初めてダンジョンに入ります
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4/10、2巻が発売します!
よろしくお願いします!
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1巻がKindle Unlimitedで¥0となっております。まだ読んでない方はこの機会に是非どうぞ!
さすがに合流した二人も、この展開には驚いていた。
「おいおいマジかアウローラ、お前も来るとは思わなかったよ」
「ダニオとオフェーリアは普段組んでるでしょ? ライも含めてダニオが護れるかどうかって、ちょーっと気になってね」
「確かにそりゃーそうだが……」
ダニオの反応を余所に、オフェーリアがアウローラのバックラーを軽く手の甲で叩きながら笑う。
「ま、実際そのとおりよね〜。前衛一人に後衛二人じゃ、ちょっと心許ないもの」
「確かに、いないよりはいてくれた方が断然いい。よし、じゃあアウローラはライを任せていいか?」
「もちろん!」
ダンジョン前で、オフェーリアがダニオの後ろに行き、必然的に僕の隣がオフェーリア、前がアウローラとなる。
綺麗な布のシスター服の下に鎧を着込み、盾を構えてメイスを持ったアウローラは、やはり回復術士というより重戦士の方が近い。
前々から体力あるなとは思っていたけど、まさかこっち方面だったとは……そりゃ回復魔法もそこまで得意じゃないわけだよ。
「なんだかライが失礼なこと考えてる気がするー」
「……考えてないけど、例えば?」
「あっごめん、考えてないなら何でもないよ。それじゃーいこっか」
……本当に女の人の勘ってすごいよなあ……。
腹の内を隠すことには一日の長ありってところだけど、今のはぽろっと漏れかけました。
あまり失礼なことを考えないようにしよう。
まー男より女の方が体力あるパーティを組んで既に十年以上だから、もはや今更だけどね……。
-
ダンジョンの入り口にいる受付の人に、ダニオが慣れた様子で知り合いらしき門番と喋りながら、四人の入場許可を取る。
山の中にあるダンジョンは薄暗いけれど、ところどころ魔石が漏れているのか、真っ暗というわけではなかった。狭くもないし、歩きやすい。
なるほど……これはなかなか雰囲気があるなあ。
「おっと、早速きたな」
曲がり角を何度か歩き、百メートル進んだあたりで魔物に遭遇した。
武器を持ったゴブリンが五匹。
向こうはこちらをまだ見つけていない。
「結構いるな。遠距離組、どうだ?」
「いいわよ。ライ君は?」
「地元と同じ魔物で安心した、ゴブリンなら何度か相手をしたことがあるからさ。『フィジカルプラス』」
強化魔法を使って……魔力は上げない。
魔矢ではなく、普通の木の矢を撃つ。
『ブベッ』
頭を一撃で貫通。
ゴブリンは、何と喋ったか分からないような悲鳴を上げて絶命した。
ま、ゴブリン相手なら魔矢を使わなくても余裕だな。強化魔法も乗っているから速度もある。
……魔矢は、威力がどれほど出るか分からない。
さすがに先日の水柱はびっくりした、迂闊に強化魔法を第一段階でも使うと結構な威力になりそうだ。
あれを皆の前で使うのは避けたい。
「気付いたな? あと二体は仕留めておくか」
僕は木の矢を三本取ると、まずは正面に走ってきたやつに撃つ。
二人並んだゴブリンの片方は、もう一体のいない方に逃げる。もう一体も自分の所に矢が飛んできていなくても、動体視力と反射神経がそこまで良いわけではない。だから無難に、とりあえず避ける。
つまり……。
「……ブエッ……」
「グゥ……ッ!」
左右に離れた後の着地点を狙う。
森でもやった、フェイントつきの攻撃だ。
しかし片方は心臓を貫いたものの、二体目は腕に刺さるのみで撃ち漏らしてしまった。
暗いとやはり見づらいな。
「右をやり損ねた」
「了解! 『アイスランス』!」
オフェーリアが隣で叫ぶと、氷のつららが高速で飛び、一番奥のゴブリンに突き刺さる。
最後の怪我していない相手をアウローラが軽く受け止めて、ダニオが斬りつける。その隙にアウローラがその手のメイスを振り下ろして頭を潰して、ダニオが腕を怪我したゴブリンの首を刎ねる。
これで、終わりだ。
「みんな連携慣れしてるな、お疲れ」
「…………」
「…………」
「…………」
……?
