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ルミナの夜の訪問

 ガチャリと自室のドアを開け、俺の部屋に入る。

 後にメトが続く。

 俺はベッドに前からダイブする。

 すごくいいベッドだ。

 メトは椅子に座った。


「学校か……」


 俺の部屋でベッドに寝転びながら俺は天井を見ながら(つぶや)く。


「学校生活は良い思い出がありませんね」


 メトが俺と二人だけになったので本音を話す。


「そうだな……でも大丈夫。今度は俺が絶対お前のことを守るよ。もし俺たちに危害を加えようなんて輩がいたらぶっ飛ばすから」


「メトもご主人様をお守りします。命を賭してもです」


「はは。頼むよ」


「任せてください。腕っ節では大したレベルではありませんが、策謀は結構なことができるようになりましたから。メトは弱みを握ったり、口封じをするの向いてるかもです」


 俺は魔法の知識はあるがそれもかなり偏っている。

 他の教養はからっきしだ。

 メトもそうだ。彼女の魔法技術を向上させるのに魔法学校は大きく役立つだろう。


 魔法学校にいる教授などの研究者の知識も俺は借りたい。

 理論上可能だが魔力が足りないために使えない魔法がそういうところに眠ってそうだ。


「よし、じゃあ魔導船学園。行くか」


「はい!」


 俺たちはテスタバーグ婦人のクラウディアがいる談話室に気勢を上げて行った。

 クラウディアが抱えたパンフレットから学校の情報を聞いた。

 他の兄弟姉妹もそれぞれが在籍する学校について話してくれた。

 おせっかい焼きな人たちで、途端にがやがやとする。


 オーガストが手を置き、みんなが視線を集めたパンフレットの表紙には大型の船が載っていた。


「俺には瞬間移動魔法があるから移動の不自由っていうデメリットはないよね」


 テスタバーグ家が学費を全額出してくれるとのことで俺とメトは心が温かくなり、誠心誠意クラウディアに頭を下げる。


 俺はその日早めに寝た。


 メトと布団に入る。

 風呂上がりの温度がまだ僅かに残った暖かさが心地よい。

 メトと向かい合う形だ。

 シャンプーと女の子の匂いが安らぐ。


「みんなまだ起きてますね」


 階下の談話室や他の部屋の賑やかな声が聞こえる。

 俺とメトは眠りに落ちていった。



「カムイ」


 誰かが俺を呼ぶ。


「起きて」


 目の前にはメトが寝ている。

 あたりは静かだった。

 後ろからこえをかけられたようだ。


 振り向くとルミナがベッドに入っていた。

 目を伏せて声を抑えてささやくように息を漏らしている。パジャマ姿で髪を下ろしている。


「やぁ。起こしてごめんね。大事な話があって来ちゃった」


「おいおいけっこうびっくりしたぞ」


「ふふ。メトだけ羨ましいなぁと思ってベッドに忍びこんじゃった」


「…………目を開けてみてください」


 俺がそう言うとふふふといたずらがバレた子どものように笑い目を開けた。

 その目は白目が黒く、瞳は夕日のような色になっていた。

 ルミナの瞳は緑色だ。


「女神様。こんばんわ」


「ふふっ。はいこんばんわ」


 いたずら好きな神様だ。

 ベッドから降りて窓のカーテンを開けると景色は一変しており、街並みが覗けるはずなのに、どこまでも続く黄昏の空になっていた。

 既にこの部屋は異界化されていた。


「メトちゃん可愛いですねぇ」


 つんつんと寝息を立てるメトの頬をぷにぷにしている女神様。


「何か大事な話があるとか……」


 女神から言う大事な話とは。緊張する。


 女神は真面目な顔になった。


「そうですね。あなたに危機が迫っているんです」

 俺は頷き二人でテーブルの方に移動した。

 飲み物を女神に()れる。


「説明するためにまず見て欲しいものがあります」


