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海賊達と、驚きの情報

「そういえば……当たり前のように人間に接していたからそうしていたけど、助けてもらっておいてあまり馴れ馴れしく話すのは失礼だったかしら……」

「いえ、構いませんよ。僕からは……いえ、こちらの方が慣れているので、僕の言葉はお気になさらず」

「そう? なら有難いわ」


 リンデさんの話によると、この奥に捕まっていたのはクラリスさんだけだったらしい。他の部屋を調べても、後はもう荷物だけだったとか。

 そんなわけで僕達に続いてクラリスさんが檻から出てきた。その姿を見て海賊達は「うっ」「そいつは……」と、名残惜しそうなことを言う。

 もちろんそれに反応したクラリスさんは怒り心頭だ。


「『エアロショット』!」

「ぐえッ! げェェッ……!」

「あれだけ散々やってくれて、まだそんなことが言えたのね。……次口を開いたら、首から上はなくなっていると思いなさい」


 風魔法の攻撃を撃ち込み、船内廊下の木壁にヒビが入るぐらいの威力で相手を吹き飛ばしながら嫌そうな顔をするクラリスさん。

 ……エルフは魔法が得意というのはよく知っているけど、それにしても強いな。っていうかどうしてこれだけ強くて捕まっていたんだろう。


「なんか、クラリスさんって海賊よりめっちゃつよそーですよね。なんで捕まってたんです?」


 あ、リンデさんも思ったようで質問してくれた。

 その質問を受けてクラリスさんは、首を俯けて暗い顔をしながら、自らの首に手を当てた。


「奴隷用の首輪を使われていたから、魔力が封じられていたの」

「……奴隷拘束の、黒魔石の首輪ですか……!?」

「あら、あなた詳しいのね」


 詳しいも何も、宝飾品の製作者であるから当然そういったものにも詳しい。

 しかし……やはりここで、僕の中に一つの予想ができる。


「この船の海賊って、元々もしかして、西から来ましたか?」

「そうよ。……どうしてそう思うの?」


 どうしてって……考えていけば、すぐに分かることだ。

 奴隷はビスマルク王国でも使われている。しかし、この黒魔石はあまりにも強力な弱体の魔力が備わっているのだ。

 昔は使われていたが、ビスマルク王国では大分前に廃止された。だから基本的に使われるところを見ることはもちろん、手に入れる手段もない。

 それを、当たり前のように使っているし、それを使うことを何とも思っていない。


「僕達は東から来たからです。そういえばリンデさんは、あの首輪を破壊する時になにか違和感ありませんでしたか?」

「んー、やっぱり魔石はちょっぴり硬いなーなんて思いましたけど、基本的には全然」


 やはりリンデさんにとっては、奴隷用の首輪だろうと何でもないようだった。魔人族の状態異常無効化能力と、リンデさんの怪力。首輪を外すための鍵なんて必要ないのはさすがである。

 しかしクラリスさんは、そんなリンデさんに当然驚いていた。


「魔族って……強いのね」

「えへん! 魔人族は、みんなとっても強いのです! 私はこれでも、えーっと、えーっと……四番目ぐらい? に、強いのです! ライさんがクラリスさんを助けたいのなら、私も全力でお守りしますね!」


