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第三扉 「天使の郵便配達」

女の子は天使の郵便配達員

彼女が配達する手紙は特別な手紙

だってその手紙は神様から配達を許可された

本当に特別な手紙だけだから


女の子には記憶がありません

自分の名前も分かりません

だから彼女はいつも孤独でした


でも誰かの想いが綴られたお手紙を

誰かのもとへ届ける郵便配達の仕事に

とても幸せを感じています

それは神様が女の子に与えたお仕事でした


彼女は自分のことは何一つ判りませんが

手紙に込められた想い

それを受け取った人の想い

それらを細やかに感じる力を持っていました

それは神様が女の子に与えた力です


そんなある日

宛名のない手紙が何通も女の子のもとへ届きます

女の子は困ってしまいました

そして悲しくなりました

何故ならその手紙に込められた想いが

とても特別な想いだと判っていたからです

彼女が今まで配達したどんな手紙よりも

その手紙は彼女にとって特別に感じられました


女の子は悲しくて悲しくて涙を流しました

頬を流れる涙は止まることを知りません

それは彼女自身にとって不思議な体験でした

何故なら彼女は今まで孤独を感じても

悲しいという気持ちを感じたことがなかったからです


溢れる女の子の涙は蒼く虹色に彼女を包んでゆきました

すると不思議なことに

宛名のない何通もの手紙に花が咲いたのです

色とりどりの花が幾つも幾つも咲き乱れました


そして彼女はその花々を見て気が付いたのです

この手紙は彼女自身に宛てられた恋文だと

そして自分が現世では

もう死んでしまった人間だということに


それでも彼女は幸せな気持ちになりました

もう自分は人ではなくなってしまったのに

もう自分は人の世には戻ることができないのに

それでも彼女は幸せを感じていました

その証拠に彼女は身体の奥底が

ぽかぽかと温かくなるのを

いつまでも いつまでも 感じていたからです


女の子は今日も特別な手紙を配達します

それは私達が目にすることができない

それは私達が触れることのできない

けれども幸せを運ぶ特別な手紙です


完(2017年08月28日23時00分 web初公開)

これは詩集「宛名のない恋文」の挿絵を絵師さんに依頼する時に、絵のイメージを絵師さんにお伝えするために書いた物語です。

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