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やっぱり甘いものの力は絶大でした

※ちょっと本文追加しました

 夏の暑い部屋の空気を、朝の薄暗く涼しい風が交換する早朝。

 ベッドで起きて、また、やってしまった。

 僕は久々となる、何度やっても慣れない感覚に目覚めた。


「……」

「……えへ……」


 正面には、僕を両腕で抱くリンデさんがいた。

 目をにんまり閉じて、青い肌を艶やかに濃く染める。その……遠慮無く抱きつく姿は可愛いんですが、今日は一段と遠慮がないですね……。

 ……まあ、起きた瞬間にガッチリと抱きしめている僕も大概なんですが……!

 ほんと、寝ている時に意識ないんだよな? 寝ぼけてて毎回起きて抱きしめにいってるとかないよな……?


「おはよーございます、ライさん」

「お、おはようございます、リンデさん……」

「ライさんだー、夏の汗っかきライさんだー」


 えへえへ笑いながら、僕の首元に顔を埋めてすんすん匂いを嗅ぐリンデさん。

 ……いやあの、その、そんな汗かいてる僕に触れるの、汚……うひゃっ!?


「んっ……ん……」


 り、リンデさん、唇を……押し当てて……!?

 まま待って下さい、ちょっと大胆すぎませんかそれ!? 柔らかくて暖かい感触がふにふに当たって……!

 うわ、何これ、今までと全然違ってぞくぞくするぐらい気持ちいい……!?


「ちょ、ちょっと、くすぐった……いや、変な気持ちになるので……」

「変な気持ち、ってどんな気持ちですかー? 私はこれ、とっても楽しいですよ。もし嫌なら、嫌だって言ってくださいね」


 嫌なことは、何一つないんですが、ないんですが……!


 身をよじって逃れようとも、このリンデさんの怪力ハグの前では僕にできることなど何一つない。

 どうやら姉貴は昨日帰ってきていないみたいで、今この家には僕とリンデさんしかいない。ドアから入って行為が中止、ということは起こらなさそうだ。

 な……なされるがまま……文字通りおいしくいただかれて、押さえつけられた僕はリンデさんの無邪気な色気に翻弄されっぱなしだ……。

 ああ、調理台の上のタラやスズキは、きっとこんな気持ちなのかなあ……。


 この僕にとって良すぎる現状を諦めたように甘受して現実逃避していると、リンデさんがようやく首元から顔を離して僕を見る。

 そして……照れたようにはにかんで、毛布の方へと目線を逸らす。

 ……ああもう……大胆に誘惑した直後に、そんな初々しい反応……反則じゃないですか……!


 僕からもリンデさんの頭に手を伸ばす。

 リンデさんの髪の毛をくしゃりと掴むと、リンデさんが僕の方に目線を戻して、そしてそのまま目線は更に横へ…………横へ?


 リンデさん、目を大きく開けて、口が開く。何か喋るのかと思いきや、そのまま大きくあんぐりと開けて、驚愕の表情のまま凍った。

 ……僕は、恐る恐る、後ろを振り向く。


「あら、どうして止めるの? そのままリンデもミアみたいになるところまで続けてくれていいわよ、私見てるから」

「できるわけないですよおおおおおおぉーーーーーッ!!?」


 窓の外、余裕そうな顔で浮いているレーナさんがいた。

 リンデさんの悲鳴が、部屋の中から朝の村に響き渡った。


 -


 姉貴は、朝食の用意をしている時に、ちょうど帰ってきた。


「ただいまー。帰って早々朝食作ってるなんて、ライは偉いわねー」

「習慣だからね。っていうか姉貴はあんまり無理するなよ? ちゃんとお腹の子を第一に考えてくれ」

「だいじょーぶよ、昨日も飲んでないわ」


 僕は姉貴に振り返る。姉貴は僕と目を合わせて……目線を泳がせた?

