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燕返し!!!  作者: 若草山 みねこ
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第一話 レポーター捜し

地獄報道局制作 編成部長の閻魔谷 時子は悩んでいた。最近、父親の閻魔大王 本名 閻魔谷 よしおが、魂の仕分けを手抜きしている。


手抜きはいけない。いい人なのに地獄で労働させられたり、悪い奴が極楽橋に行ってセレブ生活を謳歌している。これでは死んでも格差は広がるばかりで、閻魔大王としての品格も糞もなくなる。

「…歴史人物の魂って転生さすのにかなり証拠がいるんだわぁ。目で見てないっしょ?だからさぁ、時子ちゃん。生きてる時を見てみたい訳よ。…時子ちゃん。お父さん参ったよー。なんとかしてぇん?」


ファザコンの時子は直ぐに動いた。

では、自分の職権を乱用しようではないかと。

閻魔谷 時子 (エンマダニ トキコ) 地獄年で300万歳。

人間で言えばアラサーである。



時子は思い付いた。


「そうだ。現世いこう。」


そうだ。京都いこうみたいな軽いのりである。

時子のこの思い付きが、とんでもないことになろうとはまだ、隣でお茶をしばいていた相棒の鬼山さんもまだ知らない。


有りがちな展開だが、物語ははじまる!!!


水の北 山の南や 春の月



浅黄の空、燕飛び交う 桜道

この作者は俺の友人達の作なんだよ。いい詩を謡うだろ?


空はいつも蒼くて、俺は何時もそれが怖くてな。

なんだか、吸い込まれちまうんじゃないかと思ったよ。

そんな臆病者が、まさか、大将になるなんて思いもよらなかったよ。



多摩の百姓の末っ子の俺がだよ。

なぁ、トシ。


なぁ、山南さん。

なぁ、総司。


俺は皆と出会えて幸せだよ。

武士として死ねるんだからな。


そして、最後の夜に本当の鬼と話が出来た。

こんな面白い人生があるか。

地獄ってあるんですね、俺も戦国の武将と話ができるかなぁ。

楽しみが増えたよ。


新八、元気にしてるか?

ちゃんと故郷には戻れたか?


サノもだ。おまささんの所に赤子を見れているか?

また無茶してないろうな。ちょっと心配だよ。


斎藤くん、君はいつもよく働いてくれた。

新撰組をいつも支えてくれた。

本当に感謝している。本当の武士は君のことを言うんだろうな。彼女への想いを君は誰よりも強かった。

もっと話をしたかったなぁ。


源さん。ありがとう。

本当にありがとう。源さんがいなかったら俺はここまでやってこれなかったよ。

どうか、また会おう。

もうじき、俺もそっちに行くことになる。



あぁ、悪いね。感謝している人が多いんだよ。

明け方までまだ暫くある。俺のヒトリゴトに付き合ってくれ。

貴方みたいなお嬢さんと話が出来るなんて、人生ってわからないなぁ。


あの子は元気にやっていますか?

笑っていますか? 元気な子だが、隠すので直ぐにはわからないんですよ。誰かがわかってやらないと。

生意気だの、不真面目だのトシは悪態ばかりでしたけど、あの子は優しい子なんですよ。貴方とは友人のように俺は感じてきた。明るい子でなぁ、トシの子供の頃そっくりで隠し子なんじゃないかと噂になりましたよ。


あの子には謝りたい。俺は謝りきれませんよ。

あの子と彼の人生を変えてしまった。


なぁ、平助…。ごめんな。

お前は俺を恨んでいるか?新撰組をこんなにしちまった俺を、歳を、恨んでいるか?


山南さんを追い詰めた俺を。

俺も平助みたいに真っ直ぐにいきたかったなぁ。

真っ直ぐに人誰かを愛したかった。


ねぇ、伊東さん。

俺を恨んでいますよね。

当たり前か、貴方にもあんなことをしてしまった。

俺は、地獄に落ちるでしょう。

もし、貴方と会えたら殺してくれて構わない。


だが、貴方も俺も誠があった。 それだけは言いたい。


誠?誠ですか?

夜明けまで、だいぶあるからなぁ。

よかったら、聴いて貰えませんか?


