みんなで住むことになりそうです
僕はリンデさんを助けるために、最近のソファ正面ハグ事件など自分で話すのも恥ずかしい話をしてエファさんを満足させていた。。
ちなみにエファさんは、すぐそこで「はわわ……」しか言わなくなって、顔を染めながらぺたんと地面にへたりこんでいた。
見てみると、ビルギットさんもクラーラさんも同じ感じになってもじもじしていた。ユーリアさんは……いい顔をして気絶していて、お兄さんのレオンさんが膝枕をしていた。
リンデさんはエファさんに付き添っていた。……本当に、言って良かったんだろうかってぐらい恥ずかしいなこれ……。
「ところでなんですが」
「はい、何でしょうか」
僕はマーレさん……魔王様に、どうしても聞きたいことがあった。
「ビスマルク王に言った、侵略……というのは」
「ああ、そのことですか」
マーレさんは、ビスマルク国王に向かって言った。
平和的な侵略。
不思議な言葉だった。
「マーレさんの計画、具体的に聞かせてもらえたりするのですか?」
「いえ、申し訳ないのですが現段階では計画の中でお話しできることはないのです」
「そうなんですね。じゃあ、いつか聞かせてもらえると嬉しいです」
どうもまだ話す気がないらしい。じゃあ魔王様がこの国に何をするか、のんびり楽しみに待ってみるかな?
僕は確認したいことができたので、ビルギットさんの食べ終えた鍋の中に食器を入れて、洗い物を済ませることにした。家の裏で洗い物用の水魔法を使って、灰汁と一緒にバーっとやっておしまい。
「…………あの……」
「ん? あれ、マーレさん? どうしましたか?」
マーレさんから、今度は僕に話しかけてきた。……何だろうか?
「いえ、計画を聞かないのですか?」
「? えっ? だってまだ言えることはないんですよね?」
「ええ、まあ……そうですが」
出会ったばかりでこういうことを言うのもおかしいかもしれないけど、なんだかマーレさんらしくない要領を得ない反応だ。
そんなマーレさんは、口ごもりながら言葉を続けた。
「あの、そうではなくて……その……私が何か、人間にとって良からぬ事をしようと考えてるとか、思わないんですか?」
「全く思わないですけど……?」
「え? えっ、と……」
大体自分で自分のこと、悪いことするかもしれません、だなんて言うかなー。それどう考えても悪いことする気ないでしょ。
本当にマーレさん、なんだかはっきりしない。とりあえず洗い物を済ませてしまおう。
…………? なんだか後ろから視線を感じる……。
「つん」
「わひゃっ!」
「あはは可愛い」
姉貴の声だ。
「な、なによミア……」
「もしもマーレが、ライとリンデちゃんの仲を引き裂くようなことをしたら、お姉ちゃんが容赦なく魔王討伐しちゃうわよって宣言に来た」
「なななんの話よ!? し、しないってば!」
「これは多少気がある反応よね……」
「ねえゴメンほんと勘弁して、私もこれで我慢してるんだから。リンデちゃんはみんなでいじるの楽しいけど、泣くまでやったりしたくないの」
「んーーー、ま、そういうことなら言及しないでおいてあげるわ」
姉貴はマーレさんに、何かよくわからないちょっかいをかけているようだった。
「はいはい姉貴、マーレさんに変な迷惑かけるなよ?」
僕は洗い物が終わったので、風魔法で乾かしながら姉貴の方を見た。
「むぅ〜、せっかくライを守ってあげてるのにやり甲斐がないわー」
「全然そんな気しないんだけど……。マーレさんも、友人がこんなだと困るでしょう。姉貴がご迷惑をおかけして申し訳ありません」
僕は食器をまとめながらマーレさんに言った。
「あの、いえ……ミアさんの言ってることはその、ごもっともだったので……はい、ライさんにはご迷惑はおかけしません」
「そ、そうですか……」
マーレさんは、言いづらそうに喋って、一歩下がった。それからリンデさんの方を向いて、みんなの様子を見て歩いていった。
姉貴の方を見ると、みんなと仲よさそうに話すマーレさんの方をじっと見ていた。
「姉貴」
「んー?」
「ああやって見るとさ、マーレさんって本当に普通の女の子だよなあ」
「は、何!? まさかあんたがマーレに惚れた!?」
「なんでそうなるんだよ……」
そりゃ思ったより若くて可愛らしい人だなとは思ったけどさ。