 こちらを横目でちらちら見て、眉を困ったように寄せて、顔を赤くしている。

 ……な、なんだなんだ姉貴、妙にあざとい反応じゃないか。そんな表情できるのならもうちょっと早い段階でモテてたぞ?

 いやホント一体どうしたんだ?


「……ね、ねえ、ライ……」

「な、何?」

「あんた、その朝のサンドイッチ作って広場まで持っていくのよね……?」

「そうだよ、昨日のうちにリーザさんに話は通してるから被ったりしないと思うけど、どうしたのさ?」

「……そうじゃなくて……っはぁ〜……」


 姉貴は呆れたようにこちらを向くと、突然僕の首を握り込んできた!

 えっ、何急に首絞めようとしてきてるの!? おい姉貴やめ————。


「『ヒール』」


 ————え?


「あんた、首元が一面、蕁麻疹じんましんみたいになってたわよ……」


 呆れたような声が聞こえて来るも僕は咄嗟に反応できず、ドアを開けて「じゃ、先に広場行ってるわね」と部屋から出て行く姉貴を無言で見ることしかできなかった。


 首元、蕁麻疹。蕁麻疹()()()

 それは、明確に蕁麻疹なわけがないと分かっている反応。


「…………あ……ああ、あああぁ〜〜〜〜っ…………!」


 ま、間違いない!

 思い当たることなんて一つしかない!


 姉貴に、夏の首周りが大きく開いたシャツからよく見える、一面キスマークまみれの首元を見られたぁぁぁ〜〜〜っ……。

 うわ、やっちゃった……今までで一番恥ずかしい……。

 実の姉に、そんなものを見せるとか……。


 ……ああ、でも……。


「マーレさん達に見られなくてよかった……」


 エファさんははわわ以外何も喋らなくなり、淑女のビルギットさんはもじもじと座り込み、ユーリアは満足げな顔で妄想の世界に行き、クラーラさんは……多分リンデさんに何かしらの八つ当たりをしに行きそう。

 姉貴、ありがとう。姉貴一人に見られるのみで僕の平穏は守られた。


 ……レオン一人、平穏で済まなさそうな気がする。

 ごめん、レオン。妊婦だろうとあの姉貴が大人しくなっているとはとても思えないので……その、えっと……今夜の無事を祈るよ……。


 -


 賑やかな朝食の時間も終わり、皆の満足そうな顔を見て僕も嬉しくなる。

 レーナさんが「ふむ……なるほど……」なんて言ってたけど、いやまあこの朝食自体はそんな特別なものではないです。ちょっとチーズにこだわりがあるのと、中の肉が自家製であること以外は普通のサンドイッチです。

 朝食を入れたバスケットをリンデさんに収納してもらい、昼食はリーザさんと一緒に店の手伝いをしながら出すことになった。


「おや、久々だね。まあ来たこと自体久々だけどさ、何かするのかい?」

「はい」


 リーザさんと、エファさんと、一緒にこの酒場の昼業務である食事処としての調理を手伝う。

 昼が始まると……びっくりするほどの盛況だ! キッチン側も、知らない料理人の方がいる。

 店内を見てみると、店の中には見たことない人が沢山いた。あの人も村では見たことがない。あの人……あれ、あの人は城下街の冒険者でCランクの人じゃないか?