 自信満々に胸を張るリンデさんを、クラリスさんはなんとも珍しそうに見ていた。

 ……まあ、この青肌で角の生えた背の高い魔族の女剣士が、こんなにあっけらかんと明るく喋ってるの、僕も最初は驚いたもんなあ。


 -


 甲板まで出て来た。

 僕達が現れて、そしてクラリスさんの姿を見た瞬間、海賊達がなんとか捕まえようと浅ましくも動き出そうとするけど……。


「『サンダー』」


 指先から、ぴりっと電気を見せびらかすように発生させたクラリスさんを見て、海賊達が動きを止める。


「ば、かな……首輪の鍵は、俺が……」

「あれですかー? なんか、ぱきっとやっちゃいました。宝飾品っぽかったけど、あれはなんだか綺麗じゃなかったのでいりませんね」


 なんともナナメ上で気の抜けた回答でありながら、海賊たちにとって信頼していたであろう奴隷拘束の黒魔石が、何の意味も成さなかったことに愕然としている。

 ……そうか。


「ガタイのいいお前がかしらってところか?」

「…………」


 僕がじーっと見ていると、クラリスさんが再び電気をびりっと横で再び放つ。その姿を見てお頭らしき男はびくっと震えた。


「ふふっ……よくも、私の魔力を封じてくれたわね……。自分より弱いものにいいようにされるのは屈辱だったわ……死なない程度に痛めつけるのも、魔法ができると簡単だからいいわね……!」


 クラリスさんが再び雷を天に放って目を光らせる。それだけで男は尻餅をついて首を横に振った。


「わ、わかった、言う! 俺がこの海賊団の頭だ! よ、要求は何だ……!」

「要求……要求かあ。まずはお前達はどこから来た? 嘘はつくなよ」

「……俺たちは、カヴァナー連合国の東区の海賊だ」


 うわ、本当に別の大陸だ。全く知らない名前が出てきたぞ。


「なるほど、ね。……そうだ、リンデさん。あのゴーレムを」

「あっ、そですね!」


 リンデさんが取り出したのは、ゴーレムの破片。

 それを周りの者に見せる。


「こいつの出所って分かるか?」

「……。……分かるといいたいところだが、何だこれは……? ゴーレムか?」

「そう。しかし知らないかあ……まあ答えたところで罪を許す気は全くないけど。海賊の流儀なんて知らないし」

「お前……!」


 海賊が凄んだところで、隣に居たクラリスから電撃魔法が、今度は海賊頭に直接飛ぶ。

 雷魔法の直撃を受けた海賊頭は大声を上げて、少し痙攣したと思ったら身体ごと甲板に沈んだ。


「……ほんとに、あんたら海賊がそんな表情をする権利があると思ってるの?」

「……う……」

「まったく、魔法が使えたらこんな奴らに負けることなかったのに……あ〜も〜騙されてあんな卑怯な首輪をつけられた自分自身の甘さに腹が立つ……」


 ぐったりして床に伏せたままの海賊頭を見て、クラリスさんが頭を押さえながら溜息をつく。

 ……そりゃ、これだけ真っ当に強いんだから、海賊みたいな連中にいいようにされて負けた事実は耐え難いものがあるだろう。


 しかし、そうか……知らないか。


「お前達を私刑で勝手に殺して奪うようなことをするつもりはないけど……まあ、カヴァナー連合国で裁いてもらうぐらいはするつもりだ」

「…………クソッ」

「ここで圧倒的に強い魔族の手にかかって海に投げ込まれるよりは、いいだろ? 僕としてはそっちの方が面倒じゃないとは思うんだけど」


 もちろんそんなつもりはない、ということは言わなくてもリンデさんも分かってくれているだろう。剣を持ったまま僕に寄り添って、海賊頭を見ながら頷いてくれている。

 僕の回答を聞いたからか、海賊頭は床に頭を伏せた。


 とりあえず海賊達を海賊の船に戻した上でアンとユーリアを監視に置き、ビルギットさんと合流した。今はこちら側に四人だ。

 ビルギットさんに関しては、クラリスさんもさすがに驚いていたけど、少し話すとすぐに打ち解けた。やっぱりビルギットさんの淑女としての説得力はすごいと思う。


「それにしても、アダマンタイトゴーレムの手がかりはなしか。……やはりここは、どこにあるか分からないマナエデンを探すしかないか?」

「えっ、マナエデン!?」


 僕が呟いた言葉に反応したのは、なんとクラリスさん。


「知っているんですか!?」

「いやあの、知っているも何も」


 そして彼女は、衝撃的なことを言った。


「私、その島育ちですけど」

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