金策してから天罰魔法の解呪へ
三日が立ち、俺達は悪魔の森から出た。
平原を俺達はラタトスク・グリフォンに荷台を引かせて駆けている。
簡易的な物とはいえ屋根もつけたそれには高価な素材だけをたくさん積んでいる。
一体いくらになるか楽しみだ。
車輪が軽快に周りけっこうな速度で馬車ならぬグリフォン車は駆ける。
空は快晴だし、風がびゅうびゅう吹いてめちゃくちゃ気持ち良い。
自由になって初めての旅だ。
「いやーワクワクするなぁ」
「はい! とっても楽しいです! どんなところなんでしょう解呪の里って」
「治癒術師集まってるからな。あと温泉とかも入れるっぽいぜ」
俺がだかだかと走るラタトスクに骨付き肉を投げるとラタトスクはくちばしで器用にキャッチした。
「わぁ! すごいです!」
荷台で俺はやることもないのでメトと話がてらここでもできる魔力を練ったりする修行を行っていた。
メトにも魔法の修行をするように言ってある。
俺たちはお互いにものすごく話が噛み合う。
お互いを高められる存在だということが分かってきた。
あまりの話の噛み合いっぷりに思考はどんどん加速するし、記憶力や論理的な思考力、理解力も大幅に向上した。
無能と蔑まれていたころが嘘のようだった。
「風が気持ち良いですね。ご主人様!」
「だな」
悠人教のやつらはこの世界に転移している。
やつらは教祖の悠人を筆頭におそらくこの世界でも勢力を築き始めるだろう。
やつらに対抗するために俺の個人的な戦闘力以外の力をつける必要がある。
この世界での権力を握るための効率化。
そのためにエルファ領に行く。
エルファ領の領主と俺は知らない仲ではない。
知らない仲ではないのだがそれは俺に犯罪者の烙印が押される前の話だ。
どういったふうになるのかは会ってみないことには分からない。
だが今のところ領主に会うつもりはない。
道中の街にも寄りたかったが天罰術式のことを考えやめておいた。
俺は道中にアーレム王国の国家図書館から盗み出した禁書を読んだ。
禍々しい見た目をしているそれには黒魔術の禁魔法について多くが書かれている。
メトは初級の黒魔法の本で。俺は上級の黒魔法本で勉強。
エルファ領の首都マロマに到着した。
開けた海岸沿いの場所に着陸。
マロマは海沿いの街だ。
きっと新鮮な魚が食べられるだろう。
美しいのは海もそうで前世の日本の海辺しか見たことの無い俺はこの透き通ったエメラルドグリーンの海に魅了された。
あとで泳ごうと決めた。
水着は二人分作ってある。
さっそく素材等々を換金していった。
量が量だし、値がとても高い品が多いのでこれだけかなりの時間がかかる。
その上知識や交渉力がなければすぐに足元見られて買い叩かれる。
俺は天罰術式のことがあり、メトにも交渉をしてもらうことにした。
角はヘッドドレスで隠せたので魔族ということもバレない。
相場などの重要なところや肝心のところは俺がズバリと口を挟む。
そうすると商人は勝手にカムイを「この人物は一体……」と警戒し、買い叩こうとする手を引かせることに成功していく。
商品や市場に関する知識と、後ろに控えた大物感を出した動きで取引をスムーズに進めさせることができた。
かなりの金貨になった。
宿屋で金貨を二人でニヤニヤしながら数える。
金貨は一枚で一万トルク。
「……全部で2520枚!」
2520万トルク。
だいたい一円は1トルクってところだ。
良い汗かいたー!
二人で交渉して換金して行ったので二人とも爽やかな達成感があった。
俺が持ってる充魔石は相当良いものなので売れば1800万トルクはするだろうが売らない。
なぜ充魔石がこんなに高いのかというとこの世界には純粋な魔力回復方法がかなり限られているからだ。
この世界のポーションは飲めば魔力が回復するものではなく、魔力の自動回復速度を早める効果しかないのだ。
実は俺は魔力ポーション作りにも取り組んでいた。
お酒作りはその副産物だ。
神級魔力ポーション5本、上級魔力ポーション10本と中級魔力ポーション5本、下級魔力ポーション10本備蓄できている。
これも売れば上級ポーションは1本10万トルクはするだろうが実用目的だから売らない。
神級ポーションは市場にないため正確な値は分からない。
さて依頼料金を払って余るまで稼いだ。次は首都から解呪の里へ移動だ。




