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ミア:人生いろいろありえるものよ!

「……当たりね」


 あたしはカールさんとビルギットさんに確認した。二人ともそれぞれ顔を合わせると、無言で頷いた。


 目の前に、明らかにこの辺にいなさそうな鋼のゴーレムがいる。ビルギットさんサイズの3メートルから4メートルぐらいあるやつ。

 それも、何体もいる。

 剣なんて通りそうにないし、ご丁寧に魔法防御まで張ってある。


 ハッキリ言って、こいつは人間の能力を超え過ぎている相手だわ。並大抵の冒険者なら通れないでしょうね。

 でもね、お生憎様! ここにいるメンバーは並じゃないのよ!


「私が行きます! 『時空塔強化』……通ります!」


 ビルギットさんがゴーレムに宣告して、そのまま減速なく突っ込んでいく。同じ体格だけど……当然、ビルギットさんはそこらのヤツとは格が違う。

 拳を握って、素手で鋼の塊を殴る。ゴーレムも同じような格好で体当たりしてきたようだったけど、パワーの差がありすぎる。

 ビルギットさんの拳がすごい音と共に当たり、ゴーレムは四肢を吹き飛ばしてバラバラになった。関節は衝撃に脆いようで助かったわ。


「陛下、陛下……!」


 しかしビルギットさん、能力は余裕……だけど、心の余裕がないわね。

 あたしはビルギットさんに声をかけた。


「さすがビルギットさん! 強いですね!」

「あ、恐縮です! 力だけが取り柄ですので!」

「そんなことないわ、可愛さだって取り柄よ!」

「ふえっ!? こ、こういう時にそういう冗談はやめてください!」

「あたしはあなたも知ってのとおり、不器用だから本心しか喋れない単純女よ! ビルギットさんを知られると、世の男がみんな取られちゃいそうで怖いわ!」

「も、もうっ……!」

「そんな感じです、気張らずいきましょ!」

「———あっ……! はい!」


 ビルギットさんが、少し余裕を持った表情になって再び前を見て走り出した。


「……ミアさんは、やっぱり優しいですね」

「あらレオン君の好感度また上がっちゃったかしら!」

「上がってはないと思います」

「えっ……」

「何しろ好感度なんてもうずっと最大値のままで、今日も一日中ミアさんのことで頭が一杯でしたから、これ以上は、ね」

「……! あ、あ、ありがと……! あたしもレオン君しか見えない馬鹿になっちゃってるからおあいこね……!」

「本当ですか? 嬉しいです……!」


 レオン君。

 今のはずるいわ。


 あたしは……あたしはもう……!


「うおっ、ミアさんなんだか前より速くなってないか!?」

「わ、え、ええっ!? あの、ミア様! ペース下げないと持久力が維持できないのではないですか!?」


 問題ないわ! あたしの下半身はもうあたしの言うこと聞かない! 今もう勝手に暴れているだけなのよ!

 あたしの……迸るなんかもうすごいアレ、ミアちゃんなんちゃらが爆発して、その爆発の余力で勝手に移動してるだけなの!

 馬車に乗ってる気分ね! フゥー!


「全く体力が尽きる気がしないわ! レオン君の強化のおかげね!」

「マジっすか……こんなにレオンの魔法って強かったっけな……」

「私は記憶にないよ……ミア様ホントに規格外の人間だよ……」


 あたしはどんどん走っていった。なんだか横にゲイザーとかオーガロードとか見えた気がしたけど、全くあたしに追いつけないようね!

 無視無視! あんたら木っ端に構っている余裕はないのよ!


 マーレとエファちゃん、それにユーリアちゃんは信用してないわけじゃないけど、やっぱりこの二人に比べると大幅に見劣りする。

 あの海岸でのくそデーモンコンビとのバトル、そして、あたしが倒したこと。

 あたしはひとつ、失敗をした。

 レオン君を持ってきた。つまり、魔王様……マーレの能力は、デーモンを刺したあの時のあたしより下である可能性が高い。

 そこに2体3体以上のデーモンがやってきたら……。


 マーレ……あたしの、友達マーレ!

