ダンジョンを進んでいきます
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ダンジョンの中はかなり広く、曲がり角から敵が現れるとか、待ち伏せしたりされたりとか、そういうことはあまりなかった。
それでも戻れないほど分からないというわけではなく、目印さえあれば全く問題なく地上には戻ってこられそうで安心した。初心者向けというか、非常にやりやすいダンジョンだなと思う。
「それにしても、ダンジョンが個別で任務として出ているっていうことは、ここで何かトラブルでもあったのか?」
「んー、この手のダンジョンではよくある話なんだよ。すげえ強い魔物が出たって噂」
ダニオの発言を聞いて、オフェーリアが引き継ぐ。
「でも、釣り逃した魚は大きく感じるのと同じように、自分が見逃した魔物も物凄い希少種だと思い込んじゃうもんなのよ。大げさに後悔するっていうのかな、絶対あれは凄かったはずだーって思っちゃうの」
「なるほどなあ……」
オフェーリアの意見はごもっともで、そういう見逃した魔物が凄かったと思い込んだ結果が、過剰に強力な魔物の討伐任務になってしまっているということだろう。
つまり今回の任務も……。
「三人は、強力な魔物がいると思う」
「いんや?」
「ないわねぇ」
「私もないと思うよ……だけど」
三人とも存在には否定的だったけど、アウローラは断言しそうなところで踏みとどまる。
「全く報告の例がないわけじゃないんだ、上位種。だから——」
油断せずに行こう、ということだろう。
以心伝心、僕たちはお互いの顔を見て頷き合った。
「ま、ここ三年は毎月のように報告に上がったけど、一件も見つかったことないんだけどねぇ〜」
「もうっ、茶化さないでってば!」
そんな二人を微笑ましく思いつつも、遠くから現れたゴブリンを見てすぐに意識を切り替えた。
やはりこの三人、いいパーティだな。
-
ダンジョンの更に奥に進むに従って、少しずつ魔物も強くなってきている。天井も高くなってきた。
一体何十体目だか分からないゴブリンを仕留めると、矢を回収してコウモリの魔物を見る。
少し狙いにくいが……どうだろうか。
「ライ君、こういう時は私の出番よ」
と、そこでオフェーリアが前に出て、魔法を使い始めた。
「『アイスニードル』!」
オフェーリアの魔法が高い天井へ炸裂し、砂を落としながらも数々の魔物を仕留めていく。
その隙を狙ってか、横からは……色の違う、ゴブリンロードが出て来た。
ゴブリンとはいえ、上位個体だ。
これは先ほどまでとは違って苦戦すると思ったけど……。
「くっ……! よし、問題ないよ」
アウローラはなんとゴブリンロードの攻撃をバックラーで受け流し、メイスで腕を殴りながら相手を怯ませた。
アウローラ、本当に強いな……!
しかし悠長に感心している場合ではない。
僕はアウローラが作ったチャンスを活かして、アウローラの横に並んでゴブリンロードへと矢を近距離から撃ち込む!
喉、目、胸へと三連続で放たれた矢は、ゴブリンロードを絶命させた。頭に撃った矢は折れたな……これで四本ぐらい折れただろうか。ペースとしては悪くないけど、なくなってしまったらかなりまずいので、油断なく大切に使おう。
「見事だよ、アウローラ。ゴブリンロードを受け流してしまうとは」
「こっちの台詞だって。ちょっと弓矢の使い方上手すぎない?」
「慣れだよ慣れ」
実際はもっと凄いこともできるけど、それをやっちゃうと僕が海でも活躍したと簡単にばれてしまうだろう。
もう一体のゴブリンロードを相手していたダニオが、少し難しい顔をしてやってきた。
「どうしたんだ? 何か気がかりなことでも?」
「……上位個体が出てくるのが早いと思ってな」
ダニオの話によると、ある程度初心者でも安全に戦えるように、このダンジョンの地表部はあまり強い魔物は出てこないらしい。
しかしさっき出て来たゴブリンロードは、オーガとオーガロードの差を知っているだけに間違いなく危険な上位個体だ。
両親はオーガロードにやられたけど、あのハンバーグを食べていた限りオーガは普通に討伐できていたはずなのだ。
つまり、オーガとオーガロードはそれぐらい差がある。
ゴブリンロードも然り。
「……これ以上進むのは難しいかもしれん。一旦引き返すか?」
「んー、私はいいと思うけど。戻らなくてもいいんじゃない?」
「珍しいなオフェーリア」
オフェーリアはダニオの意見を却下した後に、僕の方を見た。
「今回はライ君がいるし、アウローラもいる。二人が一緒に参加してくれることは珍しいし、元々上位個体を討伐する任務でしょ」
……確かに、わざわざ張り出されていたということは、上位個体を討伐するつもりで受けた任務ということだ。
それが上位個体が出て来たら逃げ出すというのでは全く任務になっていない。
「確かに……受けるならどっちにしろ今が最良か。むしろ今解決できないんじゃいつまで経っても無理だな」
「そういうこと」
ダニオは納得して、僕とアウローラに頷いてから先に進んだ。
-
しかしそれからも奥に進むと……何か、重苦しい空気が急に襲ってきた。
「まずいな……なんだこれは」
ダンジョンの奥。そこに鎮座していたのは明らかにここら辺りではいないはずの魔物、オーガキングだ。
僕が一度やられかけた相手。
そして……そいつと対峙している、冒険者パーティ。
大盾を持った男が、相手の攻撃にふらついている。
その後ろにいるのは、比較的身なりのいい感じのする、装備の整った男だ。
「むっ……お、お前達! 早く私を助けたまえ!」
その姿を見て、ダニオがつぶやく。
「ありゃあ侯爵の第三令息だぞ、何か功績探しにやってきたか? 助けに入らないわけにはいかねえな。しかしどうする、下手したらみんなで死ぬぞこれは……」
ダニオはどうやら助ける判断をしたようだが、どうやって助けるか迷っていた。
……正直に言うと、あまり積極的に助けたいとは思わない。
間違いなく面倒なことになるし、何より侯爵家ということは魔人族に喧嘩を売った相手だ。
だけど……。
あの時マーレさんは言った。
仮にレノヴァ公国がどんなに魔人王国を敵視しようと、人間を助けると。
それはきっと、シレア帝国に対してもそうだろう。
「『フィジカルプラス・ダブル』」
そんなマーレさんに、僕は感銘を受けた。
だから……ここで嫌な相手を見殺しにするような人間になってしまったら。
もう、マーレさんやリンデさんを、正面から見ることはできないだろう。
「『マジカルプラス・ダブル』」
僕の両手に、力が宿る。
あの時とは違う。
『えっとえっと……困っている人がいたら、助けられる能力のある人が助けるのは当然ですよね?』
————もちろんですよ、リンデさん!
僕は、弓矢を構えて、オーガキングの頭に渾身の魔矢を叩き込んだ。
皆さんのおかげで、ランキングに再び載ることが出来ました。
ちゃんと読んでくれていて、本当に本当に嬉しいです、ありがとうございます!
なかなか今の〆切りは厳しいですが、期待に応えられるようにこちらも更新していこうと思います。よろしくお願いします!