「いや、そうじゃなくて、あれが僕たち人類が教会に絶対悪だと教えられてきた魔王なんだなあって」
「ああー……」
姉貴も、僕の言ったことに思い当たったようだった。むしろ、姉貴こそが苛烈に魔族を追っていた人間の代表だ。
最初は魔族と魔物の差もわからなかったから、僕とリンデさんの出会いは、それだけ衝撃的だった。
両親を殺したオーガの上位種。
そいつを一瞬で斬った、教会に教えられてきた人類の敵。
「村の外で出会った魔族……まさか、オーガキングを殺した魔族が目の前で剣を仕舞って、『助けられる能力があるなら助けるのが当然』なんてこと言うとはね……」
「そのリンデちゃんに影響を与えたのが、あの魔王様なわけなのよね。そりゃあたしも忠誠誓いたくなるわけだわ」
「うんうん。…………うん!?」
姉貴、今、何て言った?
魔王様に、忠誠を誓っている?
「姉貴……姉貴は魔王様、マーレさんに忠誠を誓ってるの?」
「そうよ。……やっぱさ、あたしも王様には思うところあるってレベルじゃないぐらいむかついてるから、マーレと出会ってあまりに衝撃的でね……」
「何かあったの?」
「初対面は土下座されたわ」
……は?
「土下座って、マーレさんに?」
「そうよ」
それから姉貴の話を聞いた。
どうやら魔王を倒すためにやってきたと思われてしまったらしく、最初は魔族の面々に剣を向けられたとか。そこでマーレさんは出て行き、姉貴に対して、殺されても殺したくない、失望してほしくないと言って土下座したらしい。
そこまでした理由を、姉貴が二人助けたから、自分一人が死んだとしても差し引きで損をしていないと。部下と王の自分の命を平等に扱っていて、自分の国王との出来事を思い出してしまい、泣いてしまったと。
これが、僕達人類が悪だと思い込んでいた魔王か……。
「……なんだかほんと、思い出すだけでも泣けてくるわね。主にうちの国王の方があまりにもダメすぎて」
「マーレさん、話を聞くだけの頃から自分の中で勝手に評価が上がっていたけど、本当に話を聞く度にどこまでも評価上がってしまうな……」
「そういえばライは、あたしがいないうちにリンデちゃんとは他にマーレの話は喋った?」
「マーレさん、本当は着飾る資格なんてないって、何度も部下に料理や服を配りたくて自分で勉強して挑戦して失敗して、それであんなに手が怪我だらけらしいよ」
「……そう……」
姉貴が遠い目をしていた。
「……やっぱ、ビスマルク国王のこと考えてる?」
「ハッ、そんな時間もったいないわ、今はマーレよ。気楽に友達になっちゃって、どつきあってるの、本心ではあるんだけど……一種の配慮なのよね」
「……配慮? 姉貴が?」
「なーにその顔、あんたもどつこうかしら。……そうじゃなくてさ、人間の友達がずっと欲しかったって言ったとき、女王様じゃなくて、女の子の顔になった感じがして。もしかして、村の外でのあたしみたいに普通の友達が欲しかったんじゃないかなあって」
「……姉貴……」
「だから、友達。女王様だし本気で尊敬してるし、リンデちゃんに負けないぐらいアマーリエ女王陛下のこと崇拝してるけど、だからこそ、友達よ」
そうだ。姉貴は、人生の途中から勇者になったんだ。だけど、魔王様は産まれた時から魔王様だったはずだ。
「姉貴は、一人ぐらい本当に立場の差が全くない友達がいてもいいと思って、人間の友達として対等になろうと?」
「そうよ。本来あんなできた人物、尊敬していた方が圧倒的に気が楽だもの」
姉貴は、遠くでリンデさんと喋っているマーレさんを見ながらつぶやいた。
「あたしの陛下だったらなあって思うと同時に、あたしの陛下になっちゃったら、関係は崩れちゃうのよね」
「そっか……そうだな」
「だから、今のままがマーレのためにはいいかなーってとりあえず思ってるわ。あ、これマーレには内緒ね。っていってもマーレのことだから、あたしの今言ったことぜーんぶ分かった上で付き合ってくれてるだけかもしれないけど。でも、あたしもマーレと話すのは本心から好きなのよ」
姉貴は最後に「マーレも一緒だといいな」と小さく呟いて、みんなの方に歩いて行った。姉貴にだけわかることも、きっとあるんだろうなと思う。
なんだかんだ言いながら、ちゃんとマーレさんのこと考えてるんだな。
-
食器も仕舞いマーレさんの所に戻った僕は、再び質問した。