 絶対、絶対助けてみせる!


 -


「———いました! ミアさん! カール! ビルギットさん!」

「ナイス! それじゃレオン君!」

「はい!」


 あたしはレオン君から強化魔法を受け取ると、その場にレオン君を降ろして一気に前に出た。




 ……あれは!


「人間の上位個体がいたのは想定外ですが、誤差でしたね……」


 リーダーっぽいデーモンの発言が聞こえてきた。

 そしてその先には……


「ぐうっ……! くそっ、どうすれば……!」

「あ、あなたがそこまで戦う必要はありません、どうかお逃げください!」

「いえ、エファ殿を見捨てるわけにはいきません!」


 ……ちょっと、えっ!? ま、マジか!

 あたしはカールさんとビルギットさんに目で合図を送り、突撃した。


「———オラァッ!」

「ハッ!」

「やっ!」


 あたしは正面のデーモンを背中から斬った。あんたたちデーモンは6体で囲んでるんだから卑怯とは言うまいね!

 あたしの攻撃と同時に、カールさんとビルギットさんが左右から掛かり、同時に三体のデーモンの死体の出来上がりだ。

 デーモンが残り三体になり、お互いの動きが止まる。


「み……ミア様!」

「マックス! あんた今日一番輝いてるわよ!」


 そこには、マックスがエファちゃんの援護を受けて耐えていた。マックス、ここ一番でいい仕事してくれたわね!

 息切れしたエファちゃんの防御魔法の中には、まだマーレもユーリアちゃんもいた。間に合った……!


「な……まだ来るのには時間がかかるはず……ビルギット!? 教会にぶつけて引きつけておいたはずですがねえ!?」

「へえ、あんたがビルギットさんを教会のむかつく連中にけしかけてたんだ」


 あたしは見てないけどね! でも話を聞くに、どうせろくでもない理由でけしかけたに違いないし、ろくでもないことになったに違いない。


 正面の、さっきからぺらぺらよく喋るデーモンを見る。美的センスは他のヤツ同様ダメダメだけど、妙に身なりがいい。具体的に言うと、宝飾品が多い。

 間違いなく、ライの言ってたヤツだろう。


「折角剣と魔法では通れないゴーレムを用意したのに台無しですね……!」

「あのゴーレム、あたしとカールさん用につけてたのね、はっはっは残念でした! あたしもカールさんもなんもしてないわよ!」

「おのれ……やってくれますね……!」


 ……なるほど、確かにこいつが幹部ね。あのゴーレムをあれだけの数召喚したということ、そしてこちらの行動とメンバーを読んでいること。


「気になりますねえ……ビルギット、あなたは教会に行かなかったのですか? 外周さえ回れば町中のヘルハウンドは見逃したと」

「……いえ、私はヘルハウンドを追って街の中心部への横道に入り、そこで教会の人間と接触しました」

「あなたが緊急時だろうと教会の人間に手を出せるような魔族だとは思えません。一体何があったんでしょうねえ」

「ライ様が間に入って、助けて下さいました」


 ライ、あんたほんと良い仕事したわね! 多少遅れたことは許す!


 あたしがそう思っていると……デーモン幹部野郎の雰囲気が変わった。


「ライ、ライムントだと……! なぜ! まさかあいつら……ああ、あああああ! おのれ、おのれおのれ失敗しおったなあああ!」


 それまでの雰囲気とあまりに急激に変わって、デーモン幹部ことデー幹がものすごい形相で怒り出して驚いた。


「あれほど失敗しない計画を立ててお膳立てしてやったというのに! あれほどライムントの殺害は女王殺害以上に重要だと言ってやったのに! 全部聞かずに遊んでおったな無能どもがアアアア!」


 ……ライの殺害が、重要?

 女王殺害より、重要?


