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孤児院に帰ってきました

 この孤児院への道も、一日ぶりなのに随分と久々だなーって思いながら歩いていると……。


「あっ、ライムント兄ちゃんだ!」


 孤児院の窓からカルロの声が聞こえてきて、すぐに三人の子が孤児院から出て来た。


「あらあら、慕われてるじゃない」

「はは、すっかりみんなとも仲良しだよ」


 真っ先に元気よく出て来たカルロを抱きかかえると、二人にも手を振る。


「アウローラ姉ちゃん、もう昨日からそわそわしっぱなしでさー!」

「あっ、こら! そんなこと言わなくていいの!」

「アウローラ、そんなに気にしてくれたんだ?」

「あ、えっと、その……うん……やっぱり体格が良くても怪我して帰ってくる人を沢山見てきたから……」


 ああ……そうか、治療院で怪我していた人をたくさん見てきたし、当然以前の討伐の際も治療している人は多かっただろう。それは心配になるのも頷ける。


「オフェーリアもずいぶんと魔物を倒してくれたし、他のみんなもとても活躍してくれたよ。だからほとんど危険はなかったよ」

「そうなんだ。オフェーリア、ありがとね」

「いいってことよ、ライ君のお陰で活躍できたようなもんでもあるし、お互い様ってよりはむしろ、ダニオとか含めてこっちが助けてもらったぐらいね!」


 そう言われると、行ってよかったと思えるな。

 ……と、アウローラさんと会話していると、何やら子供達の視線を感じる。


 この中で一歩踏み出してきたのはロザリンダだ。


「……随分と仲が進展しているようで、アウローラ姉様も隅に置けませんわね」

「あ」


 そ、そういえばそうだった。オフェーリアのお陰で距離が縮まったとはいえ、行って帰ってきたと思ったらこれでは驚くだろう。


「これはオフェーリアが距離を縮めたから、私もって」

「自分から、距離を縮めたいと言ったのですわね?」

「あっ……うう、はい……」


 顔を真っ赤にして子供相手に背中を丸めるアウローラを横目に、オフェーリアに親指を立てるロザリンダ。

 

「……もしかして、ロザリンダはオフェーリアと結構仲良い?」

「あら、もちろんですわライムントお兄様。オフェーリアには男性とのお付き合いの仕方や相手の見方など、いろいろなことを教えてもらっています」


 この妙に背伸びして微笑ましいんだか割と真剣に大人びてるんだか分からない感じ、オフェーリア仕込みだったのか……納得してしまった。


「なるほどね。今日はオフェーリアに食材を買ってきてもらったから、一緒に食べるんだよ」

「まあ! それは嬉しいですわ!」


 ロザリンダはオフェーリアさんに飛び込んでいった。背中に抱きつくように、オフェーリアにしがみついてニコニコしているロザリンダ。ほんとに嬉しそうだ。


 -


 手元にある食材を使って、手早く料理していこう。

 買ってきてくれたチーズ、なかなか特殊なもので……何だろうこれ? ちょっと斑点が……。


 食べてみると……うわっ塩辛い!? なんだか発酵……いや、チーズ自体が発酵してるけど、これは独特だな……!


「みんなは苦手な食材とかある?」

「……(ふるふる)」

「好き嫌いをしているようでは、立派なレディにはなれませんわ。私、ちゃんと育ちたいですもの」

「ないぜー! たくさんたべるー! あと残したりするとアウローラ姉ちゃん怖いからなー!」

「ああっ、こらっ!」


 好き嫌いなしか、これはアウローラの教育の賜物だろう。

 きちんと子供達を厳しくも大切に育てている証拠だ。


「分かった、みんないい子だね。それじゃ待ってて」

「はーい!」


 僕は先日買ってきた本を見ながら、いろいろ挑戦していく。

 このチーズは……なるほど、溶かしてパスタに合わせる

 生クリーム、バター、他にもチーズを混ぜて……。

 この穴あきのパスタ、ソースが絡んでおいしそうだ。


 手順を覚えるとすぐに終わった。

 こうやって見るとソースの粘度にあわせていろいろな幅のものがあるんだろうか。

 すぐに茹で上がるし、パスタ料理、機能的でいいな。

 持って帰りたい。


「うん、大丈夫そうだ。完成したよ」

「やったー!」


 積極的に配膳を手伝ってくれる子供たちに笑顔で応えながら、みんなで食べた。

 あのチーズはこんなふうになるんだ。濃い味をパスタが中和していて、とても上品で味わい深い。

 すごいな、ゴルゴンゾーラ。これもたくさん持って帰りたい。

 やっぱり持って帰りたいもの、増えちゃうな。


 オフェーリアには、アウローラがアイコンタクトで確認をしてくれて、僕から自分のことをある程度は伏せて話した。


「まさかライ君が外国の人とはね……どおりで見ないし、この辺にいないぐらい優秀なわけだ。それにしてもおいしいわね、料理はよく?」

「姉に作っていたよ。厳しい人だったので妙に上手くなっちゃって」

「お姉さんが羨ましいわね。私の弟にならない?」

「こらっ、オフェーリア!」

「おーこわいこわい、冗談だってば」


 そんな仲睦まじい二人を見ながらの食事も、とてもいい時間だなーって思えた。

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