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レノヴァ公国の事件と、最後の決着をつけます

いろいろやっててもうほんと投稿遅れて申し訳ないです!

本日書籍発売しました、また更新再開していきます!

 リンデさんと一緒にある程度の作業を終えると……南門と西門の方から立て続けに轟音が鳴り響いた!


「わーっ練習さぼってごめんなさい! ……って、あれ?」


 リンデさんが謎の言葉を発して頭を抱えるも、こちらの辺りには何も起こっていない。どうやら姉貴と、もう一つはユーリアのようだ。分かってはいたけど、姉貴はもちろんのこと、ユーリアもとてつもない魔法使いだな……。

 ところで。


「リンデさん、今の練習さぼってというのは、何なんですか?」


 リンデさんはびくっと驚くと、気まずそうに明後日の方を向いた。


「あ、あはは……マグダレーナさんに魔法を教わっていた時、私はいまひとつ魔法が出せなかったので再々さぼってたんですけど……あんなふうに追いかけてきて無表情でいきなりドッカンドッカン撃つんですよ……」

「あ、あの魔法を、撃ってくるんですか!?」

「はい……そして『リンデも魔法で対抗してみろ、すぐに使えるようになる』とか言うんです。怖いです」


 ……なるほど、怖い……。そりゃユーリアも、そんな人に魔法を教わっていたら青い顔をするわけだよ。まあ二人とも元々青いけどね。


「はは……しかしあの規模の魔法が見えたということは、姉貴とユーリアの二人がどちらもキマイラを倒したのだと思います。恐らく広場に戻ってくるでしょうから、僕たちも向かいましょう」

「そうですね! 本気の二人なら絶対負けませんよ!」


 きっと無傷で、キマイラの大群を全て倒していることだろう。僕とリンデさんは心配することなく広場へ意気揚々と歩き出した。


 ————リンデさんの背中を見ながら、一緒に集めたポケットの中のものを触る。

 ……やはり、今回の事件はそういうことだったんだろう。


 -


 広場には、姉貴が先に戻っていた。こっちと視線が合ったので、軽く手を振る。すると……視界の隅から手を振り返すユーリアが目に入ってきた。

 どうやら皆、ちょうど戻ってきたらしい。


 ……そういえば、騒動の中心となった人達は……?