 と、そこまで見ていてようやく分かった。

 城下街の人が、こっちに移り住んでいるからだ。

 今やここは、魔人王国の勇者の村。いわばここがこの付近の都心部、ということとなる。


「マリアのハンバーグ、ちょーっと値が張るけど、オーガロードの肉だからね。いつまでもあるとは限らないけど、それでもまだまだ在庫はあるし、沢山出しているんだよ」

「もしかして、姉貴の好物って宣伝して?」

「そーゆーこと。ま、それを除いてもやっぱりおいしいのよ、ハーブにパセリにチーズ、そしてオーガロードのミンチ。珍しさに入る人も多いけど、リピーターも多いわ」


 それは、母さんの味が、王国の全ての人に受け入れられたということ。

 噂が噂を呼び、人気メニューとして定着しきったということだ。


 ああ、すごい。

 本当に、母さんの料理は、王国のみんなの味になってしまった。


「ふふっ、母さんが見たら何て言いますかね?」

「んー、マリアだと……どんなだろ、そんなお淑やかなイメージなかったからね。アンタ! どうだい!?」

「ああ! やっぱりマリアなら『そんなに稼げるなら、私が飯屋を開きたかった〜!』じゃないか!?」

「アッハッハ! 目に浮かぶわ!」


 ヴィルマーさんが笑いながら女言葉で母さんを真似て、リーザさんは大笑いしながら同意した。


 そこには、かつて墓の前で泣いた、母さんの幼なじみだった女の子の姿はない。

 二人はもう、決して軽くない両親の死を抱えた上で、それを超えるぐらいの前向きな気持ちで母さんの料理を作っている。


 僕はそんな二人の未来を向いた姿を見ながら、リンデさんがもたらしたオーガキングのハンバーグが、姉貴だけでなく二人も救ってくれたのだと分かった。

 ……ありがとう、リンデさん。あなたは恩人の恩人です。


 -


 甘いものの新しいメニュー。

 姉貴が溜め込んでいた食材を出してもらい、次から次へと料理を作っていく。


「この、生クリームの多さが特徴だよな……リーザさん、お店にまだありますか?」

「あいよ、まだまだあるから遠慮無く使っていきな!」

「助かります!」


 姉貴が保管していた食材の数々を見て、まだ早いはずの珍しいものを見つける。

 ……ってことは、去年溜め込んだやつか。


 姉貴はその世界中を旅する生活スタイルの関係上、そこらじゅうで買っては保管する癖がある。

 特に勇者としての魔力量が、リンデさんに負けず劣らず……とはいかなくとも莫大なので、こうやってせっつくと食材が出て来たりする。

 本人が料理しないけど溜め込んで忘れていたりするので、一体どれぐらいのものを買って忘れているのか分からない。


 しかし……これは使える。


「姉貴、このへん貰うよ」

「どーぞどーぞ、あたしにはさっぱり使えないからねー」

「でもどさくさにまぎれてその辺のアーモンド食べないでね、後で使うから」

「うっ……ちょっとでもだめ?」

「苺も使うからだめです」


 妊婦になっても……いや、むしろ妊婦だから食い意地張ってるのかもなあ。

 せっかくだ、僕のために頑張ってくれた姉貴のためにも、たっぷり作ろう。


 バターを再び溶かすのも何度目か。茶色い宝石、砂糖を混ぜて練っていく。

 生地を作るために手から冷気の魔法を出すのもお手の物だ。


 既にローストしてあるアーモンドをスライスして……。


「姉貴、また混ぜるのやってくれるか?」

「単純作業なら任せなさい!」


 こちらは別メニュー。

 リーザさんが追加で持ってきてくれた生クリームに、姉貴が溜め込んでいた先ほどのものを投入して……。


 ……………………。


 …………。


 -


 広場に、次々に蓋をした食品の箱が置かれる。

 今日の集大成だ


 三時にしようかと思ったけど、作りに作って……まあ、ここまで来れば晩飯代わりで大丈夫だろうということで、六時の食事になった。


「ら、ライさん! これは、もしかして……!」

「何かです!」

「何かさんだーーーっ! やったーーーっ! 何かさーーーんっ!」