 こいつ、ビルギットさんがやってきたことも、それによってカールさんとあたしが間に合ったことも、そこまで反応してなかった。

 それが、ライが生きていたというだけでこの反応だ。


 え、ライ。ちょっとあんた何やったのよ。


 んー。

 ミアちゃん聞いてみちゃうか。


「どうどうデーモン幹部さん。なんでライムントの殺害が重要なの?」

「ぐぐ……おのれ勇者ミア、勇者、勇者がなぜ魔族と一緒にいる……!」


 おーおー、話聞ける雰囲気じゃないけど会話できるわね。


「魔族っていうか魔人族だけだけどねー、友達なっちゃったし」

「な……! 間に合っていなかったか……!」


 ……間に合ってなかった?

 友達になるのが、間に合ってなかった?


「ふむ……」


 そこで、エファちゃんの防御魔法の内側で耐えていた魔王様ことマーレが立ち上がり、デー幹野郎に向かって口を開いた。


「勇者ミアと魔人女王アマーリエの邂逅は、侵略だけで土地拡大をする悪鬼王国にとってこの上なく都合が悪いこと。その勇者ミアを魔王の元へ誘導したのは、ジークリンデ」

「……黙れ……」

「ジークリンデを人間に繋ぎ止めたのがライムント。そのライムントが重要事項ということは、やはり魔人族との架け橋のキーはライさんにあると」

「黙れ黙れェ!」

「いいことを聞きました。いいことっていうか、もう確信に近いですけど」


 マーレは、あたしに振り返ると、余裕のある顔で笑いながら言った。


「ミア、やっぱりライさんはすごいね」

「え?」

「勇者ミアを送り出してくれて、リンデを受け入れてくれて。今もこうやってビルギットを間に合うよう送り届けてくれている」

「あ……」

「この先が楽しみ。さ、後は任せていいよね。っていうか、ミアはきっと最後を自分で決めたがるだろうし、勝手に手出したら怒っちゃいそう」


 んん? どういうことかしら。

 あたしが、最後を自分で決めたがる?




 しかしそうか、こうやって考えるとライのやったことって、すごいわね。ライ一人で、魔人族との関係作っちゃってる。

 ……なるほど、だから女王以上に重要な殺害対象。


 殺害。

 ライを殺害か。


 お膳立てしてってことは、リンデちゃんがいなかったら、クラーラちゃんが間に合わなかったら、ライは確実に殺されていたんだろう。


 ライ。


 あたしが両親の死に塞ぎ込んでいても前に向かっていたライ。

 ずっと姉のあたしのわがままを黙々と聞いてくれていたライ。

 知らずのうちに、意識せずにあたしを助けてくれていたライ。

 そして、母さんのチーズハンバーグレシピを完成させたライ。

 リンデちゃんの力で、遂に母さんのハンバーグを超えたライ。


 ライを殺害。


 なるほど、ね。







「————デーモンくそ幹部野郎オオオ! お前は! このあたしが入念にぶッ殺してやるからなあああああ!」




 あたしは全身から怒りのオーラが力に変わるのを感じた。右手に持った剣を前に突き出し、正面のデーモンに突っ込む。

 体は熱い。でも、頭は冷えてる。

 カールさんとビルギットさんが、残ったデーモンにかかっていったのを視界の端で認識しながら、あたしはそいつに向かっていった。


絶対に! こいつは!

あたしが斬る!


「オラァァ!」

「っちぃッ! 私は頭を使うのが中心なんですがねえ!」

「チョー好都合だわ死ね!」


 あたしは片手で振れる大剣を両手で構えてデー幹野郎に上から叩きつける! こいつはそこそこいい感じの大剣を持って対抗しようとしていたけど、あたしと打ち合うと力負けしたようで、簡単に剣が沈んだ。


「ぐっ……! なぜ、なぜ勇者程度の魔法生物がここまで強い!? ゆ、勇者が、たかが勇者ごときが私に敵うはずが……!」

「今のあたしはね! もう一人分の力のあたしじゃないの! ライも、マーレも……レオン君も! みんなあたしの力になってるのよ!」

「……レオン……ま、まさか……エンハンサーの……」

「レオン君とは相思相愛! もう以心伝心で強化魔法をかけてもらう仲なの! だから、今のあたしは魔人と勇者のいいとこ取りの人類史上最強さいかわ勇者ミアちゃん! お前みたいなしょぼいザコ、顔じゃねーんだよ!」