 そう思っていると、城の方からレノヴァ公国の兵士二人が歩いてきた。


「ミア様、公爵様より関わった皆を連れて城の中に来るようにと伝言を預かりました。ご案内します」

「わかったわ、ライもそれでいいわよね」


 僕は姉貴に無言で頷くと、魔人族の皆ともアイコンタクトを取って頷いた。


 ……リヒャルト。

 僕はいくつかの要素から彼の行ったことを予想したけど、最後の最後に彼が行ったことについて、彼本人の口から聞きたい。

 皆も緊張した様子で、一言も会話することなく城門まで辿り着いた。


 城の中に入って、真っ先に通されたのは奥の、公爵と会っていた部屋だ。

 姉貴を筆頭に僕たち五人が入ると……そこに、リヒャルトもアンリエットもシモンヌも、更に知らない令嬢らしき人もいた。

 リヒャルトは落ち着いている様子だ。


 姉貴は開口一番、僕を見てこう言った。


「ライ、任せていい?」


 その言葉に何人かは驚いていたようだけど、公爵様は目が合うと頷いた。……これは、信頼されている、と見ていいんだよな。

 まず確認しなくてはいけないことがある。


「マクシミリアン様、差し出がましいようですが……僕とリヒャルトの二人で会話させていただけないでしょうか」

「ふむ……会話を聞くことはできるかね?」

「いえ、できれば二人きりでお願いしたいのです」


 僕の手を、リンデさんが少し強めに握る。僕はリンデさんを振り向いて「大丈夫です」と軽く笑った。

 しかし許可が下りるかどうかが問題だけど……。


「……ふーむ、それによって我々にどんな得があるというのだね?」

「そうですね、事件の全貌をもっと把握できる可能性が高くなります。それで、どうでしょうか」

「私の一存で決めてしまってもいいが、どうだろう」


 公爵様がヴィクトル様を見る。こういったときのご意見番だろう。

 彼の判断は————。


「そもそも、この状況に持ってきたのが彼なのです。自分としても、彼に全て任せてしまっていいのではないかと思いますね」

「だ、そうだ。私と同じ意見だな」


 ————よかった、会話できそうだ。結構頑張ったつもりではあったけど、思った以上に高い評価を得られていたようで安心した。

 このリヒャルトへの質問は謎解き以上に、僕自身の個人的な部分もある。どうしても二人きりで話がしたかった。


「場所は……そうだな、城の礼拝部屋なんてどうだ?」

「なるほど、懺悔ですか。わかりました。ライムント様、リヒャルト、二人はこちらへ。……くれぐれも暴れないようにな」

「大丈夫ですよ、彼は暴れないですから」


 僕がそう応えると、二人は少し驚きつつもリヒャルトの様子を見て納得したようだ。兵士とともに、ヴィクトル様が僕とリヒャルトを礼拝部屋に案内するため席を立った。


 ……城の中央は中庭があり、緑の一切ない土肌が一面に広がる。兵士の訓練に踏み固められたその中庭に、小さな礼拝堂があった。

 隣についてきていたヴィクトル様が説明を始める。


「レノヴァ公国は魔物の襲撃が多く、軍に力を入れていてね……。被害報告も少なくないため、ミア様がいない間も公国民を護れるように鍛えているのです。反面、教会などはご覧の通り、扱いは小さくてね……。しかし中は綺麗ですよ、どうぞお使いください」

「ありがとうございます」


 教会の扉が開くと、リヒャルトは無言で教会の中に入っていった。

 僕もついていこうとすると……ぐいっと後ろに引っ張られる!


「うわっ、……と、リンデさん?」


 リンデさんは真剣な顔つきで僕を見ていた。


「その……本当に、大丈夫なんですよね?」

「はい、僕とリヒャルトはリンデさんより長いですから、きっと大丈夫ですよ」

「……信じますからね。もしも大丈夫じゃなかった場合は……私も、どうなるかわかりませんから」


 リンデさんは……それだけ僕のことを大切に思ってくれているんだ。何度確認しても嬉しいし、同時に少し照れくさい。


「大丈夫ですって。それじゃ行ってきますね」


 僕はリンデさんに軽く手を振って、礼拝部屋へと入って行った。


 ————リンデさんに大して明確に嘘をついたのは、初めてかもしれない。


 大丈夫な保証は、ない。

 僕はリヒャルトがどういう変化をしているか全く把握していない。落ち着いた彼の様子からもう大丈夫だと思うけど……今からどうなるかは、分からないのだ。

 でも、大丈夫じゃないと想像するだけで、あんなに気にかけてくれるんだから……やっぱり、いい子だよな。


 後ろで、重く扉の閉まる音がする。

 リヒャルトがこちらを向いた。


 -


 小さい礼拝部屋とはいえ、さすが城の施設だけあってステンドグラスも立派だし、椅子や床も綺麗に磨かれている。

 日光の傾いた小さな礼拝部屋は、まるで一つの終わりを象徴するかのようだった。


 僕はリヒャルトに向けて、ポケットの中から石を……いや、魔石を取り出す。


「リヒャルト。この魔石に見覚えはもちろんあるよな」

「……ああ、もちろん。僕から説明してもいいけど、まずは君の推理を聞きたい」


 そうだな……確かにここで彼に話してもらうより、ほぼ確信に近いこのことを答え合わせしたいという気持ちもある。

 僕は鈍く光る魔石を掲げながら、事の顛末を話した。


「キマイラ。この魔物は数ある魔物の中でも特殊だ。なんといっても陸と空に現れる上に、単一の生物と思えないぐらい歪だ」

「……」

「リヒャルトは結構頭良かったからさ、錬金術に興味を持っていたのを思い出したんだよ。あれだけ入れ込んでいたのなら止めることはないだろうなって」


 キマイラを思い出す。そして、リンデさんとの会話を思い出す。


 ゴブリンはおいしくないらしい。

 オーガを食べた。オーガロードはおいしかった。オーガキングはもっとだ。

 ドラゴンステーキはやはり、とてもおいしいらしい。

 魔物は、上級であるほど上質な肉のように感じた。


 しかしキマイラに関しては、リンデさんは全く食べ物だと感じていないようだった。

 上級モンスターなのに、まるでゴブリン未満のような扱い。見た目は動物のそれであるというのに、そこが不思議だった。

 好みの問題もあるだろうけど、ゴブリンも食べたことあるであろうリンデさんが、あそこまで拒否するのも珍しい。

 だから思ったのだ。食べられないキマイラは、魔石を体の中に入れたこの生物は、そもそも()()()()()()のではないかって。


 僕は、核心に迫る。


「キマイラ、リヒャルトの錬金術による魔物なんだろう?」

「ああ、そうだ」


 僕が答えられることを分かっていたように、リヒャルトは即答した。


 ————そう、キマイラが発生したことを含めて、全てリヒャルトが仕組んでいた。

 これが今回の事件の全貌だ。

Twitterに宣伝動画を自分で作りましたので、見てくれるとうれしいです!

https://twitter.com/MasamiT/status/1080824374729404416

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