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勇者の村改め、魔族の村になりそうです

「あれは……ゴブリンか」


 村に帰る途中、遠くにこちらへ向かってくるゴブリンを見かけた。

 なんとなく口にして呟いた瞬間……もう首が飛んでいた。そうだった、リンデさんがいたんだった。

 こうやって間近で見ると、このペースでパトロールしているんだから、そりゃあ村も安全が保証されるわけだなーと思う。リンデ様々。

 そんなリンデさん、切ったと思ったらもう隣にいた。


「ほんとに速いですね、すごいなあ」

「えへん!」


 それにしても……ゴブリンも最近はいよいよ見なくなったなと思う。当たり前だ、リンデさんが言うにはこの辺には、リンデさんが討伐してくれるまでオーガロードが沢山いたというんだから。


 ……そう、オーガロードがいたはずだから……?


「姉貴」

「ん?」

「あのゴブリン、すぐかっさばいてくれない?」

「……いいわよ」


 僕が変に気にしたことを姉貴が感じ取ってくれて、リンデさんがゴブリンを仕留めた所へ向かっていった。

 そのゴブリンの腹にナイフが入る。


「ん? ……な、なんじゃこりゃー!」


 予感が当たった! 僕とリンデさんとレオンさんは顔を見合わせて、すぐに姉貴の元に向かう。




 ゴブリンの体は————空洞だった。




 いや、空洞というのは少し違う。中には魔力の光があった。それは……少しずつ輝きを失っていき、やがて消滅するぐらい小さくなった。


「あたしがナイフ入れた時点で血も出なかったし、これ変だなって思ったのよ……あれ? あ、ああっ!」


 姉貴が喋っている途中で、その光が消滅したと同時に……ゴブリンは体ごと完全に消滅した。


「あれ、この消え方……」

「間違いなく村に出た個体ですよね」

「レオン君もそう思うわよね」


 姉貴とレオンさんが確認し合うということは、間違いなさそうだ。そうか、これがその正体か……。

 ゴブリンがいるという時点で違和感があったのだ。最近リンデさんが一掃するまでこの辺り一帯にはオーガロードが沢山いた。特にあのオーガキングの能力を目の当たりにすると、とてもこんなゴブリンが生き残っているとは思えない。


「まるで分身とか、ゴーストね」

「……ゴースト?」

「そうそう。こんな感じで何も残らないのよね」


 ……ゴースト、か……。


「村に帰ってみましょう」

「そうね」


 もしもこれが襲撃なら村が心配だ……急いで戻ろう。

 再びみんなと目を合わせて頷いて、村まで走ることにした。


 -


 村は……特に変わりはなかった。


「至って平凡ですね」

「そですねー。まだこっちきてないのかな?」


 僕達は家まで戻ると……その理由も分かった。


「……クラーラさんですよね? あれ」


 僕の家の屋根の上に、特徴的な大きい角を持ったクラーラさんが立っていて、両腕を左右に伸ばしてじーっとしていた。


「ほんとだ、クラーラちゃんだ。何して……あっ!」


 クラーラさんの手……指? からだろうか、何か小さいものが撃ち出された。それは一瞬で飛んでいき、音もなく森の中に消えていった。


「『エネミーサーチ』……なるほど、そういうことですか」

「レオンくん?」

「クラーラさん、かなり遠くの敵を攻撃魔法で倒していますね。村からまだ相当離れた場所ですけど、観測して先制攻撃しているようです」


 あれが攻撃魔法……。


「レオンさん、あの魔法はどれぐらいの威力なんですか?」

「あれは……オーガロードは一撃で倒せない程度の、クラーラさんにしてはあまり強くない魔法だったと思います。速度と連射性、追尾性能に全てを入れているので威力の優先順位を下げている感じですかね」