「あの、もう一つ質問があるのですが」
「はい」
「寝泊まりってどうするんですか?」
それは現在緊急の懸念事項。特にやっぱり……
「……はい。どう考えても私の体じゃ、この村に入れる家はないですから……そのミアさんの話によると私が住める住居が作れると……」
ビルギットさんが姉貴を見た。マーレさんも姉貴も、そこを考えずに来たとは思えないけれど、実際どうするんだろう。
「リリー、テントって用意できるかしら」
「そりゃできると思うわよ。そっか、ビルギットさんが入れるようなテントを用意すればいいってことね」
「うん、トーマスならできるんじゃないかなって」
「わかった、聞いてみるよ」
トーマスは村の大工だけれど、他にもこの村の様々な家具など、住居の大部分を担当しているこの手の専門家だ。
リリーは、トーマスをすぐ呼びに行った。
「本当に、私が入ることの出来る家が……?」
「ま、トーマス次第ね。あたしも勢いで言っちゃったし」
「え、ええっ……!?」
姉貴、あいもかわらず無責任であった。
…………。
……。
「おうおうなんだ……ってうおっ!?」
「ちょっとトーマス、かわいいビルギットさんに失礼働いたら許さないわよ」
「ビルギットさんていうのか。いや驚くなこりゃ……つうかよく見たらすげー人数いるなこの場所。勇者の村っていうより魔族の村だわ」
「みんなリンデちゃんの知り合いよ。あ、ちなみにあそこの……そうそう紫の」
「この中だと普通な感じだな」
「魔王だから」
「…………。本当に魔族の村だなこりゃ……」
トーマスは、広場に集まる魔族を見て驚いた感じで言った。そりゃ驚くよな、リンデさんの知り合いだったとはいえ、いきなり魔王様だし。
「しかし……この規模か。ちょっと木とか引き抜いて、裏でその規模のテントでも建てねえといかんなこりゃ」
「できそう?」
「……すぐにはとても……いや、まてよ?」
トーマスは、ビルギットさんのところに行った。
「あんた、ビルギットさんていうんだって?」
「は、はいっ。私に何かご用でしょうか。協力が必要なことがあれば、何なりと仰ってくださいませ」
「なるほど、真面目そうだ。……そうだな、じゃあリンデちゃんの知り合いってことだし、村の端っこのライムントの家がいいな」
「いい、とは何でしょうか」
「あんたの能力というか、力を見込んでなんだが、手伝ってくれねえか?」
「私の力が必要なのですね? わかりました、遠慮なく指示をいただければ。……クラーラさん、念のために来ていただけますか?」
「……ん……」
どうやら僕の家の裏に行くらしい。
家の裏側は、すぐ森になっていた。本当に田舎の村って感じだから、この辺も誰の敷地だなんてあってないようなものだった。
正確には王国なんだろうけど、細かく把握してるとは思えない。それに場所を主張していながらも、強い魔物がいる南の森の中などは一切進軍したことはなく、扱いとしてはもはやなかったことになっている。その場所も権利を主張しているけれど、
トーマスが、ビルギットさんにその頼み事を開かす。
「この辺の木、普通は切るが……試しに引っこ抜いてもらえるか?」
「木ですか? わかりました。……『時空塔強化』」
ビルギットさんの体が、少しオーラに覆われる。そのまま木を持って……
「えいっ!」
……かわいいかけ声とともに、僕の家の裏にあった大木が、根から引っこ抜かれていた。地面が溢れそうになったところで、カールさんが「おう、ちょっと待ってな」と言って根を切って、ぱぱっと枝を落とした。
さらりとやっているけど、この地面の根を土ごと動かしてしまう腕力も、大木一本持ち上げたまま維持している筋力も、あまりに規格外だ……。
「……もしできたら程度に思っていたが、ホントにやっちまうとはなあ」
「これぐらいならお任せ下さい、力仕事が必要とあらばどのような作業にもご協力できると思います。……あ、手先は不器用なのですが……」
「いや、力仕事だけで十分すぎるぐらい助かる。それじゃ続けて———」
「———。———」
「————そう、木を建てて———」
それからトーマスとビルギットさんとカールさんは、庭も想定してるのか多めに裏山の木を引き抜きまくっていった。……あの木、トーマスは便利に木材化するつもりだな?
