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孤児院のみんなに約束の料理を振る舞います

 孤児院のキッチンは、少し小さい上に道具がやはり使い慣れない。

 ここは、やはり。


「リンデさん、裏庭らあたりの邪魔にならない場所に、家を出してくれませんか?」

「おおっあのキッチンさんの出番ですね! わかりましたっ!」


 リンデさんが軽やかに窓から外へ行き、僕もそちらへと向かう。

 後ろからアウローラの「……家?」という疑問が顔に表れているであろう声を聞いた。

 まあ、家って言われてもぴんとこないよなあ。


 ……だって、意味そのままなんだから。

 リンデさんが周りを確認すると、その平らな荒れ地にドンッ! と家を置いた。

 本当に、唐突に出現したってぐらい、僕の自宅がアウローラの隣に現れている。


「アウローラ、これが僕の自宅だ」


 後ろを振り返ると、当然僕の木造の家を見上げながら口を開けて放心しているアウローラが目に入った。

 僕の視線に気付くとこちらを向き、そしてリンデさんを向いた。


「……え? あの子が? え? え……?」

「ほら、『アイテムボックス』だよ」

「……家を……?」

「そう」


 とりあえず、先に入って準備をしておこう。

 何度見たって規格外にもほどがあるよなあ、移動式自宅。アウローラの気持ちもわかるよ。




 さて、それではみんなにビスマルク料理……って今はビスマルク王国じゃないんだ。

 じゃあなんだろ、魔人料理? んーーー……それは違う気がする。

 ま、いいや。馴染みの料理を作っていこう。


「しかし……そうだ、最近は食材を仕入れてなかったな……」


 なんといっても半年間いなかったのだ。それに直近はずっとレーナさんの訓練。僕がゆっくり城下街……は今はもうないんだった。村も大分様変わりしたもんなあ。馴染みの果物屋はどこにあるやら。


「今から食材を買いに行こうか……いや、それだとシレア料理になってしまうな」

「——はっ!? もしかして、もしかして食材さんですか〜っ!?」

「え、リンデさん?」


 リンデさん、そわそわしながら僕の方に寄り、満面の笑みでキッチンの前に来る。


「んふふ、んふふふふ……やはりミアさん、こういうところはちゃんと考えてますね!」

「姉貴がどうかしたんですか?」

「これですっ!」


 そこに現れたのは……!


「白アスパラガス!」


 ビスマルクの、春の味だ! どれも大きくて立派だ……!

 でもどうしてリンデさんが、春の野菜を?


「もしかして姉貴が」

「はいっ! 私が村でぼんやりしてる時に『どーせライが使うだろうから、あの白くて長いの買い溜めておくわ』って言ったので、私がたくさん保管してました!」

「うわーっ助かります! これおいしいんだよなあ」


 よし、これにチーズハンバーグを組み合わせていこう!


「リンデさん、まずはオーガキングのミンチを……その他、野菜などの食材はどれぐらいありますか?」

「たくさんありますよーっ!」


 次々出てくる、リンデさんの手元からの野菜の数々! これだけあれば、子供達みんなを満腹にしてあげられるぞ!


「ありがとうございます、リンデさんのアイテムボックスには本当に助けてもらってますね!」

「えへんっ! おまかせくださいませっ!」

「よし、ここからはお任せください!」


 リンデさんに親指を立て、そして向こうからアウローラ達が恐る恐る入ってきた。ユーリアが半ば笑いつつ、子供達を招き入れる。アンは……あっ、子供に混ざってる。

 この人数か、今日は久々に作りがいがあるな……!




 まずは、大きな鍋にお湯を……うおっ!? 一気に沸騰した湯が手から出た。

 ……そうか、レーナさんの訓練で魔力量が上がったから、こういう調理の勝手も変わっているのか!

 これなら……!


 アスパラガスの根本を取り、皮など固い部分を全て外していく。

 恐らくこちらシレアでも食べられているだろうけれど、是非とも今日はハンバーグとの食べ合わせを是非とも体験してもらいたい。

 特にしっかり調理したビスマルク王国の八百屋さんの白アスパラは本当においしいからね。


 パセリを入れて、チーズを準備して。

 そして今日は、オーガロードのソーセージも用意してもらった。

 これも自慢の一品だ。


 鍋の湯の中に砂糖、塩など。バターやレモンなどがあるのもありがたい。

 準備を終えた白くて大きなアスパラガスが沢山。これらをすべて、湯の中に。

 いつもなら時間もかかる湯沸かしも一瞬だから、調理が早い。


 ハンバーグをフライパンに置き、焼ける大きな音が聞こえてきて、後ろからリンデさんの「んふー」という楽しげな声も聞こえてくる。

 もうすぐですからね。


 白アスパラを投入して十分。そろそろ上げて、追加で入れよう。

 おいしいから、いくらでも入っちゃうんだよね。僕も久々に、たくさん食べてみたいな。


-


 そして普段より人数の多い食卓に、たくさんのお皿が並ぶ。

 チーズ入りハンバーグと白アスパラガス、そしてソーセージにしっかり煮た人参と玉ねぎの半球。

 ……ちょっと多いかな?


「それじゃあ食べましょう、いただきます」

「わーいっ!」


 リンデさんが真っ先に、自分が買った白い野菜にフォークを刺して観察する。

 ……じーっと見て、一口。


「……! んんんんっ!?」


 目を見開いて、どんどん口の中に入れていくリンデさん。見た目は大人びた美人なのに、その動作は完全に小動物みたいでかわいい。


「食感すてきっ! ライさんのお野菜さん、どれもおいしくてやわらかいですけど、これ、本当に甘くて、ほどよく食感があって、それでもさっぱりしててやわらかくてでもなんだか濃厚でおいしいです〜っ!」

「ふふっ、リンデさんのお陰ですよ!」

「わーい!」


 リンデさんの反応を見て、子供達も食べ始めた。ひとつ食べるとすぐに次を、更に次を……おおっ、みんなよく食べ……ほんとによく食べるな!?

 あとアンが完全に子供達に混ざっていて微笑ましい。


「まあまあ、みんなすっかり食い意地はっちゃって。でも本当においしいわ。ライ、なんだか無理強いしちゃったみたいでごめんね」

「いいって、元々お世話になってたし、大した作業じゃないさ。リンデさん、白アスパラガスの残りは?」

「まだ半分以上ありますよっ!」


 これだけ出してもそんなにあるんだ、そこまで買い溜めてくれたのは、ありがたいなあ。

 それに、自分の魔力が上がった感覚がここまで料理に影響するなんて思わなかった。

 鍋の水はどうしても量が必要だと湧きにくい。今後はその時間を大幅に待つ時間を短縮できそうだ。

 お湯がすぐ沸くのなら、シレア帝国のパスタ類も買い溜めておくといいかもな。


 僕はこうして、久々のアウローラとの再会で約束を果たすことができた。

 移動式自宅キッチンは破格で、本当にリンデ様々ですね。

 お世話になってお礼ができました、ありがとうございます。

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