 ……魔法の説明が、威力と全く一致していない気がするんですが……。


「つまり、今クラーラさんは……」

「あの魔法で、ずっとゴブリン倒していたと見て間違いないでしょう」


 僕とレオンさんが会話をしていると、クラーラさんがふわりと降りてきた。


「お疲れ様です、クラーラさん。あれで全部のようですね」

「……ん……。数も……大したことなかった……」


 話からして、レオンさんも索敵魔法で敵の様子を窺っていたんだろう。


「……もしかして、他のゴブリンって……」

「クラーラさんが全部倒してしまったようですね」


 ……リンデさんの時点で僕みたいなただの村人その一からは遠い世界だったけど、クラーラさんは、本当にとんでもないなと思う。

 リンデさんと二人で村から離れて買い物をしていたけど、これならどこへ行っても安心だ。


「それじゃあ、そんな働き者のクラーラさんのために、今度は僕が頑張らないといけませんね」

「……もしかして……!」

「はい、甘いものを今から作ろうと思います」


 それまでちょっと眠そうだった目が少し大きくなり、口を開けて笑顔の形になる。


「……たのしみ……です……」

「それはよかった、ゆっくり待っていてくださいね」

「……うん……!」


 かわいらしくにっこり笑うクラーラさん、こうやって見ると本当に普通の女の子って感じなんだよな……。


「さて…………ん、リンデさん?」

「むぅ〜っ! 私だってできるんですからね!」

「……対抗意識燃やしてます?」

「もえまくりです! ……あ、いや、挑むとかそんなんじゃないですよ、それは無理です、できません」


 リンデさん、クラーラさんに対して勢いをつけたと思ったらすぐに意気消沈してしまった。


「リンデさんには普段から頑張ってもらっていましたからね。それに、僕達クラーラさんのおかげでこうやって城下町で買い物できるわけですから、ちゃんと感謝しないと」

「あっ、そうか、そうですね! ありがとうクラーラちゃん!」


 ころりと態度を変えたリンデさんを、クラーラさんはじーっと見返して……


「……おたのしみ、でしたね……ダブルデート……」

「————ふえぇっ!?」

「……4人一部屋……朝帰りでも……よかったよ……?」


 な、な、何を急に言い出すんだクラーラさん!?