 僕とリンデさんのやりとりに、マーレさんの隣でレーナさんが、マーレさんの肩に手を乗せる。


「……何あれ? 何かの暗号?」

「あれは、ライ様が最高神としての力を発揮したときのやりとりです。そう、あれこそが私の生まれた意味を知るもの、何かさんです」

「マーレ……マーレ?」


 何やら不思議な会話が聞こえてきたので、ちょっと高揚しているっぽいマーレさんの反応にレーナさんが困りきる前に、僕はテーブルに乗った食べ物の蓋を開ける。

 そこには、今日作った数々の甘いものが並んでいた。


「ら、ライ様! 以前食べたものと一つも同じものがありませんが……まさか!」

「はい、一品残らず新しく覚えた甘いものです」

「…………。た、食べても……」

「ええ、どうぞ」


 威厳と知謀の魔王様が、お菓子を前にお預けを喰らった女の子みたいな上目遣いをしているのを可愛らしく思いながら、僕は頷いて自分も手に取る。

 みんなも僕が食べる姿を見て、手を伸ばし始めた。


 まずは、ひとつ。バリエンタン。

 これは、バリエ地方のお菓子だ。オレールさんのところでも一度出たので、再現してみたかったのだ。

 レノヴァのお菓子文化は本当にすごい。いくらでもメニューがある気さえするのだから、僕も作りがいがある。


「ら、ライさん! これ、伯爵様のところの!」

「はい、リンデさんも食べましたよね」

「おんなじあじ、おんなじあまくておいしいあの味です〜〜っ! 食感も、ぱりっと、さくっと、おいしいおいしいのぉ〜っ!」


 リンデさんが飛び跳ねて食べる姿を見て、マーレさんも食べながら体を揺らす。


「んっ……。こんなにおいしいものを食べていたなんて、羨ましいですね」

「へ、陛下っ!?」

「私も女王やめて、ライ様の護衛任務に就きたいな〜」

「本当に困りますよぉ!?」

「ふふっ、冗談。それに、ライ様が作ってくださるんだから、現地で食べなくても十分よ」


 そんなマーレさんに微笑みながら、もう一人の隣の人物を見る。

 無言で目を見開きながら食べる、背の高い甘いもの初体験の魔人族。


 そして、そのまま隣のものに手を出す。

 その形状は独特で、甘味とは思えないほど流麗で美しい。

 何度かやってみて、ようやくこの形を再現できた。


 レノヴァ公国デザート、モンブランである。


 それを、一口。


「…………!」


 その人と、目が合う。

 隣でマーレさんが笑っているのにも、反応できない様子。


「どう?」


 マーレさんに一言、そう聞かれて。

 レーナさんは、ついに声を出した。


「…………勝てるかこんなのーーーーーっ!」


 出会って以来、一番の大声で空に向かって叫んだ。

 それは、昨日『あなたもライ様の甘味を食べると、確実に負けますからね。ライ様に勝てるとは思わないように!』と言ったマーレさんへの、明確な敗北宣言だった。


「いやいやいや! 前食べたあの林檎は何だったの!? 何なのこの料理の数々、有り得ないんだけど! っていうか何なの、宝飾品職人って聞いててそれだけで凄いって思ってたのに、その人がこんなに次々、あ、甘いもの、が、甘い! 甘すぎる! 私の理解の範疇外なんだけどぉ!」

「あ、林檎もあれより遥かに甘く調理できるんですよ、ライさん」

「ああもう悔しいっ! 私が最初に人間の村へ行くのに立候補したかったっ!」


 リンデさんが、林檎パイ初体験の感想を容赦なく伝える。

 パニックに陥ってるレーナさんに笑いながら向き、マーレさんは肩に手を乗せて少し真面目な顔になる。


「で、どう? 時空塔螺旋書庫までライ様を案内するわけだけど……」

「……こんなの出されたら、そりゃ、全力で自分の身以上にお護りするしかないじゃない……誰が相手になっても負ける気はないけど、ここまで凄いの出されると、こっちの気合いも入るってもんだわ……」

「その反応を待ってたわ」


 マーレさんはこちらを向いて、お茶目に舌を出しながら片目をかわいらしく閉じた。

 ……あ、もしかしなくても甘いものの話題を不自然なく振ったの、レーナさんに僕をしっかり護ってもらうためか!

