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女神様の甘やかしに感謝

 

 メトには宿屋をとってもらうために行ってもらった。

 俺の方は苦しげなルミナに効果があるかわからないが回復魔法をかけて空き病室まで運んだ。


 おかげで苦しそうな中にもルミナは時々安らかな寝顔を浮かべることもあった。

 また俺の記憶の何のシーンを見ているのか、うわ言で「あっ……そんな。お風呂中なんだ!? ごめんごめん! ……………男の子のあそこってこうなって……昔見た時と違う……わ、わぁ……!」

 などと顔を赤らめることがあった。


 「……プライバシーの侵害だ……」


 何見てんだよォッ‼


 とはいえ当分目は覚まさないだろう。

 ベッドに寝かせて部屋を後にしようとする。

 ドアに手を掛けようとするとドアノブが急に溶ける。

 そこにドアがあったはずなのにみるみるうちに壁がドアを侵食していくようにドアが壁に変化していく。

 ドアが消えた。壁しかなくなってしまった。


 部屋が急に暗くなった。

 ここが異界化したことを察知する。

 なんの前触れもなく瞬く間にここは通常の世界のルールが働かない空間になった。何者かが元の世界と俺を分断したのだった。


(あれ……これやばくね?)


 病室の窓も外が薄暗く、先程まであった森の景色が広がっていない。

 黄昏時(たそがれどき)の空のみがそこには映されていた。


 窓の外に気を取られていたが、あるものに気づく。

 さっきベッドに寝かせた、当分起き上がるはずのない少女が身体を起こしている。


 さっき俺は彼女のポニーテールを下ろしていた。

 うなだれていて前髪が目を隠し表情が伺えない。

 それはルミナではないと直感で思った。


 この世のものならざるものの感覚がした。


 それは顔をあげてこっちの方を見た。

 それの目は白い部分が黒くなっていて、瞳の色が夕方の月の赤色になっていた。

 しかしその皆既月食(かいきげっしょく)みたいな目に覚えがあった。


 目が合うとそれは朗らかに微笑(ほほえ)んだ。


 「わたしわたし。女神ですよ。久しぶりっ」


 気安く話しかけてくるのはかつてこの世界に俺を飛ばした女神だった。


 「あんたか……」


 少なくとも敵ではなくてほっとする。


 「来ちゃいました。2ヶ月と12日ぶりくらいですね。この子の身体を借りちゃってます」


 可愛らしく小首を傾げてえへ。と話す女神。


 「ああ。久しぶりですね。急に来られるし登場の仕方的に驚きましたよ。なるほど。先程ルミナの魔法の発動に魔力を貸したのはあなただったんですね」


 面白そうだったら来る。かつて女神は俺をこの世界に送った時そう言っていた。


 「ええ。こうして誰かに取り憑いたり、世界から見えないようなわたしの異界を創らないとこの世界に顕現するのは難しいのですよ」


 「へぇ。そうなんですね」


 「ところでカムイ。何か困っていることがあるでしょう? 女神様に相談して見てはどうですか?」


 女神は俺に優しく語りかけた。


 「はぁ。ありがとうございます。そうですねぇ。天罰術式なんですがこのままでは完全解呪に十年もかかるらしいんですよ。それが困っていることなんですが……」


 「まっかせっなさーい。私がルミナの解呪の能力をあなたように大幅に引き上げます。そうすることでカムイにかかっている天罰術式は3週間という短さで解呪できるわ」


 「本当ですか? ありがとうございます。助かります!」


 「もっと。もっとなんでも言ってください。カムイの要望は出来うる限り応えたいと思ってますから。ここでセーブするというのはどうですか?

 もしこれからあなたがこの先でやり直したいと思った時この地点からリスタートできますよ」


 「女神様ってなんでもできちゃうんですね。ではお願いしてもいいですか?」


 それは魔法なのだろうか?


 「何から何まで。本当に助かります女神様。おかげであれからなかなか楽しくやらせてもらってます」


 「ええ。報酬と言ってはなんですが私はカムイの一連の活躍を見させてもらいました。とっても胸が踊って胸がすきましたよ」


 女神は両腕を広げた。

 俺のためにハグをしようとしていた。

 抱きしめられ、その柔らかな胸に顔が当たった。


 「でも楽しいことばかりではなかったでしょう? 苦しい思いもたくさんあったでしょう」


 「ふふっ……よしよしでもしてくれるんですか?」


 抱きしめられながら俺は笑ってそう言う。


 「よしよし。今まで本当によく頑張ってましたね。辛かったですよね」


 「……うん。実は辛いことがたくさんあったけど頑張ったんですよ。……俺って偉いですか?」


 「カムイはとっても偉い子です。こんなに戦える強い子で、そして優しい子です」


 女神はそれからバブみを感じることができるあやし方をしてくれた。

 誰も見ていないことをいいことに俺は甘えた。


 女神様に弱音や愚痴を吐いたが理解してくれたし、ちゃんと聴いてくれた。

 またちょっと昔を思い出して女神様の(ルミナの)胸で泣いた。


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