表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/47

アルジェント白魔法学院、廃校寸前(後編)

 

 アルジェント白魔法学院に大規模な監査が入った。

 彼らが行い、隠蔽してきた犯罪が明るみに出された。


 それにより、アーレム王国の少なくない貴族が犯罪を犯していたことが国民の全てが認識することとなった。


 当然貴族たちがその罪状を全て揉み消そうとしたが、エルファ領の強力な軍事力により揉み消しを防ぐことに成功する。


 ルミナは心の底から湧き上がってくる感情に従った。

 ルミナにとって相手のことを一切考えない残酷な行為を楽しいと思えるほどの憎しみに駆られたのは人生で初めてのことだった。


 しかしルミナはアーレム王国で白魔法使いたちの重税に苦しまされてきた者たちにとって正義の執行者だ。

 虐げられて来た者達は救済された。


 当然悪人にとっては残酷な裁定者だ。

 ルミナの政治的な行為はアーレム王国の悪人を焼き尽くすまで続けられるかと思われた。


 アーレム国王はなんの口答えもできず、ルミナの挙げたリストの者たちに法の裁きを受けさせるのだった。


 セナンは貴族位と財産を没収。

 パウルス、クリスティーナ、レオノーラ、エドモン、トロイは貴族位の没収。


 彼らが将来稼ぐ給料から九割が謎名義の口座に自動で振り込まれることとなった。


 口座の名義はカムイ・テスタバーグ。


 トロイたちがこれでカムイの後ろ盾にテスタバーグ家がついていることに気がついたが、どうすることもできない。


 しかしカムイはその金をアーレム王国の使役物や平民などに配ることを後に選ぶ。

 しかし、それを当のトロイたちに伝えない。

 トロイたちはカムイの懐に入ると思い込んで毎日働くことになる。

 そんな惨めな人生を元クラスメイトたちに送らせるというのもカムイの復讐心から来る行為だった。


 その他アルジェント白魔法学院が受けていた様々な恩恵や優遇制度の廃止する。


 カムイに天罰術式をかけた魔術師もがくがくぶるぶる震えながら判決を待った。

 ルミナはカムイの天罰術式を解かせるためにエルファ領にまで魔術師を連行させた。


 アルジェント白魔法学院の凋落。

 悪評が広まりまくり、入学希望者は一気に減った。

 現在の勇者に対する不信感も国民に芽生えた。


 ダヴィドは元々特に暴力的で、平民は勇者候補で貴族でアルジェントの生徒という特権に泣き寝入りするしかなかったが、テスタバーグ家の介入により、特権が失われつつある今前と同じようにはいなない。

 ダヴィドは以前と同じように平民に暴力を振るい、当然暴行罪で投獄される。


 アルジェントの生徒は以前のような地位に自分たちがいないことを理解する。

 平民に貴族や白魔術師を崇めることを強制する法律が撤廃されてから、平民はトロイたちを崇めなくなった。

 それどころか尊敬を強要されていた反動で冷たくなった。


 トロイはカムイの幻影に苦しまされ、正しいとされることの入れ替わりに苦しむ。


 アーレム王国はジェニーとマルクをキュナイカが殺したということを認めた。

 キュナイカの屋敷を初め、沢山持っていた使役物は全て剥奪。

 魔法教員資格も剥奪となった。


 キュナイカは家財の全てが押収されるのを見ながら、カムイが嘲笑っている幻覚を見る。

 俺は貴族なんだ!! お前ら愚民とは違う!! と牢の中で喚く。


 しかしこの時点でカムイは何も知らなかったのだが。


 そしてキュナイカによって苦渋を舐めさせられていた何百人もの使役物が解放される。


 監獄から強制労働所にキュナイカは移動となった。

 強制労働の過酷さとカムイや他に迫害した者たちの復讐に怯え、髪の毛が全部抜ける。

 すっかり全盛期の威張り散らした態度が消え恐怖に縮こまる老人のようになった。

 油のないパサパサとした飯をこれから死ぬまで食べることとなるとキュナイカはそこでようやく悟った。


  ◇


 ルミナはたくさんの人間を地獄に突き落とした。

 今までのルミナの人生では決して考えられなかった行動だ。

 無数の怨嗟の声を彼らはあげていることだろう。


「しょうがないよね。ボクの幼なじみを酷い目に合わせたんだから」


 深愛の情をカムイに向ける少女は笑みを浮かべながら熱い吐息を漏らす。


「……これでボクも君と同じだねカムイ」


 同じ復讐者になった。

 良心が苛まれるのか吐き気が込み上げるが、それすら心地よい。


 ルミナはややあって鈴を転がすように短く笑う。

 愛する人と同じ十字架を背負った。同じ苦しみと痛みを分かち合えたことがどうしようもなく嬉しい。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