 膝を折りかけたデーモンの隙を突いて腕を切った。斬った瞬間大げさに痛がって、警戒心ゆるゆるで逃げようとしたのであたしは足首を斬った。

 デー幹野郎が派手にこける。偉そうなこと言っておいて、海岸のゲレゲレだかのデーモン野郎の比ではないぐらい判断力が鈍い。肥満王といい、所詮指示出して偉そうにしてるヤツなんて体のスペックが良くてもこんなもんよね。


 こんなに身体スペックがあるなら、偉そうにふんぞり返ってないで、お前がライを直接殺しに行けばうまくいったのにね。

 ……でも、それが出来ないのよ、こういうやつはみんなね。

 だから負ける。


「……ぐ……こ、こんな……こんなところ、で! こんなところで、こんなところでこの私がこの私が! この悪鬼王国の頭脳たるこの私がやられることなどありえないありえないありえない」

「ありえないことなんてない!」


 あたしは叫んで、首をはねた。


「ありえないことなんてない。


 今は最強の勇者も、父さんと母さんが死ぬのを分かっていて逃げた。

 勇者の力に目覚めた当時、魔物と魔族の区別なんてつかなくてね、魔族全員ぶっ殺してやるって思ったわ。

 魔族と邂逅なんてありえないって思って。


 弟に母親の死を八つ当たり気味にするような最低な姉で、素直なれず関係があまりよくない日が続いた。

 魔族を殺すことだけを人生の目標にして、五年間ほぼ一人で世界中を回る日が続いた。

 勝手に強くなって、守りたい人は死んだのに、ついた力のせいで誰も男が寄ってこない日が続いた。


 世界一不幸だって思ったこともある。

 ……そんなあたしでもね。


 魔族に弟の関係を改善してもらえる日があった。

 魔族の命を助ける日があった。

 魔族に本気の恋心を教えられた日があった。

 ……あ、これは今日だったわね。


 だから、ありえないことなんてないのよ」


 あたしは、物言わぬ生首を斬って言った。


「あんたとの差は、そんなところかしら」


 あたしは最後にそう言って、きびすを返した。


 -


「終わったわよね?」


 あたしはカールさんとビルギットさんを見た。ま、分かっていたけどとっくに灰色のぶつ切りとミンチが出来ていた。

 ……ビルギットさんが、顔を合わせない。どうしたんだろ。


「マーレ、間に合ってよかったわ」

「……え、ええ……」

「マックスも」

「……あの……はい……」


 ……え、何この反応。


「あれ? エファちゃん?」

「ぴっ! はわわ……」

「ど、どうしたのエファちゃん」

「はわわ。はわわ?」

「なんだか新しい言語みたいになっちゃってるわよ」

「はわ」


 驚きすぎたのか、完全にはわわ語になってる。……あたしも習得できるかしら、はわわ語。はわわ、はわわ。

 うん無理。


「なんなのこれ。ユーリアちゃんは?」

「わわ私に振らないで下さいこの中で私だけメチャ立場下なんですよぉ!」

「そ、そうだっけ」

「そうです! ノーコメントです! 黙秘します!」


 ……? なに? みんなそわそわして。


「どういう空気なの、ビルギットさん」

「ふぇっ! わ、私でございますか!?」

「……ビルギットさんもそういう反応?」

「あ、あの……あうぅ〜……」


 ……本格的にわからない。

 あたしが頭の中でクエスチョンマークのラインダンスを踊らせていると、カールさんが頭を掻きながらやってきた。


「カールさん、何この空気」

「えーっと」

「……カールさんも、どうしたの?」

「わかりませんか?」

「さっぱり」


 デーモンくそ幹部をぶっ殺して、魔王様のマーレも生きてて、マックスからユーリアちゃんまでみんな生きている。

 もう特に言うことないぐらいのミアちゃんの完勝よね。

 大団円だ、やったね!