まあ、実際、この数の巨木を根本までこの速度で手に入れるなんて、人間だったら不可能だもんな……。
トーマスだって斧を持って木を切ったりしてるけど、一本切るのにかなりの力仕事だ。倒れる方向を調整しながら切り倒し、そこから枝の加工。それだけの工程を目の前で一瞬でやってのけている。
そりゃ、やってもらいたい気持ちは分かるな。
………………。
………………。
それからあまり時間もかかることなく二人が作業を終えると僕の家の裏には、枝を切られた木の柱がたくさん立っていた。
さっき引き抜いた木が、同じ高さで綺麗に並んでいた。
木の高さは、カールさんが持っていた剣で切って、全て同じにしていた。それこそ、あの太い幹を一瞬で切断していた。さすがリンデさんに並ぶ剣士の男、半端ない。
それを地面に深く埋めていくビルギットさんも、やはり並大抵の怪力ではない。オーガキングと体格が同じだけで、その能力は圧倒的に上なんだろう。
トーマスもあまりのスピードに笑っている。
「はは、本当にできちまった。……よし、それじゃあ上まで登らないといけねえな。でもこの高さだとビルギットさんでも無理か」
「……高さが……必要……?」
「おう、君は?」
「……クラーラ……。……私は、飛べる……」
「飛べるって、宙に浮くって事か!?」
「……そう……」
スーッとその場で浮き上がった。羽とかもないけど、クラーラさん魔法自体詠唱してないよな? 無詠唱でどこでも飛べるのか……。
「こりゃすごいな。じゃあ、布を持ってくるんで手伝ってくれ!」
「……わかった……」
それからクラーラさんが布を持ってきて、あとは……クラーラさんが、トーマスの指示でトーマスを持ち上げながら右に左に動いて、トーマスは屋根部分の木を補強していった。その作業を終えると、布を被せて釘で打ち付けていく。
その他、飛ばなくてもできる細かい部分は、姉貴と僕でやっておいた。
時間にしてどれぐらいだろうか。
「まさか、こんなすぐ出来るとは思わなかったな……」
「……よかった……」
クラーラさんが満足した顔で目の前のものを見る。そこには、簡易的に作ったとは思えないほどかなり大型で立派なテントが出来上がっていた。
屋根から降ろした布の簡単なドアを外すと現れる出入り口があり、待ちきれないというふうにビルギットさんがテントの中に入っていった。
「すごい……! 私も入ることができます!」
ビルギットさんは、中で「わぁ〜!」という声を上げると、すぐに出てきた。
「陛下、すごいです! 中が布でいっぱいで、暖かいです!