あれ、なんだろう、僕に視線が集まっている。
「なあ、ライ」
「どうした?」
「お前ほんとに回復術士か?」
「回復術士じゃないって言ったと思うけど……」
ダニオは腕を組んで、無言でオフェーリアを見る。オフェーリアは肩をすくめる。
ダニオが今度はアウローラを見る。アウローラが頭を掻きながら僕を見る。
「……どうしたの?」
「いえ、あの……ライさんって回復魔法が凄かったから、てっきりそういう、回復魔法を後ろで集中して使うだけの人なんじゃないかと思ってたのだけど……弓矢の腕も相当凄いね……」
「弓矢はずっと使ってるからね」
「……ライってほんと何でもできるよね。勇者の弟っていうのどこまで信じていいか分からなかったけど、今はライの能力を目の当たりにするだけで信用に足りちゃうよ……」
確かに両方使うという人はあまり見ないと思う。
後衛をするなら両方出来た方が良いだろうって両方とも習得したけど。
そんなことより、褒めすぎです。
「むしろ僕はアウローラの方に驚いたよ」
「へっ? 私?」
「ゴブリンの攻撃を盾で受け止めて、メイスで一撃。本当に前衛慣れしている動きだったね、びっくりした」
血がべっちゃりとついた自分のメイスを見て、恥ずかしそうに頭を掻くアウローラ。
なんともその怪力の凶暴性と、清楚で可憐な雰囲気のミスマッチが面白い。
「あはは……お恥ずかしながら、恐縮です……。うん、私は神官戦士として訓練をしてきていたから、純遠距離職のオフェーリアとは違って前に出る方が得意なんだ。でもほんと、ライのお陰で今日は気が楽だよ、私たちいいコンビになれそうだね」
僕はアウローラの声かけに……頷きつつも、どこかひっかかりを覚えた。
「……どうしたの? 私じゃ不安?」
「あっ、いえそういうわけじゃなくて。……ああ、そっか、思い出していたんだ」
「思い出していた……?」
そう、思い出していた。
僕の相棒だった人。
そして……このパーティ三人の雰囲気。
これは、幼なじみ三人組だ。
僕と、姉貴と、リリーと。
リヒャルトと、エルマと、トーマスと、ザックス。
懐かしい、その雰囲気だ。
それから、魔人王国の面々が来て最強の勇者パーティを新たに組んだ。
僕と、姉貴と、レオンとユーリアの兄妹。
そして……。
最強の前衛専門剣士、リンデさん。
間違いなく、僕と一番相性の良かった人。
僕はずいぶんと、いろんな意味で遠いところに来てしまった。
「僕も僕で、勇者パーティを組んでいたのを思い出して。ペアだった人がいたから、ちょっとその人を思い出すと頷くのは申し訳ないかなって」
「そう、ですか……」
「ああっでもアウローラに不満があるとか、そんなのは全く、もう、まッッッたくないから!」
がっかりした表情をしたアウローラに、慌てて弁解をする。
僕の慌て方を見てか、アウローラはくすりと笑った。
「ふふっ……いえいえ、気にしないで。確かに私じゃちょっと釣り合わないぐらい力不足だと思ったから」
「そんなことないよ。前衛は本当に自分でちょっと凹むぐらい苦手だったから、アウローラが前にいると安心する。きっと僕たちもいいコンビだと思うよ」
「本当? だったら嬉しいな」
アウローラに微笑みかけて……隣からオフェーリアの笑い声が聞こえてきた。
「ホントにアウローラって、こういう時早いわよね〜」
「ひっ、人聞きの悪いこと言わないで!」
「ふふっ、半分は冗談よ」
「半分は本気なの!?」
「ごめんごめん、三割冗談の言い間違い」
「悪化してる!?」
そんな楽しそうな二人のやりとりを見て……姉貴とリリーを思い出して、やっぱり少し懐かしくも寂しい気持ちになった。
三人には三人の思い出があり、積み重ねた時間があるのだろう。
そういうものを感じると、いいなと思うと同時に、やっぱり僕はこの空間では臨時の助っ人って感じがするなーって思った。
帰ったら、また村の皆と組んでみたいな。