 僕達が慌てふためいているうちに、クラーラさんはくすりと笑うと、ひらひらと手を振ってテントの中へと入っていった……。


「……もしかして、喋るのが遅いだけで、結構頭の中は冗談とか話すことを考えている子なのかな……」

「いえ……あんなにお茶目なクラーラちゃん、見ないです……なんだろう、この村に来てから、結構陛下にも言うようになりましたし……」

「わかりにくいけど……楽しんでるんですかね?」

「ええ、きっと楽しいんだと思います。わかりにくいですけど」


 わかりにくいけど楽しんでいるクラーラさん、という表現がなんだかおかしくて、お互いに笑ってしまった。


「さて、それじゃ……もう昼になりますし、ちょっとリリーの様子でも見に行ってみますかね」

「はい! エファちゃんがちゃんとやれているか気になりますからね!」

「姉貴とレオンさんは」

「もちろん行くわ!」

「上手くいっているかどうか、気になりますからね」


 というわけで、4人で酒場に行くことになった。


 -


 酒場の扉を叩くと、しばらくしてどたどたと音が聞こえてきた。


「酒は夜になってからよ! ってライじゃない、みんな来てるのね」

「……その挨拶流行ってるの?」

「朝から飲みに来ようとするヤツが結構な数いるのよ……」


 ああ、なるほどね……開口一番そりゃそういう挨拶になるのもわかる。


「エファさんの様子を見に来たよ」

「はいはい、エファちゃんね。キッチンでの仕事はちょーっと難しいけど、怪我したら自分で回復しちゃうから見ててそんなに心配じゃないわよ」

「まあ、そうだろうね。エファさんは欠損も回復させることが出来るから」

「……マジ? いやあ凄い子なんだろうなとは思ってたけど、そこまですごいかー」


 僕が奥を見ると、エファさんが皿を並べたトレイを両手に持って歩いていた。あれは……運ぶ練習だろうか。


「……あっ、ライさんにリンデさんも、もう帰ってたんですね」

「様子が気になって。見た感じ大丈夫そうですね」

「ええ、こういったものを運ぶのは何も問題ないみたいです。火にかかった鍋も持って何も問題はないですし、服が燃えないように気をつける以外は全く」

「……そういえば、そうでしたね」


 忘れかけていたけど、魔人族は熱や毒といったものに対して完全な耐性がある。


「これもびっくりよね、ライは知ってたの?」

「一応ね。毒とか何も効果ないし、麻痺もしない。カイエンペッパーを何も感じないから、辛い料理をどれだけ辛くしても影響を受けないんだ」

「何もかもがびっくり性能ね、魔人族……あたし最初に鍋の横を素手で持ってるの見て悲鳴上げちゃったわよ」


 そりゃ驚くよな……そんな魔人族の能力の高さにリリーは若干呆れながらも、熱くて大きい鍋の横を軽々と持つエファさんに満足しているようだった。


「ライも食べる? 用意できてないでしょ」

「いいのか?」

「再々食べさせて貰ってるからね、一緒に行きましょ」

「そういうことなら」


 僕は勝手知ったる酒場の奥から深い器を出して、姉貴と手分けしてテントまで歩いて行った。




「陛下! 今日はリリーさんが作ってくれましたよ」

「まあ、本当ですか! それは楽しみです」

「正直やってることずるいから、楽しみにされると後が怖いね!」


 やってることが、ずるい?

 僕が疑問に思っていると、鍋の蓋が開いた瞬間に、それが分かった。


「これは……! 間違いないです、ライさんが錬金したミミズです!」

「ソーセージですよ!」

「それです!」


 リンデさんの本気かわからないボケを受け流しながら、鍋の中を確認する。なるほど、ソーセージと人参にキノコとキャベツをざっくり煮たってところか。確かに自分で作ったとは言いづらい気持ちもわかる。

 それじゃ、鍋の中のものを——。


「あっ、私がやります!」


———盛りつけようと思ったら、エファさんが代わってくれて更に乗せていった。ふりふりのメイド服で盛りつけていく姿は、とても様になっている。

 それぞれの手元に料理が来たところで食べ始めた。リンデさんは隣の席。

 鍋の中の残りは、ビルギットさんが取ることになった。


「それじゃ、食べますか」

「はい! 初めてのリリーさんの食事です!」


 まずは一口。……まあ、当然だけど、僕のソーセージである。味付けは、半分に切られたソーセージから出ている感じかな。オーガロードの肉がそのまま出てきて、スープになっている。

 後は、塩胡椒といった感じか。この鍋の大きさだと塩が足りなくなりがちだけれど、ちゃんと味が出ている。

 灰汁も出たはずだろうけど、しっかり取れて透明感のあるスープだ。


「とってもおいしいです! おうちで食べたソーセージと同じ味がします!」


 そりゃ同じ味に違いない。

 しかしスープの部分になるものは、リリーが自ら塩や胡椒を入れて調理したものだ。いくら僕のソーセージを使ったからとはいえ、誰でもおいしくできるわけではない。


「味付けも濃くも薄くもない、色もいいし、とてもいい感じだよ」

「そうかな? ならよかった。ママの手伝いしてるけど、厨房でお客さんに出す料理まではまだそこまでやってないのよね」

「調整がこれだけ上手いなら、すぐに担当できるようになるよ」

「ほんと? ライに言ってもらえると、何よりも自信がつくわね!」


 本当に丁寧に作ってあるし、調整が上手い。菓子作りのような分量と温度をずらすと形が崩れるものに比べて、料理における「適量」の感覚は、慣れはもちろんその人その人の感性で大きく異なる。

