金黒飛龍ディエス・ワイバーン③
報酬として俺は5000万ゴールドの金額が約束された。
この金額は全参加者の中で一番高額だそうだ。なんだか悪いね。
もちろんここにはないので首都に行けばもらえるらしい。
そして冒険者ランクもAランクにしてくれるらしい。
護衛の戦士たちは俺を見る目が普通の魔術師を見る目から英雄大魔術師を見る目になっていた。
みんな一生に一度の大仕事をやり終えた後のように楽しそうだ。
魔術師たちから質問攻めにされているところをメトが敏腕マネージャーのように抑えてくれた。
「いっせいに押しかけるのはやめてください。ご主人様がゆっくり食事ができません。皆さまに戦いの後で疲れている他人への配慮をお持ちくださると幸いです」
少し離れたところでレムリーがさっそく交渉してくれていた。
「ナーディさん。寝ないでください。カムイがくれたポージョンが巷で売られているポーションの数倍効果のあるものでしてね。それをくれたおかげで結界班は結界を維持できたんですよ。ねえ聞いてます? そういった経緯を鑑みて使ったポーション一本につき30万ゴールドの価値はくだらないですね」
「ああ30万……分かった……」
ナーディはすごく眠そうにしている。
ほとんど反射で答えているんじゃないか?
「10本もらいましたから300万ゴールドですね。300万をカムイにポーション費として渡す。いいですね」
「分かった300万をカムイにポーション費………………」
俺がレムリーに渡したのは6本だ。
レムリーはぐっと俺に親指を立てた。
俺はサムズアップを返す。
300万足して首都では5300万ゴールド受け取れそうだ。
俺はアルファンデルに気に入られたのかけっこう俺の周りに来ていた。
魔物ではあるが人間化したその姿は天使のような可愛らしさを持つ。
小さなその口の歯並びの良い歯の中で犬歯が鋭さを持っているところがドラゴンの名残を残している。
「実の所俺たちが一番貢献しましたね。この戦い」
「いや、お主がおらなんだらわらわは死んでおった。誰がなんと言おうとわらわにとってはお主が一番の功労者じゃ」
「それはどうも。なかなか殊勝ですね」
わらわの方が強いんだからねっ。とか言うかと思った。
それにさっきから何故かアルファンデルはもじもじあいている。
「クリムゾンドラゴンは常に強いオスを探しておるのじゃ。二百年余りさがしてようやく見つけた……その……お主はわわ、わらわとつがいになる気は無いかの?」
「えっ」
「へっ返事は今すぐでなくていいっ。わらわがお主のことを好いとることだけ知っておいて欲しかったのじゃ」
アルファンデルは羞恥に耐えきれず、すたこらとどこかへ行った。
衝撃冷めやらぬ。
メトが俺に三週間の間の出来事を報告してくれた。
「ルミナさんを迎えに行く過程でテスタバーグの宮殿にも行きましたので、そこで働いているメイドの方々に修行をつけてもらいました」
「有能」
金策、情報収集、魔法の修行も同時にしていたとのことだった。
有能。
ルミナとも話す。
「すごいなぁ……数年間会わない間にこんなにも成長しちゃうなんて……なんだかものすごくなっちゃったんだね」
「俺は元からすごかったぜ?」
「はは。そうだったね。ボクにとっては昔からキミはずっとずっとすごくて、キミはボクの憧れなんだ」
俺が茶化して言った言葉を否定せずに乗っかってくるから俺は頬がひきつる。
「メトさんから解呪師をボクを専属に指名したって聞いたけど、ボクよりもっと良い解呪師がいるよ。ボクじゃ力不足だ。悔しいけど」
なんて説明したら良いだろうか。
お前の中に女神様が降臨していて、ルミナの解呪能力を大幅に上昇させることができるって言うのはどうもな……。
「カムイにかけられた『悪い呪い』について話があるの。ボクが『悪い呪い』をかけた術者をアーレム王国から連行してきたよ。これで解呪もずっと早くなる」
「えっ。…………?」
「だーかーらー。白魔術協会が『天罰術式』とか言ってる呪いをキミにかけた術者を捕まえてきたんだよ」
「え……? よくそんなことができたな」
「これでもけっこう頑張ったんだからね」
ぷいっとそっぽを向くルミナ。
「あ……ああ、すごいな、テスタバーグ家って」
ちょっと言葉選び間違えたな。これは家の力だけでなく、ルミナ個人がすごくよくやってくれたことだ。
そんな言葉でもルミナはすぐに、にこっと微笑んでくれる。
「ありがとうルミナ。すごくありがたいよ。そうそうありえないことって意味で、有難い」
「ふふふっ。どういたしまして」
俺に礼を言われことの喜びを表面に出さないように隠そうとしている感じがルミナからはした。
宴会はみんなで楽しんで終わった。
その後。
俺たちは首都マロマに戻る。
首都に向かうために馬が足りないらしくラタトスクグリフォンは荷車を引く役割を得た。
馬鹿にできない額の給金をラタトスクは稼ぐことになった。
荷台の中。
この世界には飴というものも無く、飴を作って遊んでるカムイ。
乗っている他の面々は疲れて寝ている。
起きているのは俺とメトだけだ。
俺はあるいたずら心を思いつき。
黒腕の部位は自由に操作できる。
指の部分を飴にする。
人差し指が根元から黄金色の飴になった。
「あーん」
してやると、メトはちろちろと指を舐め始める。
「んん……」
ちゅぱ、ちゅ、と艶かしい音を立てて俺の指の飴を舐めるメト。
エロい。
「味……どう?」
「美味しいです……ん……こんなに甘い飴初めてです……とろけちゃうそう……」
可愛いささやき声で飴の感想を言うメト。
ほほう、そうかそうか。
このプレイ、ぞくぞくする。
根元まで咥えて舐めとるとメトは、
「えへ。甘美な味でとっても美味しかったですー。ご主人様の」
と微笑む。他意はないのだろうが言葉選びがエロス。
しかし御者代からこちらを見る視線があった。
ルミナが垂れ幕の切れ間から顔を微妙な表情にしてこちらに覗かせていた。
「カムイ……キミって……」
俺は誰も見ていないと思っていたので肩が跳ね上がるほどびびった。
「ぴょおおおっ」
変な声も出た。
そうだ。ルミナがラタトスクを珍しがって御者台で見ていたんだった。
◇
俺はSランクモンスターの力を吸収して第九階位魔法と位置づけられる魔法を使えるようになった。
その一つが前人未到の第九階位黒魔法、《シーンヴァルツブレイク》
それは瞬間移動の魔法だ。
この世界では瞬間移動魔法はものすごく難易度が高い。
アルファンデルでさえ聞いたところによるとエルファ領内部限定で、さらに魔術的な中継地点をつくる必要があるとか。
だからアルファンデルが使えるのは同じ瞬間移動でも第八階位魔法になる。
その点俺の瞬間移動は移動距離や場所に条件や制限はない。
どこでも行き放題だ。
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