 なのに、なんなのこのビミョーな空気。


「ミアさん」

「何?」

「レオンと一緒に来たっすよね」

「そうね」

「すぐそこにいるっすよね」

「そうね」


 ……なんだ?

 当たり前の質問が続く。


「ミアさん」

「……どったの?」




「さっき、レオンと、陛下と、人間の騎士の前で、思いっきりレオンと相思相愛って大声で宣言したっすよね……?」




 …………。


 ……………………。


「ああああああああーーーーーーっ!」


 や、やややややっちゃった!

 やっぱミアちゃん頭クールとかなってなかった!

 めっちゃノリノリで喋ってた!

 デーモン野郎に喋ってたとき絶対ノってた!


 あーーーーーーー!

 ああーーーーーーー!


 やべーーー超はずかしーーーーーー!




「……あ、あの……」


 ……!


「れ、レオン君……!」

「もう、その……いい機会です、隠さないでいきましょうよ」

「……! そ、そうね、良い機会ね……!」


 ……よし、もう覚悟を決めよう……!


 レオン君は、あたしと手を繋いだ。

 あたしはその手を握り替えしながら、マーレを見た。


「マーレ!」

「うん」

「魔王様のマーレにご報告です! あたし、レオン君にマジ惚れして、ちょっと奥手になってビビっちゃうぐらい本気で好きになっちゃったみたいなの! レオン君もあたしのこと好きって言ってくれたので、と、とととりあえず、その、そんなかんじです!」

「うん、わかった! そうか、レオンかー。そうだね、レオンだったら優しいし頭も良いし、何より相性ばっちりだもんね」

「クラーラちゃんにも似たようなこと言われたわ!」

「そうなんだ?」

「クラーラちゃんかわいいわよね! あたしとレオン君が相思相愛なのを自分のことのように喜んでたの」

「ふふっ、クラーラらしい」


 あたしはマーレに話し終えると、マックスの方を見た。


「あー、マックスには、なんていったらいいか……」

「ミア様は、魔人族の方とお付き合いするんですね」

「そうよ。マックスが酔ってやったことが悪いとはいえ、やっぱあたし、大衆の前で腕折ったのは悪かったなーって思ってるわ。まあでも、そのせいで男の縁ナシになっちゃったから恨んではいたけど」

「はい……」

「でも、おかげでレオン君とお付き合いできることになっちゃったから、結果的には悪くないどころかかなりいいわ!」

「それは……よかったです。自分もミア様に対して、どういう距離感で接したらいいか悩んでおりました。でも、これから、彼氏持ちの勇者様として認識させていただきます」

「へへへ、よろしい!」


 あたしは満面の笑みでマックスを見た。


「ビルギットさんはどう?」

「ふぇっ! あ、あの、いいと思います、お似合いです……!」

「ビルギットさんも、そんな感じのお似合いの人が出来るわ!」

「わ、私には無理です……」

「あのね! あたしが言わせてもらうけど! あたしみたいなレオン君よりでかくて、もう自分で言っちゃうのもなんだけどひっどい性格のあたしから見ると、ビルギットさんのその体でその性格、ちょっとずるいぐらい可愛いからね」

「ふぇえっ!?」

「そういうところ! ああもうずるい! 絶対出来るから、予言してやる!」

「あ、あの、えっと、ありがとうございます……?」


 あたしは言うこと言ってビルギットさんとの会話を切った。次は……そうだ、妹ちゃんだ。借りてくという言葉に一生が入っていきそうだ。

 ……一生! それってそれって!

 フゥー!

 いかんいかん、勝手に一人でテンション上がってた。


「えっと……ユーリアちゃん」

「はい!」

「えーっとえーっと、お兄ちゃん結局マジで連れ回しちゃうことになっちゃってます、なんだか突然でごめんね」

「そんな! 11番のお兄ぃが、陛下と名前で呼び合うミア様を射止めるなんて、妹として鼻が高いです!」

「嬉しいわ! ユーリアちゃん、妹みたいに思っちゃっていい?」

「もちろんです! 私もミア様に命を助けられてから、私の英雄ミア様のこと、かっこいいお姉様だと密かに思っています……!」

「あはは、照れるわね……ありがと!」


 ユーリアちゃんみたいな妹なら、大歓迎よ!

