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アラン・テスタバーグ

 

 収納アイテムに入れていたつまみを取り出してお酒を楽しんでいるとアランとナーディがやってきた。


「やぁカムイ君。アルファンデル様。カムイ君は久しぶりだねぇ本当に大きくなった」


 やや顔色が悪いがアランは俺たちを見て穏やかな微笑みを浮かべた。

 アラン、俺のこと覚えてたんだな。

 ナーディはじろりと酒を楽しそうに飲んでいる俺とアルファンデルを見た。

 俺はナーディを説得するセリフを言う。


「アルファンデル様のことは許してあげてください。例の第七階位魔法を使えばアルファンデル様はこれが最後の晩になるんですから」


 ナーディは俺を驚いた顔で見る。

 まぁその魔法を使わせずに俺が飛龍を倒してみせるつもりではあるが。


「……分かった。いいでしょう。酒盛りは不問にします」


「ばーーか。おまえなんか嫌いじゃー! おしりぺんペーん」


 アルファンデルが俺の言葉に便乗し、小さなお尻をナーディに向けて叩く。

 ナーディが(ほお)をぴくぴくさせたまま何も言わないので俺はアランに話を振る。


「俺が名前変えたのメイナードさんかナーディさんに聞いたんですか?」


「いいや、ルミナに聞いたよ……いいかな?」


 そう言ってアランは俺の頭を撫でた。


「はは……もう小さくないんですから……」


 一体ルミナはどういう風に俺のことを言ったんだろうか。


「カムイくん。酒盛りは良いが、アランさんはこれから仮眠を取るのであまり時間をとらせないでくれ。アランさんは四日も寝てないんです。寝ないで明日の戦いに支障が出るようなことがあってはならない」


 と、ナーディ。


「あっはい。どれくらい寝れるんですか?」

「二時間半だ」


 さらっと言うナーディ。

 アランは働きづめでさらにスケジュールに超厳しい鬼秘書付きか。ぞっとするなー。


 アランはすごいねぇ。領主としてもうその両肩に乗りすぎるほど責任が乗っていることだろう。


 ちゃんと眠れるんだろうか?

 できるだけ安らかな眠りについて欲しい。


「アランアランっ。お主も酒に付き合うがよい」


 えっ……この子アランが四徹してるって聞いてなかったの?


 そういうとこが人望がない理由ですよアルファンデル様。


「はい。分かりましたアルファンデル様」と、アラン。


「良いんかい」俺は聞こえないように小声で呟いた。


 俺の右どなりによっこいしょ。とアランが座る。

 うわぁ。さらにナーディさんの目つきが鋭くなったよ。

 無邪気に喜ぶアルファンデル。


「はぁ……私は行きますが。いいですねちゃんと寝てくださいよアランさん。すまないカムイくん。アルファンデル様は頼りにならない。アランさんは早めに切り上げさせてくれ」


「分かってます」


「ナーディ、俺は分かってるよ。カムイも気に病まないでくれ。俺は体力が取り柄だから」


 アランが冗談めかして言う。ナーディは去っていった。


「ルミナからだいたいのあらましは聞かせてもらったよ」


 親子だけあって目がルミナに似ている。そして若々しい。


「あーはい。いろいろありました。まぁ一献」


 アランにチューハイを渡す。


 さぁあんたもそのストロ〇グ・ゼロを生まれて初めて飲むがいい。美味いと言うがいい。そしてハマるがいい。

 俺はにやにやする。


 アルファンデルもにやにやと様子を見ている。

 彼女のにやにやは初めての炭酸にびっくりして吹きこぼして欲しいにやにやだ。


 しかしアランは口をつけず真面目な目で俺に提案をしてきた。


「カムイ君。テスタバーグ家の養子にならないか?」


 養子……。


「娘のわがままでそんなことしてもいいんですか?」


 テスタバーグ家の養子になるということは大貴族の位を与えるということだぞ。


「いや、アーレム王国や君の家族に追放されて本当に辛い思いをしてきた君のことを放ってはおけない。君のことは幼いころから知ってる。ルミナが言うまでもなく私も君を家族として迎えたいんだ」


 穏やかで真剣な眼差しだ。

 冬の空の光のような。


 ええー……。

 急に私が君のパパですって言われてもなぁ……。

 親が再婚した子どもの気持ちもこんな感じではなかろうか。


「妻クラウディアも賛成している。もし私が明日の戦いで命を落とすことがあってもテスタバーグ家は君を迎えられるから安心してね」


「そうですか……ありがたい話ですが、急な話でどう受け入れたらいいか、正直分かりません」


「急な話だよね。すまない。とりあえず私達のことを知ってもらうためにこの戦いが終わったら一度首都まで来てくれないか?」


 そうですか……。俺にかけられた呪いを解かないといけないからどのみちルミナにはもう一度会う必要があるんだが……。


「わらわは良いと思うぞ」


 アルファンデルが話に入ってきた。


「エルファは良いところだぞ。お主はいいやつだしテスタバーグ家のやつらにも町民にきっと気に入られる」


「アルファンデル様……しかし僕なんかが……」


「わらわは町長みたいなものだからな。文句を言うやつがいたらわらわに言うとよい。そいつをぶっとばしてやる」


 なんだか現実感のない話だ。


「条件というかお願いというか、自分の連れで俺と同じで身寄りのない子がいるんです。メトと言う子なんですが。彼女も俺と同じように養子にしてくれないですか?」


「その子の話もルミナから聞いているよ。ああ。メトという子もテスタバーグ家の養子にするとも」


 うーん。ならばこれで俺もメトも一生喰いっぱぐれないのではないだろうか。


 なんか話が美味(うま)すぎて死亡フラグみたいだな……。俺かアランどっちかの。


「こんな話を急にしてしまってすまない。私が生きているうちに伝えておきたかったから」


 だから死亡フラグ立ててるって……。


 結局アランは酒を飲まなかった。

 決戦前に酒を飲まない分別だろう。

 チューハイを領主公認にしたかったのに残念だ。

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