魔術師の雑誌
換金はすんだため荷台は必要なくなったので、荷台も売った。
首都マロマから移動。ここは栄えている港町だがメインの目的地ではない。
港町から内陸に進んで行った場所にある解呪の里という場所に俺は用がある。
正確にはそこにいる、解呪師と呼ばれる魔術を解法する専門の魔術師に。
カムイとメトはラタトスク・グリフォンの背に乗って空を駆けた。
ラタトスクがテイムする時に闘ったが、最高速を出してきたのは急降下の時の攻撃時だった。でも普通に飛ぶのも充分速い。
上空から見渡す景色は緑豊かな平原が続く。
空は澄み渡った蒼穹になっていた。
すごく青の空が綺麗で、アーレムで見ていた空は偽物の空だったのではと思うくらい、晴天が美しかった。
快適だ。この平原でラタトスクよりも強い魔物はいない。
カムイもメトも空の旅を楽しんだ。
里に目立たないように降り立つ。
カムイの手配書が騎士団詰所の前に貼ってあった。
冊子を見るといつもの白魔術師を賛美する記事が8割くらい占めているが、犯罪者のところの記事にカムイのことが載っていた。
賞金首になっていた。
賞金は350万トルク。
牢獄生活にうんざりした顔のガキといった風情の似顔絵だ。
だが他の手配書の人相の悪い顔と比べると飛び抜けて格好いい。実際のカムイのともすれば少女のような整った造形を再現できている方だ。
カムイがたぶん転生ボーナスの一つだと思ってるこのイケメンの顔だが絵の方はちょっとげっそりしている。
「囚人生活で痩せてるな俺」
「飢えは本当にキツイですよね……メトも良く分かります。あとなんだが目つきも悪く描かれちゃってますね」
「こんなに悪くないよね俺の目つき」
「悪人みたいな目つきをしているご主人様も素敵ですよ。悪魔の森のご主人様なんかそれはもうとっても悪くて良かったです」
ふふ。と絵を見て笑うメト。
騎士団詰所に置いてある一つの冊子を手に取り二人で読む。体が近いのでメトの髪が良い匂いがする。
カムイは冊子の魔術師ランキングは見るのをやめて有名賞金首ランキングが特集されているコーナーを開いた。
今月も1位~3位は不動だ。
魔術師ランキングと違って、賞金首ランキングは死んだり、捕まったりして4位から下が次々に消えていく。
そんな中での1位から3位はこの10年間入れ替わっていない。
普通の学生だったころのカムイならそんなことは思わなかっただろうが、犯罪者として追われる身になった今いっこうに捕まる気配がなく、幾人もの追っ手を退け続けるランキング上位にちょっと憧れを抱く。
「あっあっ! ご主人様! ご主人様が特集されてます!」
メトが敬愛するカムイを見つけた興奮で声が弾む。
《闇の力を手に入れた白魔術学院生徒、ロイド・ベルマン》
という見出しだ。
『栄光あるアルジェント白魔術学院の元131回生ロイド・ベルマンのエリート街道からの転落劇は王都に住む者にとってセンセーショナルな出来事だった。
先日号外でロイドは首都のビゼンハイム監獄からの脱獄により200万トルクの賞金がかけられたことをお伝えした。
今回さらなるニュースが我ら犯罪部の部署に飛び込んできた。
ロイドは悪魔の森にて、アルジェント白魔術学院の教師を含めた白魔術師7名に傷害と殺人未遂を加えた。
白魔術師たちは重傷者が二名出ており、全員が強い精神的ショックを受けていた。』
重傷者二名? キュナイカは分かるがあと一名って誰だ? 帰り道で怪我したのか? それ俺のせいじゃねえだろ。
『ロイドは黒魔術を使う模様。事態を重く見たアーレム王国はロイドにかけられた200万トルクより350万トルクに引き上げた。
ただの少年と侮ってはいけない。
ビゼンハイム牢獄から脱獄者でロイドは最年少だ。
実際にロイドと接触した生徒の証言から推測するに少なくともA級冒険者の戦力を有していると思われる。
B+モンスターのペーリィコージャを倒したあと、あのキュナイカ・ボイゴモスと一体一で闘いたてつづけに勝利している。
“少なくとも“A級冒険者相当という見立てなのでそれ以上の力を持っている可能性がある。
整った顔だちと幼さに惑わされないこと。
ロイド・ベルマンを捕縛する際は騎士及び賞金首ハンターは少数で事に当たることをせず、たった一人の子供にと恥じることなく大人数を集めることを強く勧める。』
おっ。キュナイカの実名は出してる。まだ小さい記事なので読み込まないと気が付かないが、アーレム王国の検閲に負けず、犯罪部の記者は頑張っているようだ。
キュナイカは先月号まで王国の実力派魔術師として冊子の最初の方にたくさんのページを割いて華々しい記事が描かれていた。だが今月は記事がだいぶ小さくなっている。インタビューもない。
14歳の少年魔術師に一体一の戦闘で敗北したことで株を大きく落としたのだろう。
うーん。これは藤井聡太。張本智和。
おこがましいけど。
元同級生の面々もその魔術師の冊子にはたくさん特集されている。
こんな新聞にまで特集される実力者に俺は勝っているのだ。
「とても格好いいですご主人様!」
きゃっきゃっと喜ぶメト。えへへと照れるカムイ。
メトはカムイの記事が欲しくて後日冊子を買い求めようと決めた。
いろいろと調べてみてそこまで人目を気にする必要はないということが分かった。
この世界では情報伝達が元の世界と比べてかなり遅いからだ。




