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メトの変化

 


 俺とメトはエルファ首都のテスタバーグ家の宮殿に住むことになった。


 宮殿は立派なんてものじゃなく、ロシアとかインドとかの宮殿みたいな感じだった。


 アランもテスタバーグ婦人のクラウディアも暖かくて優しかった。


 テスタバーグ家の他の兄弟姉妹が長期休暇で宮殿に帰ってきていた。

 いい人たちだ。


 俺やメトと同じように事情があって親から見放されて養子になった背景のある子もいた。


 俺とメトは隣同士の部屋をもらった。

 部屋が広くて豪華だ。


「ああああ……馬小屋か家畜小屋で寝ていたことを考えると信じられないです……」


 何段階も待遇が跳ね上がってくらくらしているメト。

 おっかなびっくり、与えられた部屋を見る。


 高そうな椅子に自分なんかが座っていいわけがないという刷り込みがあるため、部屋でずっとつっ立っている。


「そうだな。メト……一人で寝るの大丈夫か?」


 メトは奴隷時代のトラウマで夜は上手く眠れていない。

 見知らぬ場所で一人で眠るのはメトにとって怖いことだった。宿屋でも俺たちは一緒のベッドで寝ていた。


「良いのですか!? っいえ。ご主人様にご迷惑をかけ続けるわけには行きません。もうそろそろ一人でも大丈夫です」


「分かった。でも辛かったらいつでも来てもいいからね」


 次の日起きるとメトが俺のベッドに入っていた。

 朝起きるとメトがすごい勢いで俺に謝る。


「ごめんなさい! ごめんなさい!」


 結局一人で寝られなかったのだろう。


「いや、いいんだよ。メトは可愛くて大好きだから。ずっと一緒に寝てても全然構わないんだ」


「ほ、本当ですか……? そのようなお言葉……メトには勿体ないです……今日からご一緒させていただきます。感謝致します」


 宮殿では新しい二人の貴族位の授与式的なものがあった。


 ひゃっほう。


 囲む人の多さ、ただ事じゃなさ。


 多くの人々が俺たちを祝福した。


 メトはすごく熱心に黒魔法を覚えようとしていた。

 黒魔法か白魔法かどちらか一系統を集中的にやる方が二つ同時にやるのと比べて100対1ぐらいで効率が違う。


 そのためメトにも黒魔法だけを覚えさせることにした。


 メトは全ての物事にかなりの真剣さで取り組む。

 そして楽しそうだ。


 彼女が詠唱を終えると氷の塊が空中に出現した。


「おお、やったな。第二階位黒魔法の氷魔法を発動できたじゃん」


「や、やれました……! っ感激です!」


 メトがひざまづいて目を閉じ両手を組んでじっとし始めた。


「ど、どうした?」


 いきなり奇行されるとびびるんだが。


「もちろんご主人様の教えあってのことなので、カムイ様に感謝の祈りを奉げております」


「祈りって……」


 ええ……。


「ふざけてるのか?」


「滅相もありません!! ご主人様は現世に現れになった神の如き存在です。もうずっとご主人様は神様なんじゃないかと思っています!」


「神!? ははっ……」


 むず痒すぎる。

 過大評価も極まれり。


「なあメト。どう考えても俺が神なわけないだろ?」


「メトにとってはもうずっと神様のようなものです。それに信仰とは見返りを求めずに主神に帰依するものですから」


 魔族の特有文化なのか? 文化が違うってやつか?


 他の冒険者から「プークスクス。あいつ自分のことを従者に神だと呼ばせているらしいぜ」


 とか言われたらどうすんだよ。


 この子は身に降り注ぐ幸運に心が持たなくなっちゃったんじゃないか?

 それでバランスをとるために自分を神様に使える従者だと思い込み始めた。

 ということは、時間が経てばそれも自然に収まるだろう。


 怪しい宗教を信仰するやばいやつのように感謝の祈りを捧げるメト。


 それから宮殿では朝昼夜と、膝まづいてなにやら祈りを捧げるメトが見られるようになった。


 きっと時間が経てば大丈夫だ……。

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