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天使に紛れた悲哀の悪魔  作者: 堕天使ラビッツ
第2章 月光と悪夢
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満月の夜と黒い男


 今日も昨日に続き、満月が綺麗な夜だ。

 寝室のベランダから月を眺めながら、わたしはさっきまでの事を思い返していた。


 ――あれからわたしは初めて見る豪華な料理の数々、初めて飲んだ葡萄酒。


 世界にはこんな素敵なものがあったなんて知らなかった。暗闇にしか触れさせてもらえなかったわたしは、きっととても無知なのだろう。

 王子やイオ、ゼルはわたしの事を温かく受け入れてくれた。


 ――でも周りは違った。


 明らかにアンジュ国民ではない顔立ち、アンジュの言葉もカタコト。そんなわたしは周囲の好奇の的。

 普通じゃないってそんなにおかしいことなのかな。


 そんな事を考えていると、いつの間にか涙が流れていた。



「お前は一体何者だ」


 薄々感じていた嫌な気配。低くて冷たいその声とともに、いつの間にか現れた黒い影。

「……っ!!」

 その影の正体は、昼間噴水前にいたあの男だった。


「どうして……っ!」

 ここはお城の最上階、登って来れるるわけがない。なのにこの男、一体どこから……


「昼間見ただろう、俺は人を殺すための魔法を使える。気配を消して忍び寄る事なんて容易い」

「わたしを殺すつもり……なの?」


 男は冷たい目でわたしを睨みつけた。

「それは俺が決める事だ。質問に答えろ」

「はい……」

「お前、アンジュの人間じゃないな? どうして城に居る」

「わたしは小さい頃から小国の者に囚われていたの。ずっとそのまま死んでくんだって思ってたんだけどね。でも、ある事がきっかけで脱走する事を決めた。そんな時イオ……昼間貴方に話しかけた人が助けてくれて、王子もこんなわたしを温かく迎え入れてくれた」

「やはり何処の馬の骨か分からない女か」

「……そういう事です」



「どうしてわたしの元に?」

「見ない顔の奴がいれば警戒する」


 アンジュの国民全員の顔を覚えているの? そんな馬鹿な。


「お前には憎い奴がいるか?」

「ええ……。実親だけどね」


「目が合った時から感じていた。お前の負の感情」

「そんな訳……」

「俺は悪に手を染めた、だからこそ分かる」


 わたしに悪人の素質があるとでも言うの? きっと何かの冗談よね?


「わたしは魔法も使えない出来損ないよ? そんな物ものあるはずない!」

「――お前は必ず暗黒魔法に手を染める。……必ずな」


 そんな……

 わたしは召喚魔法を使う事はできないの? そしてわたしも父と同じように人を何の躊躇いもなく殺してしまうの?


「そんなの嫌……」

「魔力の種類は生まれつき決まっている。俺だってこんな呪われた身体など……!!」

「……ッ!!」


 体が一瞬で反応した。分かりたくないのに……気付いてしまった。


「お前なら今ので分かったはずだ。お前も俺と同類なんだとな」

「嫌……っ! そんなの……」

「次の満月にまた来る。その時にはお前の暗黒魔法を見せてくれ」


 そう言い残すと、彼は消えてしまった。 

 ――まるで嫌な夢でも見ていたかのように。



「いっ、嫌アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」



 彼が放った負の 感情。

 わたしが過去を思い出した時に度々訪れるあの動悸。


 ――多分……一緒なんだ。


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