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ワイバーンを覆う結界魔法

 

 テントの中を見渡すと魔術師と一目で分かる人達が集まっていた。

 だいたいが地面の上の絨毯に腰を下ろしたり、椅子に座って休息をとっている。


 だいたいみんな俺より年上だったが、俺と同い年ぐらいの少年が魔法陣を展開させていた。

 座っているので長い時間かけた魔法だろう。


 ワイバーンは今、青色の半透明の結界に閉じ込められている。

 大きな結界だ。展開時間も長く、あのクラスの魔物を封じ込められる結界は相当な術者の仕業だろう。


 近づく前からこの少年があのワイバーンを閉じ込めている結界の発動に関係している魔法を発動中だと分かった。


 しかし汗だくで結界の維持でてんてこ舞いって感じだ。

 こちらもかなり気になる。


 でも、工事作業員の人命もかかっているしお金が発生する依頼なので俺は後ろ髪引かれる思いでそこを後にした。


 グリフォンには解呪の里に行ってメトを連れてきてもらうことにした。


 メトの分も日当をもらおう。


 俺は誰が魔法を発動したのかを隠しつつ、土砂や、木材を黙々と撤去していった。


 第五階位の土魔法で新たに川の支流を作ったりして、現場は大きく歓声を上げる。


 日が暮れた。

 俺は休憩の交代を言い渡された。


 魔術師のテントに戻ってくる。

 みんな疲労困憊の様子だった。

 人命救助は終わったが俺はまだまだ平気なので作業に戻ろうとして、さっきナーディに貰った布を腕にまいている人、つまり同じ班の魔術師に戻る旨を言った。


「いや、これから討伐作戦についての作戦会議があるそうだ。それを聞いていけ」


 そういうことで少々時間が出来た。

 俺は三時間ほど前にちらっと見かけた結界を作っている少年魔術師のところに向かった。


 まだ彼がやってる。

 てっきり誰かが交代しているものだと思ったけど。


 魔法陣を隠す余裕もなくなったみたいでおおっぴらに展開してくれているので魔法式をすぐに解析できる。


 これはどうやら複数人で発動する魔法のようだ。


 他にも別の場所で結界魔法を発動している人がいて、全員が魔力を流し込んでいるけど、この人が一番魔力を流しているし、全体の手網を抑える役割もしている。


 うわっ……今外の結界たぶんめちゃくちゃたわんだぞ。

 少年もぎょっとして綻びた魔法式を再構成する。


 ぶつぶつ弱音を吐いている。


「ちくしょう……結界班リーダーになっちゃったし……なんだよあの魔物の強さ……ありえねーだろ。魔力が足りない。もう三時間も持たねーよ結界……どうすんだ……」


 そこにメイナードが近づいてきた。

 びくーんと少年の肩が跳ねる。


「レムリー。どうだ? 結界はいつまで持つ? 明日の朝まで持たせられそうか?」


「ッス!! お疲れ様っス、メイナードさん。明日の朝までならなんとか ! はい!」


「そうか……! ありがとう」


 メイナードは仕事が終わるかもしれない光明を見出したような三徹してるサラリーマンのような喜んだ顔をした。


 忙しそうなメイナードはすぐにその場を去る。


 少年は地面に崩れ落ちる。声を押し殺して叫ぶ。


「うわぁぁぁぁぁ………! 無理だ無理だ無理だあぁぁぁぁ………!!」


 すぐ近くにいる俺が目に入らないぐらい追い詰められているのだろう。人目をはばからずうめき声を漏らしている。


「すいません……無理です……無理なんです……早く訂正しなきゃ。訂正しないとなんですけどぉぉぉぉ……ぐ、く、かき……き……」


 体を掻きむしり身悶えするレムリー。

 少々して俺と目が合った。

 そして観念するように話しかけてきた。


「………君悪いけどメイナードさんに結界はあと持って三時間だと僕の代わりに伝えてくれないか……?」


 亡霊のような力のなさで俺に頼む。


 俺は神級ポーションを取り出した。


「ほら。ポーションだ……飲むといい」


「ありがとう……でも魔力回復ポーションはもう飲んでるんだ……上級ポーションでもない限り……」


「まぁまぁダメもとで。これかなり良いポーションなんだよ」


 レムリーがポーションをごくりと3分の1ひど飲んで少し経って、すぐに効果が本人から申告される。


「すごい! なんだこの回復量! こんなポーション首都の最高ランクのポーションじゃないか!?」


「1本で2時間ぐらい回復は持続するよ。明日の朝まで効果が持続する分は持ってるけど……明日の朝まで持ちそう?」


「ああ! これならいけますよ! た、助かった! あなた最高! マジ感謝! マジ感謝ぁ!」


「良かった。あ、このポーション一本20万トルクで経費としてエルファ領に請求したいんだけどこのポーションがいかに優れた性能だったかを君からも言ってくれないか?」


「もちろんです!! 全力でプレゼンしますよ! 本当に助かりました。ありがとう……! 必ずこの恩は返します。何もかも君がポーションをくれたおかげだ」


 レムリーは深海から浮上した潜水艦の乗組員が1ヶ月ぶりに陽光を浴びたような顔をした。


 ポーションを6本渡しレムリーを集中させるためにその場から離れた。


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