長い話になるが、貴方にも誠があるならば。

よかったら聞いてくれ。

俺達の誠を。あの子が現れたことでそれは輝きを増しました。


残して伝えて欲しい。



あ、いい忘れたな。

俺の名前は。。。





タタタン・タタタタン………。


電車の喧騒が聞こえる。

季節は春。ここは、関東の某所と言っても赤羽駅だ。

埼玉から東京を結ぶ中規模の駅である。


そこに、閻魔大王の一人 娘閻魔谷時子も湘南新宿ラインを待っていた。赤黒い肌ではなく、日本人と全く変わらない。

彼女は、隣に立つ白シャツの男と辺りを見渡し誰かを探している様だった。



上下紺のストライプのスーツに長身の眼鏡に黒髪を高く結わえてお団子にして、残りを垂らしている。

スレンダーな容姿に若い男がチラリと振り返る。


時子は、イライラした口調でぽっちゃりした男性に話しかける。



「ちょっと、鬼山君。…羽鳥 晃は?どこに、いるのよ。」


「まってくだたいよ~。……探知機によると…………えーと。時子さん、向こうのホームにいまふけど。」



鬼山君と呼ばれる男性は滑舌があまりよろしくない。

サ行が弱いのか「して下さい。」が「してくだたい。」になる。

それが時子のイライラを助長させる。



朝の9時にいきなり駅のホームで若い女が怒鳴る。

周囲の視線は注がれるに決まっている。



「お前の滑舌どーにかなんねーのかよ!!!」


「すみません…。あ!こっち見ましたよ。」


「なんですって!!……間違いない。彼女ね…。追うわよ!!……で、こっちはどこ行きなの?」


「埼玉にいっちゃいまふね。」


「着いてきなさい!」



鬼山は思った。

「僕はずっと湘南新宿ラインなんだから、鎌倉行きの7番乗り場っていったのに。でも、時子さん怒るからなぁ。」鬼山は気長で有名だ。


そう、せっかちな時子は怒るとめんどくさい。

かの有名な閻魔大王の一人娘、お見合いも178425599回断られている。


人間で言えば30歳。結婚適齢期だ。

ただ、種族で言えば閻魔族に部類される鬼の一族だ。

とにかく長生きする。300万年生きている。


時子はKONAN君も驚く眼鏡をかけている。

右目で魂の選別が出来るのだ。ドーン。


地縛霊が居たなら直ぐに感知が出来る。

地縛霊は未練を強く残した魂で、2種類ある。

説得で納得し、成仏する者はあの世に行くことが出来る。


だが、例外がいる。

強く生に未練が有るもの、無念を残した者は別だ。

生前から強い力がある。彼等は自分の魂と近いものを捜し当てて、未練を託そうと生者に近づくものがいる。


昔からある神隠しは、地縛霊によるものが大半と言われている。

言われているるので、真実はさだかではない。

知りたければ、この物語を読み進めていくといい。



さて、ようやく彼女に目を向けよう。

この有りがちな物語の主人公、羽鳥 晃だ。


晃は赤羽駅から電車にのり、品川に向かう。

電車の窓側でぼんやり立っていた。傍には派手なオレンジ色キャリーバックだ。修学旅行にも見える。

イヤホンで周りの音を消して気だるそうに荒川を見ていた。



背後には、なんども話かけようと頑張るが出来ない時子と鬼山もいた。彼等は周囲からは新人の報道局の人間に見えていた。


手にはマイクと、鬼山の肩にはカメラが担がれていたからだ。

女子高生はまるで相手にしていない。というか気づいてない。



時子はディスるが、晃に睨まれると後ろを向いてスマホを弄る。スマホ型地縛霊探知機(人間世界のスマホをバクって改造した。)

鬼山も、彼女の画面を見て優しい目をちょっとだか、鋭くした。


「……いますね。西口。」


「いる。…私達のこと気づいてる。流石、脱獄地縛霊よ。…伊達に死んでから逃げ回ってないわよ。コイツ。」


「でも、時子さん。西口と目標の羽鳥さんですか?……なぜ、接触せずに15年も見守るんでしょー。…だって、接触できる時なんてたくたん在ったはずでふよ。」


「……そこがわかんないのよねー。それにしてもあの子ふてぶてしいわぁ!…私の学生時代の方が可愛かったなぁ。あ、今も私の勝ちかな。



時子がちら。と、晃を見れば彼女はそれ気づいて、車両を変えてしまった。時子達は慌ててあとを追う。



それを、若い男がリュックを背負って、鋭い顔つきで見つめていた。電車は、東京へと近づいていく。


桜の花が川面を流れている。


晃はおう二人も、品川駅に到着した。

時子は周囲に目を配ると、鬼山が東京土産を買っていたから頭をどついた。


「何やってんだよ。…目標消えちまったじゃねぇかよ!!…消えてしまったじゃない。」


「言い直さなくても怖いデフよ。…大丈夫っす。11番線の東海道線のしんおおたかに向かいました。」


「新大阪ね。…」



鬼山はちゃっかり、東京●ナナを片手にスマホ型の探知機をチェックしている。時子はせかせかと11番線に向かって早足で歩いていく。


小さく肩で息をついて、鬼山も向かう。


「…そんなにいとがなくても。」


訳。急がなくても。


時子はエスカレーターで晃を追う。


一方晃はスマホで祖父にLINEを送っていた。


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