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カヴァナー連合国に着きました

 港に近づくと、あちらからも小舟らしきものが一台やってくる。

 その小舟を見ていると、クラリスさんが船から顔を出して手を振った。

 こちらの船の近くまで来ると、クラリスさんが船から小舟の近くまで降りて二、三ほど会話をする。

 どうやら説明をしてくれたみたいで、小舟は向こうに戻っていった。途中で僕と乗っている人と目が合ったので、軽く会釈しておいた。


 ……ちなみに魔人族は、みんな一応下がってもらっていた。

 トラブルがあるかもしれないけど、上陸後になんとか説明して、それで無理矢理押し通そう。少なくともトラブルになったとしても、僕が魔人族を見捨てるということはないし、同時に魔人族なしでなんとかなるとも思っていない。

 まあそもそも、軍資金をリンデさんが持ってるしなあ。


「ライ、いいかしら」

「クラリスさん、どうしたんですか?」

「一応私はマナエデンの交易の代表として信用を得ているけど、この船自体が非常に高い技術で作られていて、珍しい部分もあるのよ。あと後ろの海賊団はここいらじゃ有名なので、それでさっき領主の片腕が来たってわけ。一応話はつけておいたわ」

「そうだったんですね、ありがとうございました」

「海賊から助けてもらったんだもの、それぐらいはお安いご用よ」


 クラリスさんから事情を聞いているうちに、港へ船がついたようだ。

 警戒しながらも、リンデさん達を集めて、僕とクラリスさんの後ろに来てもらった。


「あわわ……大丈夫でしょうか……」

「大丈夫じゃなかったら、この国はすぐに離れましょう」

「わ、わかりました……」


 そして船の扉が降りて、新大陸へと橋がかかる。姉貴はもしかしたら、こういうところにも来たことあるのかもしれないな。

 ゆっくりと、クラリスさんにぴったり寄り添うように船を降りる。……反対側の腕は、がっちりリンデさんが掴んでるけど。


 周りに集まった人を掻き分けて、一人の年輩の女性がやってきた。


「クラリス様、よくご無事で……!」

「エドナ! 迎えに来てくれてありがとう。様子から察するに、どうやら脅迫状の一つでも行ったようね……」

「ええ、身代金の要求があって……。ところで、先ほどから気になっているのだけれど……」


 エドナ、と呼ばれたその女性は、髪の毛が真っ白になり、顔に幾分か皺が刻まれた身なりのいい女性だ。

 その人が今、僕を少し見た後に、真っ先に上を見上げる。……そうか、そりゃこの集まりだと、一番最初に目が行くのはそっちだよな……。


「この人達は、魔人族。海を越えてやってきた亜人の一種と思って問題ないわ」

「獣人らと同じような扱いでいいのね。それにしては大幅に見た目が違うけど……」

「話した感じ、信用に値すると判断したわ。っていうか私がそっちの……そうそう、白い髪の子、リンデに助けてもらったから」


 助けてもらった、と話を振られて、リンデさんが「ど、どーもどーも……」と相も変わらずの挨拶でぺこぺこ頭を下げる。

 そんな庶民的な反応に、エドナさんも幾分か警戒を解いた様子だ。

 そしてその視線が細くなり……僕が後ろに引き連れた船に向かう。

 船からは手枷を付けられた海賊達が上陸しており、街の兵士に連れられて歩く姿が見られた。


「……『ジャスパー海賊団』よね……。まさか、手練れのあいつらが、こうもあっさり捕まるなんて……」

「彼女たちは海を越えてきたって言ったでしょ? 目の前でちょっと動きを見たけど、まー間違いなく私より強いわよ。だから海賊も一網打尽ってわけ。……で、そろそろ上がって休みたいんだけど、皆も一緒でいいかしら」

「ええ、もちろんです。私の家をお使いになってください」


 エドナさんは振り返りどこかへ向かおうとしたけど、一旦止まってこちらを振り返る。


「細かい自己紹介は後でするとして、まずはクラリス様を救っていただきありがとうございます。領主のエドナ・シンクレアと申します」


 以後お見知りおきを、と例をして今度は振り返らずに馬車へと乗った。

 なんと、今の女性が領主様だったのか……あまり失礼のないようにしないとな。


「それじゃあ、領主様に認められたということで、大手を振るって家に上がらせてもらいますか!」


 クラリスさんの一言に心から安堵し、僕は不安そうにしていたリンデさん達に微笑んで、それでようやくリンデさんも安心して笑ってくれた。

 ユーリアはちょっと腰が抜けていて、ビルギットさんは額に汗を掻きながらも大きく息を吐いて、アンはなんだかよく分かっていない様子で笑顔だった。


 -


「そういえば、エルダクガでもこういうことがあったなあ」

「……す、すみません」

「いえ、気にしないで下さい。こうなったらとことん庭を楽しみましょう」


 クラリスさんの案内で、話から察するに恐らくシンクレア家と思われる屋敷にやってきた。多少作りが違うけど、シレア帝国とも似た雰囲気であまり違和感を抱かずに済みそうだ。

 そしてそんな大きな屋敷だろうと、当然一名は入ることができない。


「みんなは普段、どうやってたの?」

「テントを持ち運んで、その中で寝泊まりしていましたね」

「なるほどね、布をひっかけるやつなら扉の大きさなんて気にならないか。ま、いいわ。ビルギットさんはそちらに座って。恐らくそれなりに気持ちいい芝生になっているはずよ。多少傷んでも気にしなくていいわ」

「あ、あの、じゃあ遠慮無く」


 クラリスさんもビルギットさんと会話してその内面を理解したのか、かなり打ち解けた様子だ。

 同時にビルギットさんに対して敬意を払っているのも分かる。だって今のところ、さん付けで呼んでるのってビルギットさんだけだもんな、クラリスさん。


「それじゃ、改めてみんな、私を救ってくれてありがとう。いっつも見慣れて飽きちゃった庭だけど、今日ばかりはこの屋敷に帰って来られたことが本当に嬉しいわ」


 日常に帰ってくることの喜び。

 その安心は、一度デーモンによって悪鬼王国の地下牢に入れられた僕には心から分かる。

 当たり前を享受していることの幸福は、いつになっても忘れてはいけない。

 特に今ずっと、リンデさん達と一緒にいるけど……あまりにも頼りっきりで、いなくなった時のことは考えたくない。

 今当たり前のように、味方として一緒にいてくれてることに感謝しないとな。


 僕は到着して、後ろに人がついてきていないことを確認して、ユーリアに視線を向ける。

 ユーリアは少し瞠目し、小さく呟いた。


「『エネミーサーチ』」


 ……さすが、頼りになる。

 ユーリアは以心伝心で僕の意図を読み取ると魔法を使い、すぐに驚いた様子で僕に告げた。


「山に、非常に大きな魔物の反応があります。……こちらを、見ていますね」

BookWalkerでの特集期間が終わりました、沢山買っていただきありがとうございました!(担当さん推薦ありがとうございました)

週間ランキングでも上位に入っていたようで、感謝感謝です。

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