 はは、ほんとかなわないなあ。


 なんにせよ、いつでも余裕のお姉さんスマイルだったレーナさんへの、甘いもの作りは大成功だ。




 ふとそこで、一心不乱にもしゃもしゃとお菓子を食べる、可愛らしい新人の子がいることに気がついた。

 アンは僕が見ていることに気がついたのか、目が合うと————一瞬で目の前に来ていた。

 い、いつの間に……! 僕自身見るのは二度目だけど、本当にリンデさんと同等の能力者だと実感させられる。


 そんな悪鬼王の娘であるアンは、デーモンであることなど全く分からない天真爛漫な笑顔で、アーモンドの粉を口の端に付けながら、満面の笑みをする。


「ライさん、これ、すき……!」

「よかった、気に入ってもらえて嬉しいよ」


 かつてリンデさんの歓迎会で、『草が入っている』ということを言ってシチューの鍋をひっくり返したデーモンの片鱗は全くない。

 本当に……突然変異だなと思う。


 シレア帝国で僕はずっとずっと不安だった。

 リンデさんは僕を心配していただろうけど、僕もリンデさんが心配だった。

 無事を伝える手段がなかったからだ。

 自惚れなんかじゃなく、リンデさんが僕をどれぐらい大切に考えてくれているか、そして心配しているか想像できないわけじゃない。

 すぐにでも会いに行きたくてたまらなかったけど、あそこで迂闊に動いて僕が処刑されてしまったら、それこそリンデさんがどんな顔をするか……考えたくもない。


 だけどアンは、僕のためにクラーラさんと同等の強さを誇る、悪鬼王たる父親へと剣を向けたのだ。

 そして僕を救った上で、僕が悪鬼王国で殺されていないことを皆に伝えてくれた。だからリンデさんは、きっと頑張れたのだろう。

 それでも……それでも、リンデさんはあんなに泣いたのだ。

 もしも僕の無事を知らなかったら、今頃……いや、そもそもアンがいなければ僕自身があの地下牢で無事で済んでいると思えないし、人質として連れ出されているかもしれない。それに、リンデさんも姉貴も悪鬼王に……。


 アン、ありがとう。

 僕は今回の一連の事件、君が一番の救世主だと思うよ。




 それからクラーラさんの、よっぽどモンブランを気に入ったのかいつも以上に饒舌な感想をもらったり、ビルギットさんの苺ショートケーキの感想が美術品の評論家みたいになんだかすごいことになって沢山照れさせられたりと、幸せな晩を過ごした。

 甘いもの作り、メニューを増やして良かったな。


 -


「おはようございます、ライ様。準備は出来ているようですね」


 その翌朝。マーレさんが、気合い十分のレーナさんとともにやってくる。


 今から僕は、ついに魔人王国の時空塔螺旋書庫へと向かう。

 ちなみに姉貴は留守番だ。まあ当然だよな、妊婦だし。

 なんといってもマーレさんが許すはずがない。


「あたしも行きたい〜」

「ダメ。ミアは……あなたのお腹の中の子は、魔人族と人間……私にとっても、とてもとても重要なポジションにいる子なの。その子のために、クラーラをミアの護衛にしているんだから」

「分かってるって〜、言ってみただけ〜」


 そうだ。人間との友好を願い続けたマーレさんにとって、二種族のハーフというものは本当に特別な存在だ。

 この子の存在次第で、二種族の垣根は本当になくなるんじゃないかと思う。

 だからマーレさんは、姉貴のお腹の中にいるまだ見ぬ子を、もしかしたら誰よりも大切に思っているかもしれない。

 クラーラさんなら絶対大丈夫だろう。一番強い戦士を自分ではなく姉貴につけてくれたマーレさんに感謝した。


 出発を前に、笑顔のリンデさんに頷き返す。

 ……いよいよだ。

 これから一体どんなことを知るかはわからないけど、これだけのメンバーがいればきっと大丈夫だ。


 さあ、僕の役目を果たしに行こう。

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