 僕から見ても、リリーは十二分にいい料理人の感性があると思えた。


「よーっし、ライに褒められたこと、ママに後で自慢しようっと!」

「僕の母さんなら、姉貴がもしそんなこと言おうものなら、すぐに調子に乗るなって拳骨落とすところだね」

「あはははは、あの人やりそう! すっごく想像ついちゃう!」


 リリーは母さんのことを思い出して笑った。……ひとしきり笑うと、少し遠い目をした。


「……ほんと、さ。魔人族のみんなや、リンデちゃんには感謝だよ」

「どうしたのさ、改まって」

「改まって……そうだね、改めて思うわけよ、おばさんのこと」


 おばさん……僕の母さんのことだ。


「私と、友達と、友達の弟。仲のいい幼なじみ。両親同士も仲が良くて、家族ぐるみの付き合い。……そういう日常が、いつまでも続かないということ」

「リリー……」

「昨日、ミアとライが喋ってるの見て……私、帰って泣いちゃった」

「そんなに?」

「そんなにだよ。おじさんとおばさん、村でも腕っ節がよくて頼りにされてたから。いつまでも気にしないようにと思ってたけど、ミア本人とライの関係は、どうしても……ね」

「……」

「だから、パパとママにも二人のこと報告したよ。ううん、あたしやパパとママだけじゃない。ここは勇者が産まれる村。だから村のみんな、ミアの気持ちのことは気にかけてたから。そして、ライしか解決できないって思ってたから」


 そうか……みんな、そんなに心配をかけていたんだな。




 ある日突然両親が奪われた僕と姉貴。

 姉貴は、母さんがいなくなったのを認められなくて。

 僕は、いなくなった母さんの味を求めて。

 二人で乗り越えようと思ったけど……その差は埋まらなかった。


 魔人族のリンデさんが、オーガの肉がおいしいと言って、それで料理を作った。

 僕では倒せないオーガキングと、僕達人間が普段食べてなかったオーガの肉。


 本当に、それは偶然の一致だった。

 僕と姉貴の6年間は、リンデさんが来て数日で埋まった。




「ありがとう、もう僕も姉貴も見ての通り大丈夫だよ。何もかもリンデさんのおかげでうおっ!?」


 リンデさんの方を見たら、僕の方を見てぐしぐし泣いていた。


「ライさんは……こんなに、苦労していてっ……! もう後から言っても仕方のないことですけど、私が……できるならば、両親も……お助けしたかったです……!」

「……本当にリンデさんは、優しくて泣き虫ですね。……もしもがあれば……そう考えたことは、ありますよ」

「うっ……うう……」

「オーガの襲撃。……一度目はダメでした。でも……二度目は、リンデさんが救ってくれました」

「……!」

「僕はリンデさんに救われました。きっと世界で最初でしょうね、魔族に救われた人間というのは。それが両親の番ではなく僕の番だった。

 ……正直、今でも信じられないぐらいですよ。もしかしたら僕はとっくの昔にオーガにやられて、夢を見ているんじゃないだろうかって。「もしも」を引き当てることができたのが、今の僕なんです」


 僕はリンデさんの髪を撫でた。


「ありがとうございます。僕はいつも、リンデさんに救われています」

「ライさん……! わ、私こそ、ライさんがいてくれて、いつも幸せです……!」


 リンデさんは、髪を撫でる僕の手に自分の手を重ねて、恥ずかしそうに笑った。




「……二人の世界に入るの早過ぎない?」

「あっ」「あっ」


 いつぞやかのように、後ろからツッコミが来て振り返る。

 見ると、みんな完食して僕達を見ていた。……またやってしまった……!

