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オープンキャンパス

 フォルテ第一王女に魔導船学園を案内してもらった。


「本日は王女じきじきに案内してもらえるなんて光栄です」


「今この船には3000人あまりの乗員が乗っている。その内2000人ほどが学生だ」

「かなりの人が乗ってるんですね」


「今だいたいの生徒は上陸して観光している」


 生徒たちから俺がリチャード皇子に間違われる度に、フォルテは懐かしそうに微笑んでいた。


 船長室もVIPルームも全部案内してくれた。


 甲板のウッドデッキに囲まれた訓練場。

 甲板の飛行魔物の発着陸場所。

 船底の水棲魔物の入船所。魔物だけでなく小型の船も収容できるそうだ。


 展望レストラン。

 小鬼たちが切り盛りする24時間食べ放題のビュッフェ。


 不良生徒が隠れて経営している闇バー。


 体育館は種類の違うものが3つあった。

 180°客席がある二階席のある大型劇場。


 畑のビニールハウスもあって野菜を栽培していた。


 50以上ある部活。


 世界各地を回ることができるのが魔導船学園の最大の魅力だ。

 各国のトップ候補が寮生活をしながら世界を見て回るので将来の国の結束力が高まるそうだ。


 一年かけて世界一周するらしい。

 春にブレイクスリー帝国に帰ってくるためその時期に里帰りの長期休暇がある。

 そのため一年寮暮らしになる。


 3層分吹き抜けのエントランス。

 ガラスやアクリルパネルなど光を通す材質の屋根で覆われた大規模な空間。


 魔法、人間の乗務員、小鬼で船を成り立たせている。


「三人は14歳なのだろう? ならばちょうど魔導船学園中等部の入学年齢だ。ここで学ぶ気はないだろうか?」


 俺はメトとルミナを見る。


「メトはご主人様の御心のままに」

「ボクはいいと思うよ。メイおじさんやオーガストも卒業生だからここの良さは知ってるんだ」


「うーん。考えてみます」


 展望ジャグジー。大型の共有風呂。24時間営業。

 サウナも岩盤浴もあった。


「本当に立派な船ですね」


「ブレイクスリー王国の経済力や発想力の自慢の側面も多分にある」


 フォルテはフハハハと笑った。


 船内は多数の学生が上陸したこともあって広さに比べると閑散としていて、貸切感があった。


 船の中に緑豊かな公園がある。13階~16階、甲板。

 吹き抜けになっている。

 とてもここが船の中とは信じられない。


「魔法研究室の見学もしてもいい」


「いいんですか? 学外秘とか」


「ああ。少しでもカムイに興味を持ってもらえたら幸いだ」


 最初からかなり好感度が高い。


 研究室に籠っていた教授や学生は王女の来室とあって真摯な応対をしてくれた。

 軽く彼らと話したけど、魔法の実践、論文ともに、方向性が俺と似ていた。

 初対面にかかわらず教授たちと話しが盛り上がる。


「いや、将来有望な少年だ。王女さま。彼らは今年の入学生ですか?」


「いや、まだ入学が決まったわけではない。まだね」


 意味深に微笑むフォルテ。

 なにやら勧誘する気まんまんなようだ。


 校内設備は全ての方面でかなり充実している。


「アルジェント白魔法学院のケチぶりとは大違いだ。同じ貴族の学校なのにこうも違うとはね」


「ご主人様。アルジェント関連のお金の流れについて探っておきます」


 わずかな疑問にも調べておく従者の鑑。


「今日は泊まって行くといい。ロイヤルスウィートの最高ランクの部屋を用意した。一泊の値段は聞かない方がいい。フ。我が自慢の船上の宿をご堪能あれ」


 と、用意してくれたロイヤルスウィートルームは大きく解放されたデッキのついた広い二フロアの部屋だった。

 船のフロアは17階。かなり高い位置にある。


 部屋に大型のピアノとかあった。

 甲板にはジャグジーバスがある。


 なんか甲板にもう一つキッチンがある。

 この部屋めちゃくちゃ高いんじゃないか?


 フォルテのご厚意だ。


 また、見晴らしが最高だった。

 マロマの港を見下ろせる。


 一般の甲板を一望できるこの眺めはまさしく王の眺めだ。


 泡立てる魔法で後で遊ぼう。

 水着は着たけど三人で入って遊んだ。


 メトはベッドで寝ている。


 俺はテラスに一人で立っている。

 今日は月も出ておらず、船の光で海は広大な闇で何も見えない。

 波の音しか聞こえない。


 ルミナがガラスのドアを開けて俺の隣まで来た。

 ルミナはメトにもいろいろ構ってくれている。


「メトはカムイ以外のことが目に入らないみたい」


「ああ。奴隷から解放して以来そんな感じだ」


「それぐらいのことをしたと思うよ。……腕はどう? 幻肢痛はある?」


「幸い大丈夫みたいだ」


「なにか懸念があったら言って。プロとして担当患者のメンタルケアも仕事の一つだけど、仕事関係なしにキミの心も心配なんだ」


 翌朝目が覚めると二人は自分よりも早く起きたようだった。

 部屋のどこかのドアが開いた音がした。


「お店がもうやってたよ。朝食買ってきた」


 ルミナとメトが袋をテーブルに置く。


 サンドイッチとコーヒーだった。

 レタスのようなものや謎肉、トマトのようなものや未知の味のものが挟まれたそれは美味しかった。


「野菜が新鮮ですね」


「船内で栽培してるやつっぽいな」


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