 女神が詠唱とともに手をかざすと空中にキラキラと三色の光が現れた。赤、緑、青。

 目に優しい感じの光量だ。


 白魔法だ。

 光は集まって像を成した。

 立体映像だ。

 人だ。


「女の子……ですね。俺と同い年ぐらいでしょうか」


 桃色に近い銀髪のウェーブががったセミロング。

 貴族の令嬢というのがぴったりの見た目だ。


「この子の名前はウル・ハンプティ。今年の魔導船学園の入学生なんですが、将来ブレイクスリー帝国の第二王子と結婚し、未来の王女になる存在です」


 まだ話は見えない。


「今のままだとこの子があなたの破滅に関わってきます」


「穏やかじゃないですね」


「もちろん。回避することができます。私はそれを伝えに来ました」


「そうだと助かりますね……ずばり原因はなんなんですか」


「ウル・ハンプティが王子と婚約した後に殺されてしまうんですが、そしてあなたが濡れ衣を着せられ、犯人にされてしまうんです」


 話が見えてきた。


「犯人は現時点での第一候補がイーラ・サキュバース。かなりの大貴族の令嬢です。第二王子との恋敵の一人で、嫉妬にかられての犯行ですね。ですが彼女の他にも第二王子に恋する者は枚挙に(いとま)がないので他の者が犯行を起こす可能性も高いです」


 今度は立体映像が違う女の子になる。

 金髪の気の強そうな容姿をしている。


「今俺はテスタバーグ家の養子になったので、そうなったらエルファとブレイクスリーの国際問題化は不可避……下手すりゃ戦争ですかね」


 女神が俺の理解に頷く。

 その子が殺されてしまうのもなんとか防ぎたい。

 しょっぱなからとんだ学園生活になりそうな事実が来たわ……。


「はい。よく出来ました」


 女神がルミナに出せない悠然とした雰囲気で言った。


 それから少し俺は女神と話をした。

 テスタバーグ家の人たちは良い人ばかりなので安心して欲しいと女神は言っていた。

 話も終えて、あとは女神がルミナを元のルミナの部屋のベッドで寝かせてくるというところだったのだが。


「女神様……?」


「……ここでルミナちゃんに体を返したら面白いと思うんですが、いいですか?」


「よくないでしょ……!」


「おやすみなさーい。カムイ愛してます……」


 そう捨て台詞を残して女神は目をつぶった。

 異界化も解けた感覚があった。


「ん……あれ? えっ、カムイ?。こんな夜更けにど、どうしたの?」


 ただの陽キャ感ある眩しいルミナに戻った。


「もしかして眠れないの?」


 なんか常にウェルカムな感じが陽キャっぽいんだよな。


「しー。メトが寝てるからちょっと声下げて」


 口に人差し指をつけて顔を寝ているメトに向けた。


「あっ。うん。分かった。もしかして三人で寝ていいの?」


 俺はルミナの勘違いに気づく。ルミナは俺とメトがルミナの部屋に来たと思っている。


「ルミナ。ここは俺の部屋だ」


「えっ」


 と、ルミナがあたりを見渡すと確かにここは自分の部屋ではないと気づく。


「うそーっ。ボクの部屋だと思った……確かにおかしいと思った。ごめん。迷惑かけたよね」


 しっかりと頭を下げられる。しかし事情を知っている俺からするとどうにも歯がゆい。


「いや、そんなことないよ。ここは元々ルミナの家なんだから。それと全然違う話だけどパジャマ似合ってるよ」


「ほんと? 子どもっぽくない……?」


「ううん。可愛らしい」


「えへへ。ありがと」


 ルミナは恥ずかしそうにつま先を伸ばす。


「じゃあおやすみ」


「ああ、おやすみ」


「ボク夢遊病の気があるのかなー……」


 と言いながら部屋を後にするルミナ。


 女神様……まったくもう。


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