 呆れ気味のリリーと目が合う。


「会話の途中で切れたと思ったらこれなんだから……。まあ? リンデちゃんが? すぐに泣いちゃうとってもかわいい子だから? 私みたいなのより、よ〜っぽど好きなのは? わかってるけどね?」

「ず、ずいぶん棘のある言い方だねリリー……」

「私も既婚者だからそういうことは言わないけどさあ、さすがに会話途中でここまで二人の世界に入られるのは、今まで脈のかけらも無かった分、女としてへこむわあ」


 うう……ちょっと言い返せない。確かにリリーに対しては無意識で距離を置いていたんだろうけど、それにしてもリンデさんとの距離の縮まり方は、劇的すぎるもんな……。


 僕とリンデさんをからかって満足したのか、リリーはマーレさんのところに行っていた。


「マーレさん。昼はこんな感じで、晩はお店で出しているものでも見繕ってくるわ。酒場っつっても晩から夜中までやってる食堂みたいなもんだからね。城下町を救って今も守っているってんなら、みんな協力してくれるっしょ」

「まあ、それは嬉しいです! 本当に、何から何まで良くしてもらって……」

「いやー、王国のSランクがマーレさんぐらい安上がりで腰が低かったらなーって思っちゃってて、逆に申し訳ないぐらいですよー。ほんと、食費とか気にしないでね。できればずっと村にいてくれると私ら超安心ですんで」

「それはもう、是非こちらからお願いしたいです!」


 良かった。僕がいなくなっても、みんなを村に滞在させることは問題なくできそうだった。

 確かに、Sランク冒険者パーティが丸々村に泊まっている……よりもよっぽど村の安全を保証してくれるメンバーだろう。

 そして、それだけ実力があるにもかかわらず、みんな丁寧で話しやすい。見た目さえ慣れてしまえば、村のみんなに好かれるのは当然ともいえた。

 でも本当に、よくみんな見た目を受け入れられたなって思う。これもファーストコンタクトでのリンデさんの人徳というか性格の成せる業かな?




 僕がリンデさんを受け入れてから、勇者の村は、本格的に人類初の魔人族共存の村になりそう。

 ま、いっか。魔王様含めてみんないい人だし。




「っていうかライはさ、まさかずっとこのメンバー一人で養うつもりだったわけ?」

「あまり考えてなかったけど、そうしてただろうね」


 手間はかかるけど、食材はむしろ今までよりよっぽど余裕がある。お世話になっているみんなのためならそこまで苦労には感じないだろうし。


「……あんたって時々、お人好しを通り越した何かよね。ライは特に苦労してるから、もうちょっと村のみんなに我が侭言ってもよかったんだけど」

「そうかな? ああでも今日は僕の我が侭だったわけだ。改めてエファの働き口になってくれてありがとう、リリー」

「……それもお礼言われるようなことじゃないっつーか、私がお礼言うのが普通というか……」

「それじゃ、僕はこれから甘いものを気合いを入れて作るから、リリーも楽しみにしていてくれ」

「やっぱり分かってないよね!?」


 リリーからのツッコミも、確かにそりゃそうだなと思いながら、マーレさんの方を見た。


「ってわけで、今日は村にいますが……クラーラさんがさっきまで担当してくれたであろうゴブリンの群れ。その大元を絶とうと思います」

「そうですね、こういった問題は早めの方がいいです。……でも、見当が……」

「いえ、見当はついているんですよ」

「えっ……!? い、いつの間に、いえ、そんなことは構いません、一体何が原因なんですか!?」


 僕は今度はクラーラさんの方を見た。


「屋根に立っていたとき、どちらの方角から来ていたかわかりましたか?」

「……全部……東の森……」

「なるほど……」


 東の方にある森は、珍しい植物がそこまであるわけでもないため、人が入ることは殆ど無かった。魔物の討伐も少ない。

 確かに、あそこなら……僕は改めて、マーレさんに向き直った。


「魔法で肉体を生成されたアンデッドタイプ。そして王国に現れたデーモンとの連携行動。デーモンのネクロマンサーではないかと思います。まだ確定ではありませんが」

「……確かに、可能性はありますね」

「ええ。ゴブリンのキャスターが分身を使っているという可能性もありますが、こちらは少し非現実的かなと思います」


 僕は姉貴の方を見た。他のみんなもこちらを見ていた。


「東の森、明日あたり魔人族の索敵能力で調べてみる価値があると思う」


 みんな、覚悟を決めた顔をして頷いた。

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