「どれどれ……」
マーレさんも中の様子を確認して歓声を上げて、出てきて笑顔になった。そして、作ってくれたトーマスへ感謝の意を述べた。
「ありがとうございます、まさかここまで手際よく仕上げてくれるとは思っていなかったので、本当に驚いています。……しかしあまりに立派で……私には、何か対価をお支払いすることができないのですが……」
「いや、困ったときはお互い様っす」
「あっ、丁寧な言葉など使っていただかなくても結構ですよ、友人のように接していただければ嬉しいです」
「そ、そうか……じゃあそうさせてもらうわ。それに俺も、木材もらって損してばかりではなかったというか、こちらもお礼を言いたいぐらいというか……」
「え?」
トーマスは、村の人間だから、リンデさんのことはもちろんよく知っていた。
「この村のみんな、ちゃんと戦う能力のあるやつらばかりだから、リンデちゃんがいないと自分たちがどうなっていたかわかってるんだよ。あんたたちみたいな強い魔族には大したことないやつでも、オーガロード一体に親を殺されたのなんてライやミアだけじゃないからな」
「! ……そう、なのですね」
「だから、そいつら40体も50体も倒して、ついでに村に馴染むために遠慮なく肉を振る舞ってくれたリンデちゃんに、みんなどうやってお礼ができるかって考えてるはずだ。もちろん俺もな」
リンデさんの隣で戦ってみると、本当に大したことなく倒してしまうんだけれど、村人にとっては「どうやったらこれに釣り合うお礼が出来るんだ?」といった感じなんだろう。
Sランク冒険者を長期で雇い続けるようなものだ。当人はスープで十分らしいけど。
「そんなことが……そういうことなら、遠慮なくこのテント、使わせていただいても」
「もちろんだ、つーか手伝いが優秀だったんで俺あんま大したことしてないからな今回! なんか問題あったら呼んでくれ」
「はい、ありがとうございます!」
マーレさんはそう行って笑顔で礼をし、テントの中に入っていった。カールさんやクラーラさんも入って行く。
姉貴から声がかかる。
「どうしたの、ライ?」
「え?」
「ライも入るでしょ?」
僕も入る? だってこのテントは、魔人族のみんなが寝泊まりするためのもののはずだ。自分の家が目の前にある僕が入るのはおかしい気がする。
そんな僕の反応を見て、姉貴は呆れた顔をした。
「いや、だから別々になる必要ないじゃないってことよ。積もる話もあるだろうし、ここまできたら、あたし達も一緒に付き合いましょ」
「魔人族同士で話したいこともあるんじゃないか?」
「そんな話ないと思うし、あったらその時出ればいいわよ。それに……」
姉貴が後ろを見た。それにつられて僕も後ろを見る。
……リンデさんがいた。なんだか期待するようななんともいえない笑顔で、そわそわしながら僕の方を見ている。
「片時でもこの子と別々とかそれこそありえないと思うわよ」
「そうか……うん、確かにここまできたら一緒に喋ってる方が自然かもなあ。わかったよ姉貴」
僕は姉貴に言われてそのことに気付いて、リンデさんの方へ歩いていった。
「それじゃ、一緒にテントに入りますか」
「なんだか無言の催促しちゃったみたいで申し訳ないです」
「むしろ僕が一緒にいたかったですから、今日は別々で過ごしたいというわけじゃなくてよかったです」
「も、もちろんです! ……一緒に……えへへ……」
リンデさんは、そのまま僕の横に来て、腕を組んできた。そして顔を寄せて、いつものように匂いを嗅いでくる。
くすぐったい。横にいるから、僕も匂いを嗅ぎたいけど、どうしても位置の関係上できないのでもどかしい。
「チッ、自然にいちゃつき堂々と見せつけやがって……レオン君! あたしたちも合体するわよ!」
「へ? ええっ!?」
それを見ていたレオンさんが、姉貴に後ろから羽交い締めにされる。……姉貴も姉貴で、宣言しながらやっちゃうあたり結構大胆だと思うよ。
レオンさんは妹のユーリアさんに抱きしめられている時の顔を見られて、さすがに恥ずかしそうにしていた。
僕はリンデさんと腕を組んで、姉貴はレオンさんを抱き上げた状態で、一緒に第二の魔人王国状態となっているテントの中へ入っていった。