プロローグ - どうしてこうなった
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『私に毎日スープを食べさせてください』
これはとても有名な台詞だ。どう有名かというとなどと解説する必要もないぐらいである。毎日食事を作って貰うということは、つまりその人と毎日一緒にいたいということで、まあ、つまり……プロポーズである。結婚してください、である。
もちろんそんなこと、そういった言い回しは恋愛小説から子どもが茶化すネタにまでなるので、当然みんな知っている。
そして、今、自分の目の前にいる人がさっき発したセリフがそれだ。
つまり、自分は、今、プロポーズと同じセリフを言われた。
しかし……
……目の前の女性を見る。……そう、女性。この女性が男の自分に対して言ってきたのが『私にこのスープを毎日食べさせてください!』である。お前は料理しないのか、と突っ込みたいところだけれど、間違いなくしたことはないし、出来ないと言った。ただ、そんなのは目の前の女性を見たら当然だと思うし、そんなことは重要じゃない。
その女性の特徴を挙げるなら……まず美しい。目鼻立ちの整った、長い髪のつややかな、キリっとした目をした美人だと思う。美しいのはいいことだと思う。……そして……胸が大きい。服が薄い。腰が細く足が長い。本当にスタイルがいい。色気があるのはいいこと……だと思う……。
…………そして……ええと………………青い肌……赤の混ざった銀色に光る白い髪……黒く曲がった角……そして目は暗闇のように黒く塗りつぶされている中に…………爛々と光る金色の眼光。
言うまでもなく、どこからどう見ても魔族の女である。
多分、自分の言った意味は分かってないだろう。そういうことが分かっているとはとても思わない。
しかし……しかし! どう返せばいいのか。そもそもどうしてこうなったのか。
「あの……やはり、ダメでしょうか……」
目を伏せる目の前の女。美しい顔が悲しみに染まり、今にも泣き出しそうな表情になる。
美しい彫像が崩れるような、あまりにも悲しそうなその顔を見ていると、
「い、いえ! 別にかまいませんよ! 毎日作ってあげましょう」
なんて、何も考えずに……本当に何も考えずに答えてしまった。やってしまった……と思った時にはもはや後の祭り、目の前の女が青い薔薇が満開になったような綺麗な顔で笑顔を作る。頬の青が深くなっている。……あれは人間だと赤が深くなっているような感じなのだろうか。あんな顔を見たらもう否定する言葉は出せない。
いやそんなことを考えている場合じゃない! そもそもどうしてこうなったのか。
「あ、あの……嬉しいです! では約束通り、本日よりこの村の護衛をさせていただきます! 改めまして、私は—————」
—————魔人王国・国王直下『時空塔騎士団 第二刻』魔人族のジークリンデ。
そう明らかにヤバそうなプロフィールを語った後、目を閉じてニッコリ笑い———あ、目を閉じると本当に普通の女の子って感じだな———姿勢を正した後、
「—————リンデと気軽に呼んでいただければ嬉しいです、よろしくお願いしますっ!」
そう言って、目の前の女は、深く頭を下げた。何も言えずに、自分の村の名前を思い出して、村を出て久しく会ってない姉貴の顔を思い出して。正面の女の姿を見て、自己紹介を頭の中で反芻して。
これを言うのも三度目だ。どうしてこうなったのか……。
勇者の村。本日より勇者ミアの家に、同居人『魔王の部下、リンデさん』が増えました。
等身大の主人公がいろんな活動を通して、皆から慕われるような優しい話を書いていこうと思います。
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