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勝利の宴会

 

 焚き火を囲んでの宴会。

 二人はお互いに自己紹介をした。

 俺は今までの自分の経緯をメトに語った。


「というわけなんだ。学院でお互い見かけてはいるけど。こうして話すのは初めてになるよな。よろしくな」


「はっはい! こちらこそ不束者ですがよろしくお願い致します! これからご主人様に尽くさせていただきます!」


 メトは三つ指ついて深々と頭を下げた。

 へりくだられることに慣れていない俺は少々ざわざわした。


「グア」


 と鳴くのはラタトスク・グリフォンというB+モンスターだ。

 二階建ての馬車ぐらいの大きさはある。

 このモンスターは俺が従えたのでこちらに襲ってはこない。


「顔を上げてくれよ。それで君のことを教えてくれよ」


「私の名前はメト・ラーマヤーナと言います。14になります」


 白い髪の少女は俺に促されて頭を上げ自己紹介をした。

 またははーっと土下座をした。

 

「メトは魔族です。それがなぜアーレム王国に居るのかというとメトは10の時に誘拐されてしまい気がついたら使役物になっていました。セナン様……いえ、セナンの元で」


 魔族の国はあるが、現在は魔族の国と人族の国、特にアーレム王国との関係は良くない。

 今までとてつもない差別に晒されてきたのだろう。


「……良く今まで生きてきたよ。頑張ったな」


 俺は何を言ったら良いのか分からずそう言った。


「……ご主人様に比べたらメトなんか。両腕を切り落とされたことをはじめ、その仕打ちはあまりにもひどいものばかりです。どんな仕打ちを受けても全てを投げ出さないご主人様はなによりチャーミングです」


「メトこそあのセナンの契約内容はほんの一端だったみたいだな。君はとてつもない仕打ちを日々受けていて、

 なお精神を壊していない。すごく精神がタフだよ」


 俺たちはお互いに褒め合い謙遜しあった。

 俺は褒められ慣れてないので大いに照れてしまったがメトもそうらしく、俺に劣らないくらい照れていた。

 流石っすね! あなたこそ! 的な会話をずっと続けていたい。


 続きは飯を食べながら話すことにした。

 俺に許可を出され、ラタトスクグリフォンが猪にかぶりついた。


 俺とメトも豪華な料理に食らいつく。

 うん。とてもジューシー。

 お酒もとても進んだし、宴は非常に楽しいものとなった。


 山の幸の最上級品をてんこ盛りにしたような食事を二人で独占しているのだ。

 例えば下界の最高級料亭でも用意できない食材を取り揃えている。


 で、お酒が美味い。


「こんな美味しい食べ物食べたことがありません」


 幸せそうな顔で舌づつみをうつメト。メシの顔をしている。


「だろぉ~~?」


 お酒が回ってきて頭がくるくるはっぴー状態になってきた。

 ちなみにアーレム王国ではお酒の年齢制限という概念がない。江戸時代までは日本でもそうだったらしいし、さすがに近代以前の価値観といったところだろうか。


 お酒を飲みなれていないメトはちびちびと呑んでいたがやがて顔が真っ赤になって、口元はしまりのないものになった。


「あ゛~はぁ~~これはいいものですね~~」


「だろ~~? 俺が作ったんだぜ~~?」


「ほんとですか? こんなもの作れるなんてご主人様ってば天才じゃないですかぁ!」


「いや俺が発明したわけじゃなくて、製造方法を知ってたから再現してみたわけよぉ」


「そうなんですかぁ。それでもすごいですよぉ。どんな作り方なんですか? メトとっても知りたいです」


 蒸留酒の作り方を説明するとメトは酔っ払っているのに俺のざっくばらんな説明でもかなり理解していた。

 頭は全然悪くない。魔族で使役物ということで無能扱いされていたが、環境さえ違えば普通に秀才だっただろう。

 顔もスタイルも悪くないし、あれ、セナンが悪魔の森に1人しか連れて来れない使役物の枠を彼女にしたことも考えると運動神経もいいのか。


 その点を彼女に伝える。


「やだ。そんな。まさかぁ。ふふっ」


 白い髪の美少女は身をくねくねして喜んだ。褒められ慣れてないやつはチョロいな。


「でね。単式蒸留はこの世界でもっともポピュラーな酒造方法っぽいけどこの透き通ったお酒の作り方はまだ誰も知らないっぽいんだよ。

 このクリアなお酒は元の穀物とかの風味がしないから、いろいろなものと合わせることができるんだよ。例えばこれ」


 俺はメトに梅酒を渡す。


「梅の味がしますね。このお酒はもしかしてメトが世界で二番目に飲んだということになるのでしょうか」


「ああ。そうだよ」


 わぉおお!! とオーバーに驚嘆するメト。

 果実酒は何種類も作っていた。世は連続式蒸留方法を誰も知らない。

 この技術を発展させればチューハイが作れる。

 ス〇ロングゼロも。

 世界は新たなお酒に夢中になるだろう。


「これで大儲けよ! わーっはっはっは!!」


「素晴らしい! 素晴らしいですっ! ご主人様ぁ!! ご主人様大金持ちじゃないですかぁ!!」


「乾杯しようぜぇ!」


 ガチィン!とグラスで乾杯し腕をお互いに回して、んぐっ。んぐっ。と一気飲みしていく。

 メトの白い喉が大量のお酒が飲まれる過程で伸縮する。

 二人とも変なテンションになっている。


「「ぷはぁ~~!!」」


 今日もいい天気☆


 お酒が進んでくるとお互いの復讐相手の恨み言を二人して呟くようになっていた。


「ちくしょう……あの野郎許せねぇ……っ! あのボケナス共がぁ……っ!」


「ひひ……メトが神様だったらあいつらを皆殺しにしますよ」


 一人一人への復讐方法を話して盛り上がった。

 俺がえげつない復讐方法を挙げると、メトは嬉しそうにしてたどたどしながら「へへ、いいですか? メト言っちゃっていいですか??」とばかりに調子に乗って彼女が長年温めてきた復讐方法を披露する。


 相当彼女もストレスを抱えていたみたいだ。


 笑い、踊り明かした。

 やはりストレスは適度に抜かなければ。

 アルコールは偉大だぜぇ~~っ。



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