 あたしは、その次なんとなく最後になっちゃったエファちゃんに話しかけた。


「エファちゃん、11番もらっていくわ」

「あ、どうぞどうぞ」

「あっさりしてるわね?」

「んー……最後になっちゃうと特に私から言うことないですからね。でも本当にお似合いだと思います」

「ありがと! エファちゃんは誰か見つけるの?」

「えっ、私ですか……!? ううん……リンデさんがライさんと一緒な以上、未定です。そんなことより、ライさんの食事が食べたいですね」


 あたしは、エファちゃんに言われて気付いた。

 気付いたっていうか、思い出した。


「えーっと、皆さん! ライとリンデちゃん城下町に置いて来ちゃった! だから迎えに行こうと思うわ!」

「つ、ついに私たち魔族が、ライさんとお会いできるのですね!」

「あ、陛下。オレとビルギットは先に会ったっすよ」

「ああっ、カールもビルギットもずるい! ど、どうでした!?」

「んー……ビルギット」

「え、ええっ!? そ、そこで振らないでよ……」


 ビルギットさん、ライと結構喋ったっぽいのよね。ビルギットさんが、しきりにあたしの方をちらちらと見ている。

 ……ああ、なるほどね。


「ビルギットさん」

「は、はい」

「あたし、自分のことぐらいわかってるつもりよ。だから結構言いたい放題言ってくれていいわ、怒らないから」

「ほ、ほんとうですか?」

「本当の本当よ」


 っていうか、ビルギットさんだもの、そんなひどいこと言うとは思えないわね。


「えーっと、では陛下」

「うん」

「ライ様は……ミア様とは、芯の所が似ていますが、正直に言うと基本的に全く似てないです。装備は遠距離系、男でリンデさん並の背丈、物腰は柔らかくて言葉遣いは丁寧だけど話しやすく、一方、私と教会の人間が問題になった際は間に入って、集団相手に丁寧かつ大声で論破するほど勇敢で頭の回転も速いです。

 料理の約束も、私が言い出す前に自分から言い出してくれましたし、その……私のことを、言葉遣いが丁寧で感動した、嫋やかな方だと。私の姿を見ても恐れず握手を要求してくれて、嬉しかったです。

 ……自分の体には釣り合わないから無理だとは分かっているんですが、それでも、リンデさんが羨ましくなっちゃいますね……リンデさん、ほんとに指輪つけてましたし……」

「……ミア」

「な、なにかしら」

「言っちゃ悪いけど……ライさんめっちゃ優秀……全然似てない……」

「……あたしは自分の力に後悔してはないけど、でも……正直言うと、勇者の力含めてもいいから能力全部交換したいぐらい羨ましいわ……」


 そう、よね。

 明らかにあたしとライ、ちょっと面白い関係よね。


 もしも逆だったら……料理の上手いお姉ちゃんが、勇者の弟にごはんを作ってあげる。あ、フツー。

 でもあたし、森でリンデちゃん見かけて村に連れてくるかしら。


「リンデ殿とライムント君は、どういう生活をしていたんでしょう」

「あ、そういえばあたしまだマックスに話してなかったわね」

「はわ! わわわたしももう一度聞きたいです」

「エファちゃん気に入っちゃったわねー。じゃ、したげる!」

「ありがとうございます!」





「あのー」

「あっ、レオン君! どうしたの?」

「立ち話もなんですし、歩きながらその辺の話しません?」


 ……それもそうだった。


「さすがレオン君、気が利くね!」

「いえいえどういたしまして、僕もまたあの町並みへ行きたいですし」

「それじゃー城下町行きましょう!」

「はい!」


 あたしは、返りはレオン君と手を繋いで、マーレやマックス達を連れて一緒に城下町に帰った。

 とりあえず、デーモン騒動は一件落着ね!

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