


 ピカソは画家の息子だったので、小さい頃から絵を描く機会に恵まれていました。だからピカソは絵がうまいのです。


 ゴッホは死ぬまで評価されない画家でした。彼が生きているとき、彼の絵を買う人はまったくいませんでした。

 しかしピカソは生きている間に巨匠になりました。そして彼は商売が上手でした。

そうやって考えると、ゴッホとピカソってかなり対照的な作家なんですよ。


 でも素人の目では両方共「絵は下手だけど有名な人」になってしまう。


 美術教育を頑張ってこなかった日本ですので、美術に関しての基礎をしっかりと学び直さなければゴッホやピカソがまったく違うということを理解することができません。


 でも大丈夫です。これを読めばその違いを友達に説明できるくらいまでになることでしょう。


 では具体的な話をしていきます。

 ゴッホの話をまずしましょう。ゴッホの方がピカソより少しだけ早く生まれていますからね(でもピカソよりもゴッホの方が圧倒的に早く死にました)

 

 ゴッホの作風を一言で表すのであれば「日本に憧れた狂人の、暴れた筆の痕跡」です。


 日本に憧れた? と思った方もいるかもしれませんが、ゴッホが生きていた当時は日本の浮世絵が海外の美術に圧倒的な影響を与えていたのです。


 浮世絵は海外の人にとっては衝撃でした。

 日本人は絵を平面的に考え、輪郭線で表現します。

 簡単に言えば、絵が絵でしかないのです。


 逆に言うと西洋の絵画は王様など貴族を描く必要性があったので、とにかくリアルに描かれました。

 貴族をリアルに描いて満足してもらって、それで生活していたわけですからね。

 だからその時代の絵からは実物を鮮明に想像することができるのです。


 でもゴッホの絵を見て、リアルな向日葵を感じる人はいないでしょう。

 彼は日本の浮世絵を見て感動し、リアルな絵を描く必要性がないことに気づいたのです。


 そのような絵画の流れを「印象派」と言います。

 浮世絵に影響を受けて、実物をそのまんまに描く必要性がないということに気づいた人たちのことです。


 ゴッホは印象派の作家の中でも、自分の心の中まで絵に表現してしまいました。

 少し前までは実物をそっくりそのまま描くことで飯を食っているのが画家だったことを考えると、大きな変化です。


 「ゴッホは印象派に属していて、実物とは程遠い絵を描いた人なんだ。」

 「そしてその人達の中で、初めて自分の感情を表現した人なんだ。」

 そんなふうに覚えておくと、ゴッホがどんな作家かわかると思います。


 じゃあピカソにいきましょう。

 でもピカソのイメージって、友達の下手くそな絵とかを指して「わ、ピカソだ」とか言ったりするときに使うものっていう認識がありますよね。

 実際にはピカソは上手く描こうと思えばとことん上手く描けてしまう人なのですが、上手く描くということをかなり早い段階で捨てているだけなのです。


 でもピカソは何故絵を上手く描くことを放棄したのでしょうか? それは他でもない写真の発明です。


 写真の発明は一九世紀です。ピカソが生まれたのは一九世紀後半なので、彼は写真がある時代の画家です。

 ちなみにゴッホの属している印象派誕生のきっかけも写真の発明でした。

 写真に負けない絵を描くためにどうすれば良いのかってなったときの答えとして、浮世絵があったわけですね。

 どれだけ正確に絵を描いたとしても、写真ならそれよりももっと正確にリアルに現像できる、という感覚がある時代にゴッホもピカソも生まれているのです。


 そこでピカソは浮世絵に影響を受けるということではない方法で絵を描きました。


 ピカソは当初「青の時代」や「ばら色の時代」のように、感情を絵で表現しました。出発点はゴッホと似ていると言えますね。


 しかしピカソは途中で、キュビスムというものを発明します。

 図を用意しました。下記のような絵です。

挿絵(By みてみん)

 これはどういうふうに描いているかって言うと、いろんな角度から見たものを一枚の絵に表現しちゃっているんですね。

 つまり、一つの角度でしか見れない二次元の世界で、三次元をやってしまったわけです。

 当然、これは写真ではできません。ピカソは写真ではできない絵画を浮世絵以外で発明したのです。


 で、ここからが面白いところで、ピカソは生きている間に充分に評価されていたのに、どんどん作風を変えていきます。

 でも当然写真のような絵は描きません。素人の目からすれば「だんだん下手になっている」んですよね。


 ピカソがやろうとしたことは写真にはない絵画の可能性です。それをどこまでも追求して死んでいきました。

 なので、友達の下手くそな絵とかを指して「わ、ピカソだ」とか言ったりするのは半分正解で、半分不正解なのです。

 だって、下手くそな絵は写真じゃ再現できませんからね。


 下記の僕の描いた絵を見てください。

挿絵(By みてみん)

 これは写真にはできませんよね。つまり美術で「こいつ下手だなあ」って思う人の絵は、上手く描こうと思ってやっていないのです。

 だから子供みたいな絵ってアートの究極系だって言われたりするわけですよ。


 で、ゴッホは画家を目指すのが遅かったから子供みたいに下手くそな絵を描いていて、死んだ後に評価された。

 物凄く失礼な言い方だけど、美術がよくわからない人はこれくらい大胆に捉えていた方が良いです。


 写真に対する対抗は、美術の初級編です。

 次回はもっと深いところまで説明できたらなと思います。  

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